家を建てるにあたって、平屋にするか2階建てにするか迷っていませんか? 平屋にも2階建てにもそれぞれメリットとデメリットがあり、どちらがよいかは単純には決められません。
そこで本記事では、平屋と2階建て住宅を5つのポイントで徹底比較します。ぜひ平屋と2階建ての特徴をよく知って、選ぶ際の参考にしてください。
Contents
そもそも平屋とは?
多くの人がご存知のことと思いますが、平屋とは1階建ての建物をいいます。では、法律ではどこまでが1階建てと見なされるのか、詳しく解説しましょう。
平屋とはどんな家のこと?
平屋とは、1階部分のみで造られた建物をいい、事務所や店舗といった住宅以外の建物でも使われる言葉です。一般的な平屋の場合、キッチン、リビング、寝室、トイレ、浴室、洗面所などがすべてワンフロアにあり、階段のない住まいとなっています。
不動産広告では「1階建て」と表記されることもあります。また建築基準法や不動産登記では、「平家建」と表記します。
平屋というと、リビングや居室のすぐ上が屋根になっているイメージがあるかもしれません。しかし実は、屋根の下の空間を利用した小屋裏収納や、ロフトスペースがある平屋も存在します。
平屋にロフトや小屋裏収納を造る場合には、建築基準法で定められた条件があります。それは、ロフトや小屋裏収納の天井高が1.4m以下であることと、広さが1階部分の床面積の2分の1以下であることです。天井が斜めになっている場合は、平均天井高で計算します。
天井高が1.4mを超えたり、床面積が1階部分の半分を超えたりすると、ロフトスペースや小屋裏収納とは認められず、法律上は2階建てなってしまいます。ロフトや小屋裏収納は、基本的に床面積に算入されませんが、2階と見なされると床面積に加えられ、固定資産税が上がってしまうことがあります。
以前は、ロフトや小屋裏収納への昇降には、取り外し可能なはしご段しか認められていませんでした。今でも一部の自治体ではその規定が設けられていますが、多くの自治体では固定階段も認められるようになりました。
最初に「平屋とは階段のない住まい」といいましたが、中には「階段のある平屋」も存在するのです。
平屋と2階建て、どちらのほうが多い?
平屋の住宅と2階建ての住宅は、どちらのほうがどのくらい多いのでしょうか。国土交通省が5年ごとに行っている「住宅・土地統計調査」のデータを見てみましょう。
2023年(令和5年)に行われた調査結果では、全国の一戸建て住宅の総数は約2923万軒でした。そのうち平屋建ては約335万軒、2階建ては約2475万軒、3階建て以上は約113万軒となっています。つまり、日本の一戸建て住宅の約85%は2階建てで、平屋は約11%に過ぎません。
都道府県別に見ると、平屋の割合が多いのは1位が宮崎県、2位が鹿児島県、3位が沖縄県となっています。宮崎・鹿児島では、2023年に着工された一戸建て住宅の約半数が平屋でした。
平屋は2階建て、3階建てよりも風の影響を受けにくくなります。そのため、台風の直撃が多い九州・沖縄地方では、平屋が好まれる傾向にあります。
平屋と2階建てをさまざまな面から比較
同じ一戸建て住宅でも、平屋と2階建てでは特徴に違いがあります。どのような部分が異なるのか、さまざまな側面から平屋と2階建てを比較してみましょう。
比較ポイント1:建築時にかかる費用
延床面積が同じ平屋と2階建てで、床面積あたりの建築費、いわゆる坪単価を比較すると、平屋のほうが高額になることがほとんどです。
同じ床面積の家を建てる場合、2階建てよりも平屋のほうが建築面積は広くなります。その分、基礎工事を行う面積や、屋根の面積が大きくなるので、建築費用がかかってしまうのです。
一方、2階建ては建物の高さがある分、平屋よりも大きな足場を組まないと建築できません。また、2階にトイレや洗面台などを設置すると、水回りの配管工事の費用がかかります。
ただ、単純に坪単価で比較すると、2階建てより平屋のほうが少し高くなるケースが多くなっています。
比較ポイント2:建築に必要な土地の広さ
同じ延床面積の家なら、平屋のほうが2階建てより広い土地が必要になります。その分、土地の購入費がかかると考えておきましょう。
すべての土地は建築基準法によって、敷地面積に対して建物を建ててもよい面積を示す、建ぺい率が定められています。例えば建ぺい率が50%の土地なら、敷地の半分の面積までしか建物を建てることができません。
同じ建築面積の建物なら、平屋よりも2階建てのほうが、より広い延床面積を確保できるのです。
敷地面積に対してどのくらいの広さの建物を建てられるかの規定としては、建ぺい率の他に容積率があります。容積率が50%の土地の場合、建物の延床面積が敷地の半分以下でなければなりません。
建ぺい率が50%、容積率が50%といったように、建ぺい率と容積率が同じ土地なら、平屋でも2階建てでも延床面積は同じになるでしょう。それどころか、2階建ての場合は階段の分だけ、平屋よりも居室の面積が狭くなることもあります。
しかし多くの土地では、建ぺい率より容積率の数値が大きくなっています。そのため、同じ敷地面積なら、2階建てのほうが広い家を建てられると考えてよいでしょう。
比較ポイント3:暮らしやすさ
平屋は、すべての居室や設備がワンフロアに収まっています。上下の移動をしなくて済むので、高齢者にとって住みやすい家だと思います。
階段は落下などの事故が起きやすい場所のため、小さい子どもがいる家庭では注意が必要です。平屋の多くは階段がないため、子どもにとっても危険が少なく住みやすい家となります。
家事の面からも、平屋のほうが2階建てより暮らしやすいといえます。洗濯物や掃除機といった荷物を抱えて、1階と2階を行き来するのは重労働です。効率よく家事を進めたいなら、平屋のほうが向いているでしょう。
ただ、周囲の環境によっては、2階建てのほうが暮らしやすいこともあります。
周囲に高い建物が多いと、平屋では日当たりが確保できないこともあります。また、周囲の家との距離がとれないような住宅密集地では、平屋だと風通しも悪くなってしまいます。
比較ポイント4:防犯や安全面
平屋は、道路や隣家からの視線が届きやすく、住む人のプライバシーが守られにくいというデメリットがあります。そのため間取りを考える際には、道路や隣家など敷地周辺の状況をよく把握して、窓や玄関ドアなど開口部の位置やサイズに注意したほうがよいでしょう、
さらに平屋は、窓やドアなどの開口部がすべて1階にあるため、泥棒に侵入されやすいという特徴があります。そのため、人感センサーライトや防犯カメラを設置する、踏むと音が鳴る玉砂利を家の周囲に敷き詰める、窓に面格子を付けるといった防犯対策にも気を配らなければなりません。
ただし、空き巣など家に侵入しようとする犯罪者は、人目を避けたがるものです。そのため、人の目が届きにくい2階から侵入することも多くなっています。
塀や植え込みなどがなく、住人のプライバシーが丸見えになってしまう平屋の場合、泥棒が侵入しようとする姿も目立ってしまうので、防犯の面から見ると2階建てより優れているといえるかもしれません。
また平屋の建物は重心が低く、上からの荷重もかからないので、2階建てより建物が安定するという特徴があります。そのため地震の揺れの影響を受けにくい、耐風圧性が高く台風などでも建物が壊れるリスクが低いというメリットがあります。
万が一、地震や火災といった災害が起こった際にも、平屋ならどの開口部からも簡単に逃げ出せるというメリットもあります。
ただし洪水などの水害では、2階建てなら上階に避難できますが、平屋では避難できるような場所がありません。家財道具もすべて1階に置かれるため、水没して破損するリスクが大きいといえるでしょう。
比較ポイント5:建築後のランニングコスト
建築後のランニングコストには、大きく分けて3種類あります、不動産取得税や固定資産税といった税金、光熱費など日常生活にかかる経費、家のメンテナンス費用です。
同じ延床面積の家なら、平屋のほうが2階建てより建築面積が広くなります。そのため不動産取得税や固定資産税は、2階建てより平屋のほうが高くなりがちです。
光熱費などの日常生活にかかる費用について、平屋と2階建てのどちらがお得かは、家の構造や間取りにより変わってきます。ただし、平屋はすべての部屋のすぐ上が屋根になっているので、屋根の断熱をしっかりしておかないと、太陽光や外気の影響を受けやすくなってしまいます。
家のメンテナンスに関しては、2階建てのほうが高くなりがちです。なぜなら2階建ての場合、屋根や外壁のメンテナンスの際には周囲に足場を組む必要があるからです。
掃除や窓拭きといった日常生活の中で行うメンテナンスも、2階建てのほうが高さがあったり複雑な構造だったりすることから、手間がかかると考えておきましょう。
平屋と2階建て、それぞれのメリット
これまで見てきたポイントを踏まえて、平屋の住宅と2階建ての住宅、それぞれのメリットを見てみましょう。
平屋のメリット
建物の造りが安定している
平屋は建物の重心が低く、上からの荷重が少ないので、構造的に安定しています。そのため耐震性を高くしやすいといえます。万が一、地震が起こった際にも、揺れによって建物が破損するリスクは低いといえるでしょう。
また平屋は耐風圧性が高く、台風などでも強風で家が破損するリスクが低くなっています。台風が直撃しやすい地域なら、風を受けやすい2階建てや3階建てよりも、平屋のほうがおすすめです。
さらに構造的に安定しているため、耐震性能を落とさず開口部を大きくとったり、窓の数を増やしたりすることも、それほど苦労なくできるというメリットもあります。
家事の効率がよい
平屋はすべての居室がワンフロアにまとまっているため、家事の際に上下移動する必要がありません。掃除機を持って2階に上がるといった面倒がなくなるため、効率よく家事ができます。
さらに、水回りを1カ所にまとめるなど間取りに工夫をすれば、洗濯と料理を並行して進めるといったこともできるでしょう。また、水回りをまとめることで、建築費の節約にもなります。
バリアフリーを実現しやすい
平屋なら、家の中で上下移動する必要がないので、バリアフリーの家を実現しやすくなります。年をとってからも長く住むことを考えるなら、フラットなバリアフリーの家にしておくのがおすすめです。
また、階段は転落などの事故の起きやすい場所ですが、平屋ならそもそも階段がないため、事故のリスクがなくなります。小さい子どもでも親の目の届くところで安心して遊ばせられる、安全性の高い家になることでしょう。
家族間のコミュニケーションをとりやすい
平屋はすべての居室が同じフロアにあるため、家族が自室にいても気配を感じやすくなります。そのため、家族間のコミュニケーションがとりやすい家になるといってよいでしょう。
特に思春期の子どもは、親を鬱陶しく思って自室にこもりがちになることもあります。そんなときでも、子どもの気配が感じられれば、親としても安心できるのではないでしょうか。
リビング中心の間取りにすれば、自然と顔を合わせる機会も増えるでしょう。家族全員の動向をつかみやすいのも、平屋のメリットといえます。
2階建てのメリット
階層ごとに用途を使い分けられる
1階部分はリビングダイニングや浴室といった、家族全員が使うパブリックな空間にして、2階は家族それぞれの居室にするといったように、階層によって使い分けができるのが2階建てのメリットの一つです。
1階と2階の両方にキッチンやトイレを配置すれば、2世帯住宅にもなります。平屋に2階部分を増築して2世帯住宅するのは大変ですが、将来的に2世帯住宅にすることを見込んで2階建てを建てておけば、リフォーム費用も安く抑えられます。
住人のプライバシーを守りやすい
近年では、周囲からの目線を避けるために、2階にリビングを造る家庭も増えています。2階なら通行人や隣家からの目線が届きにくくなるので、住む人のプライバシーが守られやすくなります。
隣家と対面しないよう窓を付ける方角に気を付ければ、大きなテラス窓も設置できます。日当たりや風通しが確保でき、ゆったりとくつろげる空間になるでしょう。
狭い土地でも居住スペースを確保しやすい
2階建てなら縦の空間を利用できるため、狭い土地でも十分な居住スペースを確保できます。土地の購入予算が少ない、持っている土地の面積が狭いといった場合には、2階建てがおすすめです。
また敷地が狭く、周囲の建物との距離がとれない場合、日当たりが気になることもあります。2階建てなら、2階をリビングにするといった工夫で、日当たりを確保しやすくなります。
建築費用が抑えられる
同じ延床面積の平屋と比べた場合、2階建てのほうが基礎工事の必要な面積や屋根の面積は狭くなります。そのため建築費用が抑えられます。
不動産取得税や固定資産税も、平屋より安くなることが多いので、建てた後のランニングコストも抑えられるのも2階建てのメリットでしょう。
まとめ
平屋と2階建て、それぞれにメリットがあり、単純に比較できないことがお分かりいただけたのではないでしょうか。平屋と2階建てのどちらにするか迷った際には、家族構成や生活スタイル、将来のライフプランも視野に入れて決めることをおすすめします。
タクトホームは、平屋と2階建てのどちらも豊富な建築実績があり、多彩なプランの家をご提供してきました。平屋にするか2階建てにするか迷った際には、ぜひタクトホームにご相談ください。