近年、バリアフリーやシンプルな動線を叶えられることから、平屋を建てる方が多くなっています。
現在家づくりを検討している方の中でも、「平屋の家が欲しい」と憧れている方もいるのではないでしょうか。
しかし、そこで気になるのが坪単価です。一般的に、平屋の坪単価は2階建てよりも高くなりやすいといわれています。
では、なぜ坪単価が高くなりやすいのでしょうか。ここでは、平屋の坪単価が高い理由と、少しでも安く抑える方法について解説していきます。
坪単価って何？
坪単価とは、家を建てるときに1坪（約3.3㎡）あたりにかかる建築費のことです。
一般的には、建物の本体価格を延床面積で割った数字が坪単価になります。トータルの建築費を知りたいときに、坪単価が分かると目安を知ることが可能です。
例えば、本体価格が2,500万円で延床面積が30坪の場合、以下の計算で坪単価を算出できます。
| 坪単価：2,500万円÷30坪＝83.3万円 |
坪単価は、家づくりにおいて資金計画の参考になります。そのため、坪単価から家づくりを依頼するハウスメーカーを決める方も多いのではないでしょうか。
しかし、坪単価だけを目安にするのは少し危険です。なぜなら、坪単価はあくまでも「建物の本体価格」を延床面積で割ったものだからです。坪単価には土地の購入費用や諸費用などは含まれていません。
また、ハウスメーカーによって坪単価に含まれている要素に違いがあり、ハウスメーカーごとで比較がしにくいという問題もあります。
このような要因から、坪単価だけで全体の予算が組めるわけではありません。坪単価だけを信用しすぎず、他にどのような費用がかかるのかを考慮した上でハウスメーカー選びを行いましょう。
平屋の坪単価が高い理由は？
平屋の坪単価は2階建てよりも高くなる傾向があります。その理由として考えられる2つの理由について、詳しく見ていきましょう。
基礎面積が大きいから
平屋はワンフロアですべての生活空間が完結します。そのため2階建てよりも広い基礎面積が必要です。
建築費用の中でも、基礎工事にかかる費用は大きいです。したがって、基礎面積が大きくなりやすい平屋は、坪単価も高くなる傾向があります。
屋根・壁の面積が大きいから
基礎面積が広い平屋は屋根の面積も大きくなります。また、検討するプランによっては壁の面積も大きくなるでしょう。
屋根・壁の工事費用は建築費用の中でも大きな割合を占めます。そのため、屋根・壁の面積が大きいと、その分坪単価も高くなりやすいです。
また、凹凸の多い家だとその分壁面積も増えるため、坪単価が高くなる要因となります。
平屋は2階建てよりも割高になるの？
家づくりで予算を考える際、坪単価だけでは家づくりにかかる全体の費用を計算することはできません。諸費用や土地の購入価格など、坪単価に含まれない費用もたくさんあるためです。
そのため、坪単価にだけ注目せずに、ほかの要素にも目を向けて家づくりにかかる予算を検討しなければなりません。ここでは、さまざまな要素から、平屋と2階建ての金額を比較した内容を解説していきます。
坪単価は平屋のほうが高くなる
前の項目でも解説したとおり、平屋は基礎面積・屋根面積・壁面積が2階建てよりも大きくなりがちです。
家自体に費用がかかりやすいため、坪単価も高くなる傾向があります。
土地費用は平屋のほうが高くなる可能性がある
土地費用も平屋のほうが高くなる傾向があります。2階建ては縦に空間をつくるため、多少土地が狭くても家を建てることは可能です。
しかし、平屋の場合、広い土地がなければ十分な生活空間を確保した家をつくることは難しいです。土地は面積が大きくなればその分購入価格も高くなるため、平屋のほうが土地費用が高くなります。
ただし、土地が高い都心で2階建ての家を建てた場合と、土地の安い郊外で平屋を建てた場合を比較すると、都心のほうが土地費用が高くなる可能性もあります。
総工費は2階建てのほうが高くなる
総工費は2階建てのほうが高くなる可能性があります。なぜなら、2階建てだと縦の空間を利用して建てるため、平屋よりも延床面積が広くなるためです。
総工費とは、建築にかかるすべての費用のことで、本体工事費用・付帯工事費用・諸費用のすべてを足したものをいいます。
2階建ては、階段の設置や水回りの複数箇所設置、配管などのコストが追加でかかるケースもあります。そのため、平屋よりもコストアップしやすいです。
固定資産税は平屋のほうが高くなる
固定資産税は、平屋のほうが高くなる傾向があります。平屋のほうが広い土地を確保する必要があるため、土地が広ければ広いほど価値が高いと評価されます。また、平屋のほうが屋根・基礎の面積が広いので建物の評価額も高くなりやすいです。
ただし、建物の設備や装飾などによっては、2階建てでも固定資産税が高額になる場合もあるため、平屋のほうが絶対に固定資産税が高くなるというわけではありません。
メンテナンスコストは平屋のほうが安い
メンテナンスコストは平屋のほうが安くなる可能性が高いです。例えば外壁や屋根のメンテナンスの際、2階建てだと足場を高く組み立てなければなりません。しかし、平屋であれば足場の高さを抑えられるので、足場費用の節約ができます。
また、2階建てだと2階部分に水道を設置することもあり、配管が複雑になることもあります。
一方で平屋なら、ワンフロアですべてが完結するので、配管がシンプルでメンテナンスがしやすいことから、メンテナンスコストを抑えることが可能です。
平屋を安く購入する方法は？
平屋だからといって、必ずしも割高になるというわけではありません。しかし、坪単価や土地費用を含めて2階建てよりも家づくりにかかる費用が高くなる傾向があります。
ここでは、そんな平屋を少しでも安く建てる方法を6つご紹介します。
廊下をなくして面積を小さくする
全体の施工面積を小さくできれば、その分コストを安くすることが可能です。
例えば、廊下を最低限の広さに抑えたりすれば、その分面積を小さくすることができます。玄関ホールも必要最低限の大きさにすることでコストを抑えられます。
他にも面積を抑える方法として、単純に居室やLDK、収納スペースを削るという方法もあります。しかし、生活スペースを削ると、住み始めてからの生活に不便を感じるかもしれません。
また、収納を削ったことで物を片付けられず、生活スペースが散らかってしまった、なんてこともあるでしょう。必要十分なスペースを確保した上で、「必要ない」と思うスペースを削る、という考えで面積を小さくすることをおすすめします。
間仕切り壁を減らして予算を削減する
室内空間の間仕切り壁が多いと、その分壁の施工にかかる柱や建具などの建材が必要です。当然ですが材料費も施工費もかかってきます。
減らせる壁があれば、極力減らして材料費・施工費を削減することで、総工費を安く抑えることが可能です。
例えば、子ども部屋は広いワンフロアで新築し、子どもが成長して自分の部屋が必要になったときにリフォームで壁を配置するという方法なら、新築時の建築費用を抑えられます。
また、収納スペースをそれぞれの居室につくらずに、1つのファミリークローゼットでまとめてしまうという方法もおすすめです。
凹凸のない形状にする
凹凸の多い形状の建物は建築費用が高くなりやすいため、凹凸のないシンプルな形状の家を建てましょう。なぜなら、凹凸が多いとその分壁の面積が増え、壁の施工費や材料費が高くなるためです。
コの字型やロの字型のような複雑な形状よりも、キューブ型などのシンプルな形状にしましょう。
平屋はシンプルな形状でもおしゃれな外観をつくりやすいという特徴があります。その特徴を活かしてキューブ型の魅力的な外観をつくりましょう。
設備のグレードを上げすぎない
設備のグレードを上げるとその分建築費用も高くなります。キッチンやユニットバス、トイレなど、標準仕様の設備で十分であれば余計なオプションを付けないようにしましょう。
ショールームなどで魅力的なオプションを見ると、つい欲しくなってしまいます。しかし、安易にオプションを付けると、気が付いたら何十万円も追加費用が発生していた、なんてことにもなりかねません。
設備のグレードを上げたり、オプションを付けたりする場合は、住み始めてから本当に必要になるかどうかを考えてから決断するようにしましょう。
使わないオプションを付けてしまうと、「もったいないことをした」と後悔する可能性もあります。
複数のハウスメーカーから見積もりを取って比較検討する
ハウスメーカーを決める際は、複数のハウスメーカーから見積もりを取って比較検討するようにしましょう。
ハウスメーカーはそれぞれ得意分野があります。そのため、同じ平屋のプランでも費用が異なる可能性もあります。
最初から依頼先を1つに絞らずに、複数のハウスメーカーのプランを見比べて、自分に合ったハウスメーカーを見極めることが重要です。
平屋を建てるときの注意点
最後に、平屋を建てるときの注意点をご紹介します。それぞれの注意点は、2階建てでも注意すべきことですが、平屋の特性から特に注意しなければならない点もあります。
それぞれの注意点について見ていきましょう。
土地の建ぺい率と容積率を確認する
土地を購入する前に、建ぺい率と容積率を確認しましょう。
建ぺい率とは、敷地面積とその場所に建つ建物の建築面積の割合のことです。対して、容積率は敷地面積とその土地に建つ建物の延床面積の割合のことを指します。
例えば、敷地面積150m2で建ぺい率50%、容積率100％の場合、この土地では建築面積75m2、延床面積150m2の家しか建てられません。
平屋の場合、建築面積と延床面積は同じになるため、この土地で建てられる平屋は75m2（約22.6坪）です。もし30坪の平屋を建てたい場合、この土地では建てることができません。
このように、建ぺい率と容積率によっては、希望の広さの家を建てられない可能性もあるため、建築前に計算して確認しておくことが重要です。
プライバシーと防犯対策をする
平屋はワンフロアで生活空間が完結しているため、動線がシンプルで生活しやすいというメリットがあります。しかし、平屋だとその家の生活スタイルが外から把握しやすくなるため、泥棒や空き巣などの不審者が侵入しやすいというデメリットもあります。
また窓の配置によっては、通行人やお隣さんの視線が気になって日中でもカーテンを閉めて生活している、なんて事態にもなりかねません。
このデメリットを解消するためにも、プライバシーと防犯対策を行いましょう。
例えば、玄関まわりや死角になりやすい場所に人感センサー付きの照明を付けたり、音の鳴る防犯砂利を敷いたりする方法があります。
また、侵入されないように窓格子を付けるのもよいでしょう。
プライバシーの確保では、道路や隣近所との位置関係を考慮した上で、窓の設置を考えましょう。高窓など視線が入りにくい場所に窓を設置すれば、その分プライバシーも守ることができます。
他にも、視線を遮るために外部にフェンスなどの目隠しを設置する方法も有効です。
日当たり・風通しを考慮する
平屋はワンフロアで生活空間とするため、どうしても間取りの中央部分に光が届きにくく、風通しも悪くなりやすいです。日当たり・風通しを確保するためにも、間取りの工夫が必要です。
例えば、部屋の奥までしっかりと光を確保できるように勾配天井にして、高窓や天窓を設置する方法があります。
しっかりと部屋の中の空気を循環させるなら、勾配天井にシーリングファンを付けるのもおすすめです。
また、部屋にはできるだけ2方向に窓を設置して、風の通り道をつくりましょう。
収納スペースを確保する
平屋は2階建てよりも延床面積の確保がしづらいため、収納スペースの確保も難しいというデメリットがあります。できるだけ収納スペースは確保するようにしましょう。
例えば、間取りを計画しているときにデッドスペースが生まれれば、その部分を収納スペースにするのもよいでしょう。
また、平屋は2階建てのように上階がないため、天井を高く確保することもできます。高天井にして、屋根裏部分にロフトや小屋裏収納をつくって収納を確保するのもおすすめです。
水害の少ないエリアに建てる
平屋は2階がない分、水害時に避難できる場所がありません。浸水した場合、生活エリアすべてに被害が及びます。
平屋を建てる際は、ハザードマップを確認して水害の少ないエリアに建てるようにしましょう。浸水などの被害が発生しにくければ、その分家と家族を守れます。
まとめ
平屋は2階建てよりも坪単価が高くなる傾向があるものの、必ずしも平屋のほうが高いというわけではありません。
家づくりで平屋と2階建てのどちらを建てるか検討する際は、坪単価だけでなく総工費や土地の価格など、さまざまな部分からどのくらいの予算が必要になってくるのかを考えましょう。
少しでも平屋を安く建てるなら、間取りなどの工夫も必要です。
ここで解説したことも参考に、自分にぴったりの平屋の家づくりを計画しましょう。平屋の家づくりで悩んでいる方は、ぜひご相談ください。
