土地は家を建てるように整形された宅地もあれば、草や木の生い茂る未整備の土地もあります。特に後者の土地について、家を建てるなど何らかの目的で活用したい場合には、土地造成しなければなりません。本記事では、そうした土地造成について、工事の種類や流れ、費用などご紹介していきます。
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土地造成とは
土地造成とは、土地の用途に合わせて土地を整えることを言います。
全ての土地が整備され活用しやすい訳ではなく、また、それまでの用途と次の用途が一致しているわけではありません。
例えば、それまで田んぼだった場所に家を建設しようと思っても、そのままでは宅地としては適していません。
住宅用の土地であっても、数年空き地で樹木が生い茂り手入れもされていない土地なら、まず整備が必要になるでしょう。
そのように、土地活用の用途に合わせて土地を整備していくことを土地造成というのです。
土地造成が必要なケースには、次のようなものがあります。
- 土地が歪な形をしている
- 樹木や雑草・石など不要なものが多い
- 土地に傾斜がある・地盤が軟弱
- 周りの土地よりも低い、または高い
上記のようにそのままの活用が難しい場合に、土地造成が必要になります。
土地造成は、法律によって制限がかかる場合もあり、個人で自由にすることができません。
また、費用も高額になる場合もあるので、土地造成について理解しておくことが重要です。
造成工事に関わる法律
造成工事は原則として都道府県の許可が必要です。
また、次の2つの法律も大きく関わってくるものです。
- 都市計画法
- 宅地造成規制法
- 都市計画法
都市を計画的に発展させるための土地計画法では、土地の使用目的に応じて活用法が定められています。
土地によっては、土地の目的や形の変更、切土・盛土などの工事に規制が掛かる場合もあります。
- 宅地造成規制法
造成工事での事故を防ぐために設けられている規制である宅地造成規制法。
宅地造成規制法では、規制の対象となる造成工事として、以下のような工事が該当します。
- 高さ2m以上の崖を生じさせる切土
- 高さ1m以上の崖を生じさせる盛土
- 切土と盛土の高さが2m以上になる工事
- 造成面積が500㎡を超える場合
上記に該当する工事の場合、事前に都道府県知事の許可を得る必要があり、工事完了後にも完了検査を受ける必要があるのです。
造成工事には法律が関わっており、手続きなどの申請が必要な場合があります。
必要な手続きなどは依頼する業者に確認し、手続き漏れがないように注意しましょう。
造成工事の種類
土地造成と言っても、さまざまな種類があります。
工事の種類によって特徴が異なるので、目的に応じた工事をすることが大切です。
ここでは、造成工事にはどのような種類があるのかを確認していきましょう。
主な工事の種類には、以下の5つが挙げられます。
- 整地のための造成
- 草や木を除去するための造成
- 地盤改良のための造成
- 土留めのための造成
- 残土処分
整地のための造成
土地活用するには、土地を平らにする必要があります。
人の手が掛かっていない土地は基本的に多少なりともでこぼこがあるものです。
また、建物の解体後や樹木の伐採・伐根後の土地もそのままでは活用しにくいため、整える必要があります。
整地では、平らにするだけでなく石やコンクリートなどのガラなどの不要なモノを取り除いたうえで表面を固めるのが一般的です。
関連記事:整形地・不整形地とは?それぞれのメリット・デメリット
草や木を除去するための造成
雑草が生い茂り樹木も生えている状態では活用が難しいため、伐採や伐根が必要です。
伐採だけではまた生えてきてしまうので、根っこごと抜き取り地中に何もない状態にすることが有効でしょう。
地盤改良のための造成
地盤が軟弱では建物を建てると、地盤沈下や大雨の時などで地滑りしてしまう恐れがあります。
そのような土地の場合、地盤を改良して建物を建てられるようにすることが必要です。
- 田んぼや沼地を埋め立てた土地
- 以前川や海・谷だった土地
- 長年放置されていた土地
上記のような土地は、地盤が弱っている可能性があるでしょう。
基本的に建物を建設するまでには、地盤調査が行われ、その際に地盤が弱いと判断されると地盤改良が必要になります。
地盤改良では、表層の土にセメントを混ぜることや鋼杭を打ち込むなどして、地盤の強度を上げる工事が行われます。
土留めのための造成
土留めとは、崖や法面・盛土などが崩壊しないように「土を留める」ための工事をすることを言います。
土地に高低差がある場合など、土を盛る「盛土」や土を切り取る「切土」を行い、高さを調整します。
しかし、盛土や切土の状態のままでは調整した部分が大雨などで崩壊する危険性があるのです。
そのため、崩壊を阻止するため法面に鉄筋コンクリートやブロックなどで壁を築造する土留め工事をするのが一般的です。
残土処分
高低差がある場合、高い部分の土を取り除く「切土」が行われます。
切土の場合、取り除いた土が出てしまいますが、その土をそのまま放置していると土地活用ができません。
切土後の必要のない土は、運び出し適切に処理する必要があるのです。
処理の方法としては、宅地造成のための埋め立てや埋め戻しが一般的でしょう。
造成工事の工事方法
次に、具体的な工事の方法について見ていきましょう。
工事には主に次のような方法があります。
- 粗造成
- 砂利造成
- 除草仕上げ
- コンクリート・アスファルト塗装仕上げ
それぞれ詳しく見ていきましょう。
粗造成
一般的な造成工事で用いられるシンプルな工事が粗造成です。
解体工事後などで、不要なコンクリートや石を取り除いて撤去する工事のことを言います。
不要なものを取り除いた後は、重機を使用して土地を平らにならして押し固める作業までされるのが一般的です。
その名前の通り、粗い造成でもあるので、施工業者によっては不要なものを取り除いただけという場合もあります。
粗造成を依頼する場合は、最後の土地の状態はどうなるのかまでを確認するとよいでしょう。
砂利造成
粗造成後にさらに、細かく不要なものを取り除き、砂利を敷き詰め土地を平らにするのが砂利造成です。
ロードローラーなどの重機を使って砂利を転圧するので、砂利がばらばらになる心配はありません。
砂利を敷き詰めることで、見た目もきれいになるだけでなく、水はけがよくなることや防犯対策になるなどのメリットもあるのです。
また、必要に応じて土地の凹凸をなくすための盛土も行われる場合もあります。
防草仕上げ
雑草が生えてこないように、除草シートを敷き詰める工事が除草仕上げです。
一般的には、砂利仕上げと併せて行われるケースが多く、一緒に行うことで砂利の間から雑草が生えることを防げます。
砂利仕上げで除草を施さなければ、砂利の間から雑草が生えてしまい、反対に管理しにくくなるものです。
また、除草仕上げ前にはきちんと事前処理として除草しておかなければ、きれいに仕上がらないので注意しましょう。
コンクリート・アスファルト舗装仕上げ
コンクリートやアスファルト舗装を施す工事です。
一般的には、土地を駐車場として利用する場合や土地の中に私道を設ける場合に行われます。
舗装前には土地の高低差をなくす必要があるため、盛土工事と一緒に行われるケースが多いでしょう。
コンクリート舗装は耐久性があり、アスファルトは価格を抑えられるというメリットがあります。
下地をコンクリートにして表面をアスファルトで薄く仕上げる工法もあり、この場合はアスファルトだけよりも強度を上げつつ費用も抑えられます。
造成工事の流れ
ここでは、造成工事の流れについて見ていきましょう。
造成工事の大まかな流れは以下の通りです。
- 地鎮祭
- 機材の搬入
- 造成工事
- 転圧作業
- 機材の撤去~清掃
地鎮祭
地鎮祭とは、建物の建設前に行われる工事の安全を祈願する儀式のことを言います。
住宅や建物の建設時でよく見かける儀式ですが、土地の造成工事の前にも地鎮祭が行われます。
機材の搬入
造成工事では多くの機材が必要になるため、それらの機材を搬入します。
工事によっては大型の重機が必要になる場合があり、搬入経路や設置スペースには注意が必要です。
土地や前面道路が狭く、重機が搬入できないといった場合、追加料金が発生する可能性があるでしょう。
また、造成工事や重機の搬入では近隣住民にある程度迷惑が掛かるものです。
事前に、造成工事をする旨を説明して挨拶しておくと、不要なトラブルを避けられるでしょう。
挨拶のタイミングは工事に入る1~2週間までが目安です。
業者によっては挨拶に同行してもらえるので、事前に確認してあいさつのタイミングを調整するようにしましょう。
造成工事
機材を搬入したらいよいよ造成工事に取り掛かります。
工事の目的によって流れは異なりますが、基本的には整地で土地を平らにならし、粗造成を施したのち、必要な方法で仕上げていく流れになるでしょう。
造成工事では、まず樹木や石などの不要なものを取り除き、残土の処理や土が足りないところに土を追加するなどして平らにしていきます。
転圧作業
転圧作業とは、土地に力を加えて中の空気を押し出して密度を高める作業です。
造成工事では、平らになった土地に転圧作業を施し固めていきます。
ローラーなどの重機を利用して土地を固めることで、地盤の強化も図れます。
機材の撤去~清掃
造成工事後には、依頼主立ち合いで現場の最終確認を行います。
最終確認で問題がなければ、利用した機材を撤去し現場を清掃して工事完了となります。
造成工事は、規模や時期によって期間が異なります。
整地のみと言った小規模の工事であれは、1週間ほどで完了する場合も多いでしょう。
反対に、土地が広い場合や地盤改良から必要な場合など、工事の規模が大きいと1ヵ月以上かかる場合もあります。
また、天候にも工事の進捗が左右され梅雨時期や積雪のある時期では、工期が伸びる可能性があります。
造成工事の費用
造成工事をする場合に気になるのが費用です。
工事の内容によっては費用も高額になる場合があるので、ある程度相場を理解しておくことが大切です。
造成工事費用の相場
造成工事費用は、工事の規模や種類によっても大きく異なり業者にもよるので、一概にいくらということは難しいものです。
しかし、国税局によって相続税評価のための宅地造成費を項目・都道府県ごとに定めているので、ある程度の目安にできるでしょう。
例えば、令和4年の宅地造成費の金額は以下の通りです。
整地 | 伐採・伐根 | 地盤改良 | 土盛 | 土止 | |
東京都 | 800円/㎡ | 1,000円/㎡ | 1,600円/㎡ | 7,200円/㎡ | 76,600円/㎡ |
大阪府 | 700円/㎡ | 1,000円/㎡ | 1,600円/㎡ | 6,900円/㎡ | 74,300円/㎡ |
福岡 | 700円/㎡ | 1,000円/㎡ | 1,700円/㎡ | 7,000円/㎡ | 57,500円/㎡ |
例えば、100㎡の土地で整地をする場合、東京なら800円×100㎡=80,000円、大阪なら700円×100㎡=70,000円が目安となります。
宅地造成費は国税局のホームページで調べられるので、一度確認してみるとよいでしょう。
ただし、上記は相続税評価のための金額です。
実際の造成工事費は、工事の内容や土地の形状・道路の広さや使える重機によっても大きく異なります。
また、土壌汚染や地中埋設物がある場合などでは費用も高額になる場合もあるでしょう。
実際に工事を依頼する際には、事前に現場を見てもらい見積もりを取って検討することが大切です。
住宅ローンは使えない
土地造成の費用については、住宅を建てるための造成であっても住宅ローンは利用できません。
費用については基本的に自己資金で賄う必要があるので、注意しましょう。
ただし、金融機関によってはつなぎ融資や分割融資を受けられる可能性があります。
つなぎ融資とは、住宅ローン開始前に一時的に借入できる融資のことです。
住宅ローンの借り入れまでは利息のみの返済となり、住宅ローン借り入れ後に住宅ローンとつなぎ融資を返済していきます。
つなぎ融資なら土地造成費用を賄えますが、担保設定しない融資であるために金利が高めに設定されているので注意が必要です。
分割融資とは、融資のタイミングを分けてお金を受け取れる方法です。
住宅ローンでは基本的に住宅の完成後に融資が実行されますが、分割融資は土地購入や着工時などの支払いのタイミングで受け取れるため、それらの支払いに利用できます。
分割融資は住宅ローンを分割しているため、同じ一つの融資契約です。
そのため、住宅ローンを同じ金利で融資を受けられますが、土地と建物への抵当権設定が必要などのデメリットもあります。
また、金融機関によっては分割融資を提供していない場合もあるので、事前に相談してみましょう。
関連記事:住宅ローンで夫婦合算する際の注意点とは?連帯債務・連帯保証など仕組みと併せて解説
固定資産税に注意
土地造成後に住宅を建設する場合、造成と建築の時期によっては固定資産税が大きく異なるので注意が必要です。
固定資産税は毎年1月1日時点の不動産の所有者に対して課税されます。
また、更地で所有するよりも住宅を建設したほうが土地の固定資産税が軽減されるという特徴があるのです。
仮に、造成と建築が1月1日をまたぐ場合、建築される前の土地だけの状態に対して固定資産税が掛かり、翌年に建物を含めた固定資産税が課せられます。
そのため、最初の年では固定資産税の軽減措置が適用できずにそのままの税額で固定資産税を納めることになるのです。
ただし、自治体によっては建築後の固定資産税は減額分を適用してくれる場合もあるので、自治体の窓口などで確認するとよいでしょう。
関連記事:持ち家にかかる固定資産税・都市計画税はいくら?計算方法を確認しておこう
造成工事費用は依頼する業者によって異なる
造成工事費用は、工事の内容だけでなく業者によっても大きく異なるので注意が必要です。
できるだけ多くの業者から見積もりをとり、比較検討するようにしましょう。
金額が大きく離れている業者には注意が必要です。
その場合は、工法や材料などが異なる場合があるので、内容まで確認したうえで検討するようにしましょう。
検討する際には、見積もりの金額だけでなく業者の対応や実績・評判なども重要です。
宅地造成なら住宅会社に紹介して貰える
土地造成の目的が宅地のためである場合は、住宅会社から業者を紹介して貰える場合があります。
住宅会社の紹介であれば、宅地に適切な造成をしてもらえるので安心して任せられるでしょう。
また、宅地造成費についても住宅会社からつなぎ融資や分割融資を提供する金融機関を紹介して貰える場合もあるので、相談してみることをおすすめします。
まとめ
造成工事の種類や工法・費用などをお伝えしました。
造成工事は種類もさまざまあり、土地活用の目的によって必要な工事が異なります。
工事の内容や規模・土地の状態によって造成費も大きく異なるので、事前に見積もりを取って検討することが大切です。
宅地を造成するのであれば、住宅会社に相談して紹介して貰うことで、適切な造成工事を請けられるでしょう。
タクトホームであれば、宅地造成から建設までしっかりサポートし理想のマイホームを叶えます。