住宅性能評価という名前を聞いたことがあっても、実際にどのような制度なのか分からないという方も多いのではないでしょうか。
住宅性能評価を受けておくと、地震保険の割引を受けられたり、将来住宅を売却しやすくなったりといったメリットがあります。
一方で、評価を受けたからといってトラブルを全て防げる訳ではないといった点には注意しなければなりません。
本記事では、住宅性能評価について制度の概要をお伝えするとともに、メリット・デメリットや実際に評価を受けるための流れなど解説していきます。
Contents
住宅性能評価とは
住宅性能評価とは、住宅の性能を客観的に評価する制度のことを言います。
「高性能」と謳われる住宅を見聞きする機会は多いでしょう。
しかし、住宅の専門知識がない人にとっては、性能の良さは分かりにくいものです。
高性能と言っても判断基準が明確でなければ、同じ高性能でもレベルが異なる場合もあります。
そのような住宅の性能を明確な基準で評価するためのものが「住宅性能評価」なのです。
住宅性能評価の概要
住宅性能評価では、国土交通省の定めた基準を元に、第三者の住宅性能評価機関が住宅の設計や施工を評価します。
その評価結果は「住宅性能評価書」として交付されるのです。
住宅性能評価は平成12年に制定された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づいてスタートして制度です。
この制度により、住宅メーカーや設計者・地域に関わらず共通のルールで住宅を評価でき、専門知識のない買主でも住宅の性能を確認できるようになりました。
住宅性能評価は、取得義務はありませんが、基準に達していない場合は評価書が交付されないため、取得することで一定基準以上の住宅という証になるのです。
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評価基準
住宅性能評価では、4つの必須分野と6つの任意分野の合計10分野で評価します。
それぞれの分野について一覧で確認しましょう。
●必須分野
分野 | 内容 |
構造の安定 | 地震や防風などの災害にどれくらい耐えられるのかを評価 |
劣化の軽減 | 住宅の経年劣化をどれだけ遅らせられるかを評価 |
維持管理への配慮 | 点検・清掃・修繕の維持管理のしやすさを評価 |
温熱環境やエネルギー消費 | 室内の温湿度が外気に影響されにくいかを評価 |
●任意分野
分野 | 内容 |
火災時の安全 | 火災の早期発見のしやすさや火災が発生しても安全を確保できるかを評価 |
空気環境 | 人体に有害な物質が室内に放出されないかを評価 |
光や視環境 | 部屋の明るさなど目に負担を掛けないかどうかを評価 |
音環境 | 遮音性や共同住宅での隣接住宅への音の伝わりにくさを評価 |
高齢者への配慮 | バリアフリー対策について評価 |
防犯 | 防犯面での不法侵入のしにくさを評価 |
上記の分野は新築住宅を対象としています。
中古住宅の場合は新築よりも確認しにくい箇所があり、評価項目が異なるのです。
そのため、中古住宅の性能評価では既存住宅の評価制度で評価し「現状検査・評価書」の交付を受けます。
また、積雪地帯など地域によっては項目ごとに前提が付く場合もあります。
住宅性能評価を取得するメリット
住宅性能評価は必ずしも受けなければならないわけではありません。
しかし、取得することで次のようなメリットがあります。
- 住宅ローンの審査で担保評価の証明になる
- 地震保険の割引を受けられる可能性がある
- 住宅を売却しやすくなる
住宅ローンの審査で担保評価の証明になる
住宅性能評価を取得することで、住宅の資産価値が明確になり担保として有利になります。
フラット35や金融機関によっては、取得した住宅での住宅ローンに金利優遇措置を設けているケースもあるのです。
地震保険の割引を受けられる可能性がある
地震保険は、耐震等級によって次のような割引を受けられます。
等級 | 割引率 |
耐震等級3 | 50% |
耐震等級2 | 30% |
耐震等級1 | 10% |
住宅性能評価で耐震等級を取得することで、等級に応じた割引が受けられるのです。
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住宅を売却しやすくなる
住宅性能評価書を交付されるということは、国の基準を満たした住宅であるという証明です。
評価分野には劣化のしにくさも対象となるため、取得することで劣化しにくい=資産価値が落ちにくい住宅となります。
買主にとっても、見ただけでは分かりにくい住宅の性能が、評価書があるおかげで明確に分かるので購入判断の大きな材料となるでしょう。
そのため、売却時の査定で有利になるだけでなく、売却の際には相場よりも高値で売却できる可能性もあるのです。
また、万が一、売主と買主で住宅トラブルに発展した場合に、「住宅紛争処理機関」を安く利用できるというメリットもあります。
住宅紛争処理機関とは、弁護士会にある住宅の紛争を円滑に処理するための機関です。
住宅性能評価を取得した住宅では、処理機関への紛争処理申請を1件1万円程ででき、トラブルのスムーズな解決に役立ちます。
住宅性能評価を取得するデメリット
住宅性能評価を取得することにはデメリットもあるので、デメリットも把握したうえで判断するようにしましょう。
デメリットには、次の2つが挙げられます。
- 評価コストがかかる
- 評価を受ける事で、全てのトラブルを防げるわけではない
評価にコストがかかる
住宅性能評価を取得するのには、およそ10万円~20万円の費用がかかります。
住宅性能評価を取得する場合、評価を取得しない住宅より建築コストもアップするので注意が必要です。
とはいえ、住宅の性能を上げることは長い目で見るとコストを抑えることにつながるので、大きなデメリットとは言えないでしょう。
ただし、全ての項目を満たす建築は難しい点には注意しましょう。
仮に、採光を良くしようと窓を大きくすれば、耐震性が下がってしまう可能性があります。
バランスよく評価を得られるように、総合的に判断することが大切です。
評価を受けることで、全てのトラブルを防げるわけではない
住宅性能評価を受けた住宅は性能が基準以上の証ではありますが、トラブルが発生しないわけではありません。
近隣住人とのトラブルや建築会社とのトラブルなど住宅の性能以外のトラブルは、性能評価では防ぎようのないものです。
性能に関する部分にしても、評価対象外の部分については保証されていません。
また、評価部分も評価後のアフターケアや定期点検を適切に行い維持管理する必要はあります。
性能評価を受けたからと放置していると、住宅のトラブルに発展する可能性はゼロではないのです。
住宅性能評価を受ける流れ
最後に、住宅性能評価を受ける流れについて見ていきましょう。
大まかな流れは、次のステップです。
- 見積もり
- 検査
- 評価書の交付
見積もり
まずは、評価の相談・見積もりからスタートします。
住宅性能評価は、国土交通大臣が登録した第三者機関でのみ評価可能です。
評価機関もいくつかあるため、どの機関に依頼するか相談・見積もりを取って決めるようにしましょう。
新築住宅の場合、評価は「設計性能評価」と「建設性能評価」の2種類となり、検査も設計段階と完成時の2回必要になります。
着工前に評価が必要となるため、着工後評価を受けられなくなるので注意が必要です。
申請自体は売主・買主などに関わらず誰が申請しても構いませんが、設計図などの様々な書類が必要になります。
一般的には、建築会社やハウスメーカーで申請すれば評価申請手続きをサポートしてくれるので、一度相談してみるとよいでしょう。
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検査
建設状況に応じて、現場での評価が行われます。
現場検査では、原則4回のタイミングで検査が行われます。
- 基礎配筋工事が完了した段階
- 構造躯体の工事が完了した段階
- 内装下張り工事の直前
- 完成段階
各検査で指摘がある場合は、指摘内容に応じて工事の是正が行われるのです。
評価書の交付
すべての評価が終了すると、住宅性能評価書が交付されます。
評価書の交付で性能評価は終了です。
交付後に物件の引き渡しを受けます。
まとめ
住宅性能評価について、制度概要やメリット・デメリットと住宅性能評価を受ける流れについて解説しました。
中古住宅の流通が比較的少ない日本において、住宅性能評価はまだ一般的ではありませんが、将来的に売却することも考えているという方にとってはメリットの多い制度だといえるでしょう。
住宅性能評価の利用を考えている方は、ぜひ本記事の内容を参考になさってください。