玄関ドアが引き戸の家というと、古い木造家屋をイメージする人が多いのではないでしょうか。しかし近年では、機能性の観点から引き戸の玄関ドアの人気が高まっています。
ただし、玄関ドアを引き戸にした場合のデメリットも少なくありません。引き戸のメリット・デメリットをよく理解し、後悔のない家造りをしましょう。
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引き戸とはどんな扉で、どんなタイプがある?
引き戸というと、昔ながらの左右2枚の扉がスライドするタイプを思い浮かべる人が多いでしょう。実は引き戸には、それ以外にもさまざまなタイプがあります。まずは引き戸について詳しく見ていきましょう。
そもそも引き戸とはどんな扉を指すのかという定義から、さまざまな引き戸のタイプまで、詳しくご説明します。
引き戸とはどんな扉のこと?
引き戸とは、レールや溝に扉をはめこんで、滑らせるように開閉する仕組みの戸のことです。レールに沿って引っ張るように力をかけて開閉するので、引き戸と呼ばれています。
引き戸には大きく分けて、床にレールや溝を設置する「レール型」と、扉の上部にレールを設置する「上吊り型」があります。レール型の場合、扉が外れないよう上部にも溝を付けておく必要がありますが、上吊り型は床に溝などを付けず、上部のレール部分のみで扉を支えるカーテンのような構造になっていることがほとんどです。
対して、扉の一辺を蝶番や軸受け金具で壁に固定して、その固定部分を軸にして回転するように開く戸のことを「開き戸」といいます。一般的に「ドア」といわれて思い描くのは、開き戸が多いのではないでしょうか。
引き戸はその構造から、開き戸より軽い力で開閉できるようになっています。そのため子どもや高齢者のいる家庭では、玄関ドアにも引き戸を採用するケースが増えています。
では、さまざまな引き戸のタイプを見ていきましょう。
引き違い戸
引き違い戸は、2本のレールを平行に設置して、それぞれのレールの上に1枚ずつ扉を設置した引き戸です。扉を開く際には、左側の扉を右にスライドさせるか、右側の扉を左にスライドさせます。
左右どちらからも出入りできるのが、引き違い戸のメリットです。ただし、設置するには扉2枚分の幅が必要になります。通常の開け閉めでは、扉1枚分の幅しか開きませんが、扉そのものを取り外してしまうことで、扉2枚分の通路を確保することもできます。
片引き戸
1本のレールの上に1枚の扉を設置して、片側方向のみに開け閉めするタイプの引き戸を、片引き戸といいます。
片引き戸を開けた際には、扉は壁に重なる形になります。そのため、扉が重なる部分の壁を、あらかじめ薄く造っておくこともあります。
片引き戸にはバリエーションとして、2枚、3枚、4枚といった複数枚の扉が連動して開くようになっているものもあります。ただし、引き違い戸のように両側からの開け閉めはできません。
引き込み戸
引き込み戸は、開けた時に扉が壁に隠れるよう、壁の中に「戸袋」と呼ばれるスペースを確保したタイプの引き戸です。片引き戸の一種と考えることもできるでしょう。
引き込み戸のメリットは、開くと扉が見えなくなるため、すっきりとした印象にできることです。ただし、戸袋の中が掃除しにくく、扉以外の物が戸袋に入ってしまうと取り出しにくいというデメリットもあります。
引き分け戸
引き分け戸は、1本のレールに対して2内の扉を設置し、真ん中から左右に扉をスライドさせて開くタイプの引き戸です。
引き分け戸の多くは、引き違い戸を2つ組み合わせたように、2本のレールに2枚ずつ、合計4枚の扉を設置しています。その他に、片引き戸を2つ組み合わせたようなタイプや、引き込み戸を2つ組み合わせたようなタイプもあります。
引き分け戸を設置するには、他の引き戸よりも広い扉4枚分の幅が必要なことがデメリットといえるでしょう。しかし、扉を取り外してしまえばより広い通路を確保できるので、部屋の仕切りによく用いられています。
玄関ドアを引き戸にするメリット
近年では、玄関ドアを引き戸にする家が増えているといいました。引き戸の玄関ドアにはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは玄関引き戸のメリットをご紹介します。
開け閉めが楽
引き戸は、開き戸よりも少ない力で開閉できます。そのため、力のない子どもや高齢者でも出入りしやすいです。
特に小さい子どもの場合、ドアノブに手が届かないことがあります。開き戸は、ドアノブを握って回転させなければ開かないため、ノブに手が届かなければ開けることができません。
引き戸にも手をかける取っ手は付いていますが、取っ手以外の部分に手をかけて引き開けることもできます。さらに、少ない力で開け閉めができるので、小さい子どもや高齢者でも出入りしやすくなっています。
開ける幅が自由に選べる
引き戸は、必要な幅だけ開けて出入りすることができます。そのため出入りのたびに全開にする必要はありません。
開き戸のドアも常に全開にするわけではありませんが、多くの玄関開き戸にはクローザーが付いているため、中途半端な位置で扉を止めておくためにはストッパーが必要です。
引き戸なら、必要な幅だけ開けた状態で扉が止まっているので、自分のペースで出入りすることができます。特にベビーカーや車椅子を使う方にとっては、扉が閉まらないよう支えておく必要のない開き戸のほうが出入りしやすいといえます。
前後にスペースをとらない
引き戸は、壁や扉に沿ってスライドして開閉します。そのため、扉の前後にスペースがなくても、問題なく開け閉めできるというメリットがあります。
開き戸の場合、扉が開く方向に物が置かれていたりすると、開けることができません。また、扉を開いたままにしておくと、扉そのものが邪魔になってしまうこともあるでしょう。
近年では、玄関まわりに宅配ボックスを置くことも多くなっています。開き戸の玄関だと、扉がぶつからないよう宅配ボックスの位置を調整しなければなりませんが、引き戸なら玄関ドアに沿って宅配ボックスを置いても、問題なく扉の開閉ができます。
さらに引き戸の玄関ドアなら、開いた状態にしておいても扉が邪魔にならないので、換気などの際にも便利です。
扉によるケガが少ない
時折、玄関ドアに手や指を挟んでケガをしてしまった、という事故を耳にすることがあります。そのほとんどは、開き戸タイプの玄関で起きているのです。
開き戸の場合、扉そのものが重かったり、風にあおられて急激に閉まったりすることがあり、大きなケガにつながるリスクは引き戸よりも高いといってよいでしょう。
引き戸の扉は開き戸よりも軽いことが多く、風にあおられて閉まることもありません。万が一挟まれたとしても、開き戸よりも軽いケガで済むことがほとんどです。ケガのリスクを抑えたいなら、開き戸よりも引き戸のほうがおすすめです。
バリアフリーにしやすい
軽い力で開けられて、ドアストッパーの必要もない引き戸は、バリアフリー構造に向いています。引き戸のレールを床面より少し低い位置に設置して段差をなくせば、ベビーカーや車椅子を使う方でもストレスなく出入りできます。
開き戸の場合、外から砂やほこりが侵入しないようにするには、玄関内の床面を外側よりほんの少しだけ高くしておく必要があります。そのわずかな段差が、車椅子を使う方のストレスにつながったり、高齢者がつまずいて転倒するといったトラブルになったりすることもあるでしょう。
バリアフリーにしたいなら、開き戸よりも引き戸の玄関のほうが向いているといえます。
採光がよくなる
開き戸の玄関ドアの多くは扉に窓が付いていません。窓があるタイプでも、窓の面積は扉のごく一部です。
対して引き戸の玄関ドアには、ほぼ全面がガラス戸になっているタイプもあります。そういった光を通しやすい扉を選べば、暗くなりがちな玄関に外光を取り込んで、明るい雰囲気にすることができます。
玄関を引き戸にした場合のデメリットと対策
引き戸の玄関ドアにはメリットが多い反面、デメリットも少なくありません。ここでは玄関を引き戸にした場合のデメリットを解説するとともに、考えられる対策もご紹介します。
断熱性・気密性が低い
引き戸は、レールの上をスライドさせて扉を開閉する構造になっています。扉をスムーズに動かすためには、レール部分のわずかな隙間が不可欠なため、断熱性や機密性はどうしても低くなってしまいます。
さらに引き戸の場合、扉に窓が付いていることが多いです。窓部分には断熱材を入れることができないため、断熱性や気密性はさらに下がると考えてよいでしょう。
しかし、新たな建築素材の開発や技術の進歩もあって、引き戸の断熱性・気密性も向上してきています。昔ながらの引き戸の玄関を最新型の引き戸にリフォームすることで、断熱性や気密性を高められるケースも少なくありません。
防犯性が低め
引き戸と開き戸を比較すると、防犯性は引き戸のほうが低いといえるでしょう。
そもそも扉の厚みは、開き戸のほうが厚いことがほとんどです。引き戸は扉が薄いだけでなく窓があることも多く、外からの衝撃には弱くなっています。昔ながらの引き戸の場合、外から蹴っただけで、扉がレールから外れて開いてしまうといったこともあります。
さらに開き戸のほとんどにスマートキーなど防犯性の高い鍵が取り付けられます。しかし引き戸では、スマートキーが取り付けられるのは引き違い戸の一部のみです。
もちろん引き戸にも、窓部分に防犯ガラスを使ったり、衝撃を与えただけではレールから外れないようにしたりと、防犯性を高める工夫をすることは可能です。ただ開き戸に比べると防犯性は低いと考えておきましょう。
デザインが限られる
玄関ドアというと、開き戸を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。それほど開き戸の玄関ドアは普及しているので、当然のことながらデザインのバリエーションも多くあります。
近年では、洋風やデザイン性の高い引き戸の玄関ドアも出ていますが、バリエーションとしては開き戸よりも少ないようです。そのため、引き戸の玄関にしたくても、気に入ったデザインが見つからないこともあるでしょう。
ただし、昔ながらの引き戸のイメージを打破するような、デザイン性の高い引き戸も登場しています。ハウスメーカーによって取引しているドアメーカーは異なるので、できるだけ取引先が多いハウスメーカーを選べば、選べる引き戸の幅も広がるでしょう。
取り付けに広い間口が必要
引き戸を設置するには、開き戸よりも広い間口が必要です。もっとも省スペースで設置できる片引き戸でも、扉2枚分の幅は確保しなければなりません。
玄関の間口を広くとろうとすると、玄関そのものの広さが必要になります。その分、他の部屋のスペースが圧迫されたり、間取りに制限が出てきたりといったことも起こるかもしれません。
ただし、複数枚の扉が連動して動く片引き戸など、間口が狭くても設置できるタイプの引き戸もあります。「広い間口はとれないけれど、できれば玄関ドアは引き戸にしたい」といった事情があるなら、ハウスメーカーに相談してみましょう。
開き戸より価格が高め
引き戸の玄関ドアは、開き戸よりも価格帯が高めです。理由としては、扉の面積が開き戸より大きいことが多い、需要が少ないため製造にかかるコストカットがしにくい、などが考えられます。
ただし、価格が高めといってもそれほど大きな違いがあるわけではありません。複数枚が連動して動く片引き戸のように構造が複雑なタイプや、引き分け戸のように広い間口が必要なタイプを避ければ、開き戸とさほど変わらない価格で設置できます。
まとめ
玄関ドアを引き戸にするメリット・デメリットをご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。
引き戸の玄関ドアにはメリットもありますが、デメリットも少なくありません。引き戸の玄関を考えるなら、デメリットをよく理解した上で、対策をしておくことをおすすめします。
タクトホームは、さまざまな建築パーツについて幅広い取引先を持っています。玄関引き戸についても、豊富なバリエーションの中から選んでいただけます。
また、これまでに手掛けた建築実績も豊富で、玄関引き戸も数多く設置しております。お客様のご希望に合わせたアドバイスやご提案もできますので、ぜひお気軽にタクトホームまでご相談ください。