平屋は2階建てと比較すると、より自由に天井高さを決めることが可能です。
天井を高くすることで開放感が出たり、日当たりや風通しがよくなったりと、さまざまなメリットが得られます。
反対に天井を低くする場合、建築基準法で最低限の天井高さが決められています。そのため、制限を守った上で天井高さを決めなければなりません。
ここでは、平屋の天井を高くすることのメリット・デメリットや注意点、部屋別でおすすめの天井高さについてご紹介します。
Contents
平屋は天井高さを自由に調整できる
平屋は1階のみで構成された造りになっているので、2階建てよりも自由に天井高さの調整ができます。
法律にある高さ制限の影響を受けることがほとんどないため、外観・内観ともにより自由にデザインを考えることが可能です。
内観の天井デザインにおいては、屋根の傾斜に合わせた勾配天井を取り入れることもできるので、よりデザインの幅が広がります。
こだわりの平屋を造るなら、天井高さにもこだわることでより洗練された空間造りができるのです。
平均的な天井高さはどれくらい?
平屋や2階建てでよく採用される平均的な天井高さは、2.4~2.6m程度です。これよりも高さのある天井にすると、より開放感のある室内空間が造れます。
平天井のまま天井をさらに高くしたり、屋根の傾斜に合わせて勾配天井を採用したりするのもよいでしょう。天井が高いと実際の広さよりも空間が広く感じられます。
のびのびとリラックスできる空間にするなら、高さのある天井がおすすめです。
建築基準法で決められている天井高さ制限は?
建築基準法では、天井高さは2.1m以上と定められています。そのため、天井の高さを抑えて低い天井にしたい場合は2.1mが限界です。
ただし、フロアの一部分だけを2.1m以下の天井にすることはできます。この場合、部屋の床面からそれぞれの空間の天井高さを測り、その平均値を出し、平面図に記載することで建築確認申請の審査をクリアすることが可能です。
低層住居専用地域の日影規制とは?
天井を高くする場合、「低層住居専用地域の日影規制」を考慮しなければなりません。
低層住居専用地域とは、都市計画で定められた用途地域のことです。
この地域では、良好な住環境を確保するために、
- 10mまたは12mの絶対高さの制限
- 敷地境界から外壁面までを1mまたは1.5m離す外壁の後退距離制限
などが設けられている場合があります。そのため、低層住居専用地域では、主に1~2階建ての高さの低い住宅がゆったりと立ち並んでいることが多いです。
日影規制は、建築基準法の一つで、12月22日の「冬至」を基準に、まったく日が当たらないことがないように建物の高さを制限する規制のことです。
低層住居専用地域では、「軒の高さが7mを超える建物、または地階を除く階数が3階建ての建物」は規制されています。この地域では軒の高さが7mを超える家は建築が不可能ということです。
つまり、平屋でより高さのある天井にしたい場合、7mを超えないように設計しなければなりません。ただ、平屋で7m以上ある建物は現実的ではないので、あまり気にしなくてよいでしょう。
平屋の天井を高くするメリット
平屋であれば比較的自由に天井を高くできます。
天井を高くすることで次のようなメリットも得られます。
- 開放感・高級感を演出できる
- 日当たり・風通しがよくなる
- 間取りの自由度が高まる
それぞれのメリットについて、詳しく解説していきます。
開放感・高級感を演出できる
同じ床面積でも天井が高い部屋のほうが広く感じられ、開放感も演出できます。
屋根の形状を生かして勾配天井にすれば、平天井よりもメリハリが生まれて見た目もおしゃれです。
また、天井が高いだけで高級感もでてきます。
シャンデリアやペンダントライトなど、デザイン性の高い照明器具を取り入れれば、さらに洗練された室内空間の演出も可能です。
日当たり・風通しがよくなる
天井を高くし、高窓を設置することで日当たりのよい空間造りができます。
平屋は、1階部分に生活スペースがすべてまとめられています。隣家との距離が近いと視線が気になり、大きな掃き出し窓を設置するのが難しい場合もあります。
たとえ大きな掃き出し窓を設置したとしても、視線を気にしてカーテンを閉めきってしまうこともあるでしょう。そうなると昼間でも暗い室内空間になってしまい、気分まで暗くなってしまいます。
高窓であれば隣家の視線を気にすることはありません。大きな窓を設置すれば、しっかりと自然光を取り入れられます。
また、開閉できる高窓であれば、そこから風を取り込むことも可能です。風の通り道をつくることで、いつでも新鮮な空気を循環でき、より気持ちのよい室内空間になります。
狭小地や密集地のように、日当たりや風通しに心配がある土地で平屋を建てるなら、天窓もおすすめです。屋根の傾斜に合わせて勾配天井にして天窓を設置すれば、日当たりと風通しのどちらも解決できます。
間取りの自由度が高まる
天井が高くなると、縦の空間に余裕が生まれ、より間取りの自由度が高まります。
例えば、デッドスペースになる縦の空間にスキップフロアやロフトを造ることで、空間の有効活用も可能です。
スキップフロアなら、つながりのある空間でありながらプライベートなスペースを確保でき、趣味や仕事に没頭できます。
ロフトは、建築基準法により天井高さが1.4m以下に制限されています。天井高さの低い空間になりますが、収納スペースとして活用したり、こもり部屋として使ったりとさまざまな利用方法があります。
平屋の天井を高くするデメリット
平屋の天井を高くすることで、開放感や高級感の演出、日当たり・風通しがよくなるなどのメリットがありますが、デメリットも存在します。
- 建築費用が高くなる
- 光熱費が高くなる
- メンテナンスが大変になる
3つのデメリットについて解説していきます。
建築費用が高くなる
天井を高くすると、使用する建材が増えるため建築費用が高くなりやすいです。
勾配天井にすると壁が4m以上の高さになることもあり、その分仕上げ材や建材の使用が増えてしまいます。足場を使って施工する場合もあるため、足場代もプラスされ、最終的なトータル費用も高くなりがちです。
もともと、平屋は屋根や基礎の面積が2階建てよりも広いことから、建築費用や坪単価が高くなりやすいです。天井を高くするとなるとコストがさらにプラスされてきます。予算も考慮して、天井を高くするかどうか決めなければなりません。
光熱費が高くなる
天井を高くすることで、場合によってはしっかりと明かりを確保するために照明器具の数を増やす必要があり、その分電気代が高くなることがあります。また、天井が高くなると室内空間が広くなるため、冷暖房効率も悪くなりがちです。
冷暖房効率を改善するためには、シーリングファンを取り付けたり、家の断熱・気密性能を高めたりする必要があります。
メンテナンスが大変になる
天井が高いと、電球の交換や高窓の掃除などのメンテナンスが大変です。
手が届かないところの掃除をするために、柄の長い伸縮式のモップを使ってほこりを払ったり、脚立を使って掃除をしたりしなければなりません。
しかし、脚立を使って自分で掃除をするのは、慣れていないと転倒・転落などのリスクもあります。不安な方はハウスクリーニングに頼るのも一つの方法です。
平屋の天井を高くする際の注意点
平屋で天井を高くすることで、建築費用や光熱費の増加、メンテナンスが大変といったデメリットが生じます。
「それでも天井を高くしたい!」ということであれば、デメリットとうまく付き合っていかなければなりません。
そのためにも、次の注意点を考慮しましょう。
- 予算を考慮する
- 断熱・気密性能を高める
- メンテナンスしやすい設計を考える
それぞれの注意点について解説していきます。
予算を考慮する
天井の高さを決める際は、初期費用と入居後にかかるメンテナンスコストを考え、どのくらいの予算が掛かるかを考慮しましょう。
天井を高くすることで建築費用が増えるのは、必要な建材が増えて工事がより複雑になるからです。また、天井が高いことで、冷暖房にかかる光熱費が高くなる場合もあります。
さらに入居後、高い位置に設置した照明器具の交換のため、ハウスクリーニングや工務店に依頼しなければならないこともあるかもしれません。
このように、天井を高くすると建築の際にかかる初期費用が高くなるだけでなく、入居後も維持費用がかかってくるのです。高い天井にどのくらいの予算をかけられるかを考えた上で、天井高さを決めることをおすすめします。
断熱・気密性能を高める
断熱・気密性能を高めることで、天井の高い平屋がより快適な空間になります。
断熱性・気密性が高いということは、外気の影響を受けにくく、室内の空気が外に逃げにくいということです、つまり室内空間を快適な温度に維持できるということです。
高い天井や勾配天井では冷暖房効率が悪くなりがちですが、高断熱・高気密にすることでそのデメリットを解消でき、光熱費の削減にもつながります。
さらに、天井にシーリングファンを取り付けたり、サーキュレーターを回したりすることで、空気が循環しやすくなり快適な温度にすることも可能です。
メンテナンスしやすい設計を考える
天井を高くする際は、メンテナンスのしやすい設計を考えてください。
照明器具や空調設備などを設置する高さには注意しましょう。
空調設備は高くても3m以下の位置に設置すれば、お手入れの際にも脚立に上って手が届きます。
照明器具は、埋め込みのダウンライトや天井付けシーリングライトにしてしまうと手が届かないため、業者に電球交換をしてもらわなければなりません。
ペンダントライトであれば、コードの高さを調整することで、自力で電球交換が可能です。
また、壁付けブラケットライトやスポットライトもおすすめです。
平屋でおすすめの部屋別の天井高さ
天井は、すべての部屋で高くしたらよいというわけではありません。
それぞれの空間で最適な天井高さがあります。
ここでは、部屋別でおすすめの天井高さをご紹介します。
リビング
リビングは、平屋の住まいの中でもっとも家族が集まる場所であり、お客様を招き入れる場所でもあります。
たくさんの人が集まっても圧迫感が出にくく、ゆったりと快適に過ごせる空間にするなら、天井を高くしましょう。
一般的な高さは約2.4mですが、可能であれば2.7~3.0mなどの高い天井にして、居心地のよい空間を設計するのがおすすめです。
リビングとダイニングがつながっている場合、ダイニングはそれほど天井を高くしなくてもよいでしょう。ダイニングは2.4mなどの一般的な天井高さにし、用途に合わせて空間を区切ることも可能です。
キッチン
キッチンは、キッチンカウンターやレンジフード、収納棚、吊り戸棚などの高さに加え、キッチンをよく利用する家族の身長を考慮して高さを決めましょう。
収納がたくさん欲しい方は、吊り棚を設けることになるため、その分天井の高さも必要です。ただ身長が低い方だと、天井の高いキッチンでは吊り戸棚に手が届かなくなる可能性もあるので、注意してください。
寝室
寝室は睡眠をとる場所なので、天井を低くして落ち着いた空間を造りましょう。
床の高さを上げたり、下がり天井にして天井高を調整したりすれば、緩やかに他の空間と仕切ることも可能です。
ただし、書斎を設けたり映画鑑賞をしたりと、寝室を寝るため以外の目的でも使う場合、天井が低いと使いにくいかもしれません。
用途に合わせて天井高さを変えて、メリハリを付けるのもよいでしょう。
玄関
玄関は住宅の顔です。
暗い玄関よりも、明るい玄関で人をお出迎えしたいことでしょう。特に北側の玄関だと暗くなりやすいため、天井を高くして光を取り入れることをおすすめします。
天井を高くして開放感を演出し、照明を設置すれば、おしゃれな雰囲気の玄関を演出可能です。
トイレ・浴室
浴室の標準的な天井高さは2.1mです。
トイレは長時間過ごすところではありませんが、狭い空間なので天井が低すぎると閉塞感を覚えてしまいます。そのため、2.2~2.4mほどの高さをおすすめします。
和室
和室は畳にじかに座って過ごすことが多いため、天井高さはやや低めに造っておくとよいでしょう。
昔ながらの客間のように落ち着いた雰囲気を出したいなら、2.1~2.3m程度の低い天井高さがおすすめです。リビングとつながる畳コーナーのような和室にするなら、1段上がることも考えてある程度高さを確保するほうがよいでしょう。
まとめ
天井を高くすることで開放感のある素敵な空間ができますが、すべての部屋で天井を高くすればよいというわけではありません。
部屋の用途によって最適な天井高さは異なるので、メリハリのある空間造りをするなら、用途に合わせた天井高さの設計をしましょう。
タクトホームでは、天井高さも含め最適な家造りのプランをご提案いたします。
家造りに関して、不明点があればぜひ一度タクトホームまでご相談ください。