住宅の扉のタイプには大きく分けて「開き戸」と「引き戸」の2つがありますが、この違いをご存じでしょうか。
この記事では、開き戸と引き戸の違いや、それぞれのメリット・デメリット、どのような場所に取り付けるのが向いているのかまで、詳しく解説します。
開き戸とは?引き戸とは?
開き戸と引き戸を比較する前に、まずはそれぞれどのような扉のことを指すのか知っておきましょう。開き戸と引き戸それぞれのタイプについてもご紹介します。
開き戸とは、どんな扉のこと?
開き戸は、扉の1辺を蝶番や軸受け金具で壁に固定したドアのことです。蝶番や軸受け金具を軸にして、前後に弧を描くように開閉します。
開き戸を開けるときには、扉に取り付けられたドアノブを握って回転させるタイプが一般的です。
開き戸の開く方向によって、部屋の内側に開く「内開き」と、外側に向かって開く「外開き」があります。日本の住宅では、事故や災害などのトラブルがあった際に扉を体で押し開けて避難できるよう、外開きのものが多くなっています。
開き戸の種類
開き戸にはさまざまなタイプがありますが、大きく「片開き戸」「両開き戸」「親子戸」の3種類に分けられると考えてよいでしょう。
片開き戸は、1枚の扉の1辺だけを壁に固定したタイプです。一般的に「ドア」と聞くと、片開き戸を想像する人が多いのではないでしょうか。
両開き戸は、ほぼ同じ大きさの扉が2枚あり、2つの扉の合わせ目から左右に開くタイプです。いわゆる「観音開き」のドアといえば、分かりやすいかもしれません。
親子戸は、両開き戸のバリエーションともいえます。扉が2枚付いている点は両開き戸と同じですが、扉のサイズを見ると、片方は大きく、もう片方は幅の狭いものになっています。
親子戸の場合、通常出入りする際には大きな扉のほうだけを使い、幅の狭い扉は留め具などで固定しておきます。大きな荷物を搬入する際などには、幅の狭い扉の留め具を外して開き、間口を広げられるのが特徴です。
引き戸とはどんな扉のこと?
引き戸とは、扉をレールや溝に沿って滑らせることで開閉するドアのことです。床にレールや溝を設置する「レール型」と、扉の上部にレールを設置する「上吊り型」の2種類があります。
レール型の場合、扉が外れないよう上部にも溝を付けて、上下の溝の間に扉をはめこむような構造になっています。
上吊り型は、上部のレール部分のみで扉を支える構造になっていて、床にはレールや溝を付ける必要はありません。カーテンのような仕組みというと、分かりやすいかもしれません。
引き戸の種類
引き戸の種類としては、「引き違い戸」「片引き戸」「引き込み戸」「引き分け戸」などがあります。
引き違い戸は、2本のレールを平行に設置し、1本のレールに対して1枚の扉を設置したタイプのドアです。開く際には、左側の扉を右にスライドさせるか、右側の扉を左にスライドさせます。
引き違い戸の特徴は、左右どちらからも出入りできることです。ただし、設置するには扉2枚分の幅が必要になります。
片引き戸は、設置するレールは1本だけです。そこに1枚の扉を置き、片側方向のみに開け閉めするタイプのドアとなっています。
片引き戸のバリエーションとして、2枚、3枚、4枚といった複数枚の扉が連動して開くものもあります。ただし、引き違い戸のように両側から開け閉めすることはできず、開く方向は1方向のみです。
引き込み戸は、壁の中に「戸袋」と呼ばれるスペースを造っておき、開けたときに扉が壁の中に隠れるような構造になっているドアをいいます。片引き戸との違いは、戸袋があるかどうかです。
引き込み戸は、開くと扉が見えなくなり、すっきりとした印象になります。ただし、戸袋の中が掃除しにくい、扉以外の物が戸袋に入ってしまうと取り出しにくいというデメリットもあります。
引き分け戸は、1本のレールに対して2枚の扉を設置し、真ん中から左右に扉をスライドさせて開くタイプのドアです。
引き分け戸には、片引き戸を2つ組み合わせたような扉が2枚のもの、引き違い戸を2つ組み合わせたような4枚扉のものなど、さまざまなタイプがあります。大広間のように間口が広い場合は、レール2本に対して各4枚の合計8枚扉の引き分け戸にすることもあります。
そのほか、引き戸のバリエーションとして「折り戸(折れ戸)」があります。折り戸は1枚の扉が途中で折れ曲がるようになっているタイプのドアです。
折り戸の多くは、扉の真ん中から2つに折れ曲がるようになっていますが、3つ以上に折れ曲がるものや、折れ曲がった後の幅が不均等なものもあります。アコーディオンカーテンのような構造というと、分かりやすいかもしれません。
折り戸は浴室やクローゼットなど、前後左右に十分なスペースがとれない箇所によく設置されています。他の引き戸とは少し印象が異なりますが、レールを使って開閉するので、引き戸の一種といってよいでしょう。
開き戸のメリット・デメリット
開き戸には、さまざまなメリットとデメリットがあります。中でも代表的なメリットとデメリットを、それぞれ3つずつご紹介します。
メリット1:どんな場所でも設置できる
開き戸のメリットは、間口の幅が狭い場所でも設置できることです。人が通れる幅さえあれば、扉のサイズを小さくすることで、どのような場所にも取り付けられるといってよいでしょう。
メリット2:気密性・防音性が高い
開き戸は、閉まったときに扉が枠にぴったり収まるような造りにすることで、機密性や防音性を高められます。冷暖房効率を高めたい場合にも、開き戸はおすすめです。
反対に、上部や床面に隙間を造っておくことで、通気性を高めたり、部屋と部屋との一体感を出したりすることもできます。そういった融通が利きやすいのも、開き戸のメリットでしょう。
メリット3:デザイン性が高い
開き戸は、玄関ドアや室内ドアなど、住宅のさまざまな箇所に用いられています。引き戸と比較すると需要そのものが多いため、商品のバリエーションも豊富です。
実際に住宅に取り付けるにあたって、たくさんの選択肢から好みのタイプを選べるのは魅力といえるでしょう。デザイン性の高いものも多く、インテリアにこだわる人には開き戸がおすすめです。
デメリット1:開け閉めにスペースが必要
開き戸の一番のデメリットは、扉の開閉にある程度のスペースが必要なことです。扉が開く側に障害物があると、開けられなくなってしまいます。
近くに他の開き戸がある場合、同時に開けると扉同士がぶつかってしまうこともあります。そのため、扉の大きさや開く方向をよく考えて取り付ける必要があります。
デメリット2:扉の陰になる部分に物が置けない
扉が開いたとき、陰になる部分に置いた物が取り出しにくいのも、開き戸のデメリットといえるでしょう。例えばウォークインクローゼットを造ったとしても、扉が内開きだとその部分には物が置けないためデッドスペースができてしまいます。
扉の陰になる部分に電灯のスイッチを配置すると、部屋の使い勝手も悪くなってしまいます。開き戸を付ける場合には、開く方向や扉の大きさなどをよく考えたほうがよいでしょう。
デメリット3:急に閉まることがある
開き戸を開けると、扉は壁面から飛び出した状態になります。すると、風などにあおられて急に勢いよく閉まることも珍しくありません。
よく扉に挟まれてケガをしたといった事故を耳にすることがありますが、そのほとんどは開き戸によるものです。開き戸は、同じサイズの引き戸と比べると重量があることが多く、それもケガの原因になっています。
開き戸の扉は、開いたままの状態で止めておくことに向いていません。開いたままにしておきたいなら、ドアストッパーを使って固定するようにしましょう。
引き戸のメリット・デメリット
次に、引き戸の主なメリット・デメリットを見てみましょう。引き戸にもさまざまなメリットとデメリットがありますが、それぞれ3つずつご紹介します。
メリット1:少ない力で開け閉めできる
引き戸はレールや溝の上をスライドさせる構造のため、同じ大きさの開き戸より軽い力で動くようになっています。そのため、小さな子どもや高齢者でも簡単に開け閉めができます。
メリット2:開け閉めにスペースをとらない
引き戸は扉が壁面に沿って動くので、周囲に荷物などが置かれていても開閉できます。そのため、扉の前後にスペースの余裕がとれない場所に向いています。
廊下の突き当たりや向かい側など、すぐ近くに他の扉がある場合でも、引き戸なら開けたときに扉同士がぶつかることはありません。
メリット3:扉による事故が少ない
引き戸は、開けた状態でも扉と壁面が並行になっていて、扉が邪魔になることはありません。風などにあおられて急激に閉まることがなく、扉による事故も少ないです。
万が一扉に挟まれることがあっても、「少ない力で開け閉めできる」という特徴があるため、大きなケガにはつながりにくくなっています。扉による事故のリスクを引き下げたいなら、引き戸がおすすめです。
デメリット1:取り付けに広い間口が必要
引き戸のデメリットは、取り付けに広い間口が必要なことでしょう。片開き戸であっても、最小で扉2枚分の幅がないと取り付けられないので、間口が狭い場所には向いていません。
デメリット2:機密性・防音性が低い
引き戸は、レールや溝に沿って扉をスライドさせる仕組みになっています。スムーズに開閉するためには、どうしてもレールと扉の間に隙間が必要です。
そのため開き戸に比べると、防音性や機密性は低くなってしまいます。冷暖房効率を上げたい場合や外からの音が気になる場所にはあまり向いていません。
デメリット3:防犯性が低い
引き戸は、扉を上に持ち上げて簡単に取り外すことができます。そのため、開き戸よりも防犯性が低いといってよいでしょう。
特に玄関ドアの場合、扉の厚みが開き戸よりも薄いことが多くなっています。引き戸の玄関ドアも、さまざまな防犯対策を施したものが出ていますが、開き戸の玄関ドアよりは衝撃に弱いと考えるべきでしょう。
また、開き戸の玄関ドアのほとんどは、スマートキーなど防犯性の高い鍵が取り付けられます。しかし、引き戸の玄関ドアでスマートキーが取り付け可能なタイプは一部のみです。
開き戸と引き戸、それぞれに向いている場所
開き戸と引き戸、それぞれのメリットとデメリットを見れば、向いている場所と向いていない場所があることがお分かりいただけたでしょう。改めて、開き戸のほうが向いている場所、引き戸のほうが向いている場所を見てみましょう。
開き戸が向いている場所
開き戸が向いているのは、玄関など防犯性が重要になる場所、シアタールームなど防音したい場所です。寝室も、静かな空間にしたいなら開き戸のほうがよいでしょう。開き戸はデザインが豊富なため、インテリアにこだわりたい人にもおすすめです。
階段下の納戸など間口がとれない場所にも、開き戸が向いています。ただし、狭いところに開き戸を付ける際には、コンセントや電灯のスイッチが扉の陰にならないよう気を付けましょう。
引き戸が向いている場所
引き戸が向いているのは、廊下の突き当たりや洗面所など、扉同士の距離が近い場所です。クローゼットなど空間いっぱいに物を置きたい場所にも、引き戸が向いています。
出入りが多く扉を開けっ放しにすることの多い場所も、引き戸にしたほうがすっきりした空間になります。また、少ない力で開け閉めできる引き戸は、バリアフリー構造にもぴったりです。
まとめ
開き戸と引き戸、それぞれにメリットがあり、向いている場所が違うことがお分かりいただけたでしょうか。開き戸にするか、それとも引き戸にするか、悩んだ際には家族それぞれのライフスタイルを振り返って、どちらのほうが向いているのか考えてみましょう。
タクトホームは、これまでさまざまな住宅を提供してきました。その実績を踏まえて、ご家族のご希望をよく伺った上で、お客様にぴったりのご提案やアドバイスをいたします。
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