都心に家を建てようとすると、どうしても狭い土地になってしまうことが多いもの。
また、都心でなくとも事情により狭い土地のうえに建物を建てたいと考えることもあるでしょう。
そういった、狭い土地に建てる建物のことを狭小住宅と呼びます。
本記事では、狭小住宅の概要やメリット・デメリット、狭い土地でも快適に過ごすための間取りの工夫など解説します。
Contents
狭小住宅とは
狭小住宅とは、その名前の通り「狭くて小さい住宅」のことです。
明確な大きさの定義はありませんが、一般的に15坪以下の土地に建築される住宅を狭小住宅と呼びます。
土地面積は15坪あっても、地域によって建ぺい率が定められており、土地面積いっぱいに住宅を建てられるわけではありません。
そのため、地域によっては狭い土地のさらに一部にしか家を建てられないという場合もあるのです。
日本は、居住用の土地が少ない国でもあります。
さらに、土地は広く整った形をしているほど価値が高くなります。
特に、都市部や利便性の良い土地では土地価格も高額になりがちです。
その点、狭小地や形が歪な土地は、利便性の良い立地でも安い価格で購入できます。
狭小住宅は狭い・不便と言ったイメージを持つ方も多いですが、近年は都市部などで利便性の良い場所で、マイホームを検討している人に狭小住宅は注目されているのです。
関連記事:小さい家とは?定義から暮らすメリットまで詳しく解説
狭小住宅の3つのメリット
狭小住宅というと、狭くて生活しにくいイメージを持っている人も多いでしょう。
しかし、狭小住宅にもメリットはたくさんあります。
狭小住宅のメリットとしては、次の3つが挙げられます。
- 全体の費用を安く抑えやすい
- 都市部でも検討しやすい
- 税金を抑えやすい
それぞれ詳しく見ていきましょう。
全体の費用を安く抑えやすい
狭い土地だからこそ土地の購入費用を安く抑えられます。
例えば、土地価格が坪80万円の場所で考えてみましょう。
- 40坪の土地を購入:40坪×80万円=3,200万円
- 15坪の土地を購入:15坪×80万円=1,200万円
このように、土地代だけでも数千万円の差が生まれてくるのです。
また、建築できる面積が限られているため、あまり大きな住宅は建設できず、建築費も抑えられます。
狭小住宅の場合、3階建てというケースも珍しくありません。
3階建ての場合建築費は高くなりますが、土地価格を大幅に抑えられる上に建築面積も小さいことから、トータルの建築費は安くなるのです。
ただし、全体的な費用は抑えられますが、坪単価で考えると割高になる可能性もあるので注意しましょう。
また、生活を始めてからの費用が抑えられる可能性もあります。
住宅面積が小さい分、日々の光熱費を抑えられるだけでなく、修繕も小規模となるためメンテナンスのコストも比較的かからないでしょう。
都市部でも検討しやすい
狭小住宅であれば、土地面積が小さくなるため土地価格の高い都市部や利便性の良い土地でも検討しやすくなります。
土地価格の安い郊外で広い家を検討する方も多いでしょうが、郊外では利便性の面で都心部より劣ります。
通勤や通学、日々の買い物や病院などを考えると、利便性の良い土地に住むメリットは大きいものです。
利便性の良い場所であれば、車を持つ必要がなくなり車にかかる費用も抑えられるでしょう。
税金を抑えやすい
家を購入すると、切り離せないのが固定資産税です。
固定資産税は、不動産の所有者に対して毎年課税されるため、マイホーム所有者の大きな負担となります。
狭小住宅は、「小規模住宅用地」に該当するため、税金が軽減される特例を受けやすくなるのです。
小規模住宅用地では、土地の面積200㎡以下の部分の固定資産税は評価額の6分の1に軽減されます。
仮に、15坪の土地であれば約50㎡なので、小規模住宅用地の特例を適用できるのです。
また、固定資産税と同時に課税される都市計画税も、小規模住宅用地では軽減されます。
固定資産税と都市計画税は、広い住宅では数十万円課税される場合もあるので、毎年の税金を抑えられる点は、大きなメリットと言えるでしょう。
関連記事:家を建てるときにかかる税金とは?5つの税金について計算方法や軽減措置をご紹介
狭小住宅の3つのデメリット
狭小住宅には、小さい住宅しか建築できないため、デメリットもあります。
デメリットとしては、次の3つが挙げられます。
- 坪単価が高くなりやすい
- 生活導線が縦方向になりやすい
- 隣地との距離が近い
それぞれ詳しく見ていきましょう。
坪単価が高くなりやすい
狭小住宅は、建築費自体は安く抑えられますが、坪単価でみると割高になります。
狭小住宅の場合、土地が狭く重機の搬入や足場の確保、職人の駐車場の確保が難しい場合があります。
別に駐車場を確保する必要や重機が使えず人力での作業が増えることで、人件費などが高額になる場合があるのです。
狭小住宅では3階建てを検討する方が珍しくなく、階数が増えることで建築費も高くなる可能性もあります。
隣地の視界や音を遮るための防音対策などを加えると、さらに費用がかかるでしょう。
このような要因で、建築費が高くなりやすく坪単価でみると割高になってしまうのです。
また、狭小住宅を検討するうえでは、住宅ローンや住宅ローン控除を適用できるかを事前に確認する必要もあります。
金融機関によっては、住宅ローンを適用できる住宅の面積が決められている場合があるのです。
例えば、住宅支援機構のフラット35では、住宅ローンの利用条件として次のようなものがあります。
- 一戸建て住宅等の規模:70㎡以上
- 一戸建て住宅等の規格:原則として2以上の居住室、ならびに炊事室・便所及び浴室の設置
住宅ローン控除の適用条件にも、住宅規模に対して次のような条件があります。
- 床面積が50㎡以上であること(一定の基準を満たした場合40㎡以上)
狭小住宅では住宅ローンの選択肢が限られ、控除も受けられない可能性があるので注意が必要です。
関連記事:坪単価の意味とは?注文住宅の最適なコストパフォーマンスを考える!
生活動線が縦方向になりやすい
狭小住宅の場合、生活スペースの確保のために基本的に2階建てや3階建てとなります。
間取りによっては、1階で洗濯をして3階に干しに行くというように、生活導線が縦方向に長くなってしまう場合があるでしょう。
掃除するにも階数が多くなれば、その分移動の負担も増します。
また、狭小住宅では収納スペースを多く設けることが難しくなります。
そのため、生活動線も考えて家事が楽になる間取りや収納スペースを確保できるようにすることが大切です。
隣地との距離が近い
土地が広くないため、家のすぐそばが隣の家というケースも珍しくありません。
隣の家が近いと、騒音や隣からの視線が気になるといった問題が起こる可能性があります。
音対策やプライバシーの確保ができるように、間取りを検討する必要があります。
また、周りを家に囲まれることで日当たりや風通しが悪くなることも考えられます。
周囲の家の状況を考慮したうえで、陽当たりを確保できるように工夫することが大切です。
狭小住宅で活用したい間取りの工夫
狭小住宅を快適なものにするには、間取りの工夫が不可欠です。
狭い土地を最大限活用できるための間取りの工夫ポイントとして、次の3つを紹介します。
- ロフトやスキップフロアで縦に活用する
- 壁を少なくすることで開放的にする
- 中庭や屋上庭園もおすすめ
ロフトやスキップフロアで縦に活用する
スキップフロアとは、各階の中間にスペースを設ける建築方法のことを言い、1階と2階の間に中間階を設けるようなイメージです。
階段や段差でつながっていることで一つのフロアとして感じられるため、奥行き感や空間の広さを演出できます。
また、仕切りを利用しなくても、部屋の役割を自然と分けることにもつながるというメリットもあります。
ロフトも、収納スペースや子ども部屋・趣味の部屋として人気があります。
床面積を増やしつつ空間を広く見せるのに、有効なので検討してみるとよいでしょう。
壁を少なくすることで開放的にする
各部屋に仕切りを設ければ部屋数が多くなりプライバシーを確保できますが、狭く感じてしまいます。
空間を区切ってしまうことで、部屋全体が暗く感じてしまう場合もあるでしょう。
極力壁を設けないようにすることで、開放感を演出できます。
部屋をどうしても仕切りたい場合は、先述したスキップフロアや壁ではなく家具を活用する方法もあります。
子どもが小さいうちは部屋を設けず、大きくなったら仕切りを検討するのも良いでしょう。
また、ドアも空間を狭く見せてしまうため、ドアを外すことや引き戸にするのもおすすめです。
壁を設けないことで、家族間でのコミュニケーションをしっかりとれるというメリットもあるかもしれません。
中庭や屋上庭園もおすすめ
狭小住宅で日当たりや風通しを確保するために、中庭や屋上庭園をつくる方法もおすすめです。
中庭のための吹き抜けを設置することで、明るさと空間の広さを感じられるようになります。
また、中庭側に窓を設けることで、道路側の窓よりも防犯面を気にせず採光や風通しを確保できます。
周辺からの視線や車の心配も必要ないので、洗濯物や子どもを遊ばせるのも安心してできるでしょう。
特に、都市部でよくある間口が狭くて奥行きが長いタイプの住宅の場合は、採光が難しくなるので中庭を取り入れることをおすすめします。
また、土地が狭いためガーデンニングなどで趣味を楽しめる庭は難しくなります。
屋上庭園を設けることで、ガーデニングやバーベキューなどを楽しむことも可能です。
まとめ
狭小住宅についてお伝えしました。
狭小住宅は一般的な住宅と比べて、間取りの面でさまざまな工夫をすることが求められます。
狭い土地の上に家を建てようと考えている方は、本記事の内容をぜひ参考になさってください。