注文住宅は、間取りや設備だけでなく天井の高さも自由に決められます。でも、ベストな天井高は何センチくらいなのでしょうか? マンションと一戸建て、それぞれの平均的な高さから、天井高による住みやすさ、暮らしやすさの違いを探ってみましょう。
平均的な天井高は? マンションと一戸建てを比較
平均的な天井高といっても、マンションと一戸建てでは違いがあります。それぞれの平均値を見てみましょう。
マンションの天井高の平均は250cm
マンションの平均的な天井高は、以前は240cmといわれていました。築年数の古いマンションでは、天井高230cmという物件も珍しくありません。
しかし近年では、天井高250cmの物件も増えてきています。施工会社によっては、すでに250cmを標準として建築資材を調達しているところも少なくありません。
「オフィスビルの天井高は、10年間で10cm高くなる」とまことしやかにいわれていますが、住居として使われるマンションも決して例外ではありません。広く開放感のある部屋のほうがニーズが高い傾向にあるため、今後は250cmが主流となっていくことでしょう。
一戸建て住宅の天井高の平均は240cm
一戸建て住宅の平均的な天井高は、240cmといわれています。しかし古い住宅の中には、昔の平均値である天井高220cmの物件も珍しくありません。
2階建ての一戸建て住宅では、1階の天井高が240cmで、2階の天井高を従来の220cmとしているケースも、かなりの数に上ります。天井高が高くなるほど建築費が高くなってしまうため、1階と2階の天井高を変えることで建築費を抑えているのでしょう。
ただ輸入住宅では、天井高270cm以上の建物も見られます。また近年では天井高を複数設定して、オプションで天井高が選べるようにしたハウスメーカーも登場しています。
建築基準法で定められた天井高は210cm以上
建築基準法では、居室の天井高は210cm以上でなければいけないと定めています。建築基準法でいう居室とは、「居住、作業、娯楽などの目的のために継続的に使用する室のこと」です。
一般の住宅の場合、居間、寝室、台所が居室に当たります。それ以外の玄関、廊下、バストイレ、脱衣所、洗面所、押し入れ・クローゼット、納戸は、居室とは見なされません。
天井高が10cm違うと、受ける印象も大きく変わります。建築基準法から見ると、現在の平均天井高は基準を大きく超えてクリアしているといっていいでしょう。
天井高が高めの家のメリットとデメリット
近年では天井高の高い家が好まれているといいました。では、天井高が高いとどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
開放感がある
天井高が高ければ高いほど、天井からの圧迫感を感じにくくなり、開放感が生まれます。視界も広がるため、同じ面積でも天井高が高いほうが、部屋が広く感じられます。
天井高は、人間の精神面にも大きな影響を与えます。天井高が高いとストレスも感じにくくなるため、リラックスできることでしょう。
採光や換気がしやすい
天井高が高いほど壁の面積が大きくなります。窓もより大きなサイズのものが取り付けできるので、換気がしやすくなります。
天井を高くした分、窓の取り付け位置を高くすれば、日光も取り入れやすくなります。窓が隣家よりも高い位置にあれば、外から部屋の中が見えてしまうこともないので、視線を気にせずくつろげることでしょう。
インテリアの選択肢が増える
天井が高ければ、シャンデリアのような高さのある照明も取り付けられます。家具を購入する際にも、高さを気にする必要がありません。
大テーブルやソファといったボリュームのある家具を置いても、圧迫感を感じにくくなります。インテリアの選択肢が増えるので、内装にこだわりのある人には天井高の高い部屋がおすすめです。
特にマンションの高層階なら、窓からの眺望もいいことでしょう。眺望に合わせてインテリアのデザインを選ぶといった楽しみ方もできます。
建築やリフォームのコストがかかりがち
天井高のある家の一番のデメリットは、建築やリフォームの際に費用がかかることでしょう。天井高が高くなるほど建築材が多く必要になるので、当然のことながら建築費が上がってしまいます。
リフォームでも、大量生産されている汎用サイズの建築材が使えないことが多く、費用がかかりがちです。その分、床を底上げして小上がりや掘りごたつを造るといったリフォームはしやすくなります。
窓の大きさによっては、既製品のカーテンでは丈が足りないことも。オーダーメイドにすると、やはり購入費が高くついてしまいます。
冷暖房の効率の悪くなる
天井が高ければ、室内の空間も大きくなります。すると、冷暖房が効きにくくなることでしょう。
また暖かい空気は上に昇るので、冬場は暖房をつけても人がいる床付近まで暖めるのに時間がかかってしまいます。シーリングファンや扇風機を使って空気を攪拌したり、床暖房と併用したりといった工夫が必要です。
冷暖房の効率が悪ければ、それだけ光熱費もかかってしまいます。天井高のある家に住むなら、月々の運用コストも考えに入れておきましょう。
ただマンションの場合は、一戸建て住宅よりも密閉性が高くなっています。そのため同じ天井高でも、マンションのほうが冷暖房効率はいいといえます。
掃除や照明の交換が大変
天井が高い家は、掃除の手間がかかります。高い位置の壁や窓に手が届かない場合、掃除のたびに踏み台や脚立、高所清掃用の柄の長いモップなどを用意しなければなりません。
天井に取り付けた照明器具は、電灯が切れた場合の交換も大変です。自分での交換が難しい場合は、業者に依頼することも考えなければなりません。
冷暖房効率を考えてシーリングファンを設置していると、その上に溜まるほこりもこまめに掃除する必要があります。踏み台や脚立を使っての掃除は面倒なだけでなく、足を踏み外してケガをしてしまうことも。
そういったメンテナンスの手間がかかりがちなのも、天井高のある家の大きなデメリットでしょう。
天井高が低めの家のメリットとデメリット
天井が低い家と聞くと、マイナスイメージを抱いてしまうかもしれません。しかし、天井が低いことのメリットもあるのです。実際に、天井高が低い家のメリットとデメリットを見てみましょう。
建築やリフォームのコストを抑えられる
天井が低ければ、柱の長さも短くて済みますし、壁の面積も小さくなります。つまり、天井が高い家よりも建築コストが抑えられるということです。
天井高を高くしようとすると、標準的に流通している建築材では長さが足りず使えないことがありますが、天井高が低い場合にはその心配がありません。リフォームを行う場合も、その時点で流通している建材が使えますから、リフォームのコストも抑えられると考えていいでしょう。
光熱費を抑えられる
天井が低いと、室内の空間も小さくなります。すると、空調の効率がよくなるので、光熱費を抑えられることでしょう。
ハイパワーのエアコンでなくても快適な温度にできるので、選べるエアコンの機種が多くなるという利点もあります。エアコンそのものの価格も、ハイパワーの機種より安く入手できることでしょう。
気をつけたいのは、室内で火を燃やす石油ストーブやガスファンヒーターです。室内の空間が狭いと、空気もより早く汚れてしまうので、石油ストーブなどを使う際にはこまめな換気が必須です。
落ち着きが感じられる
広い空間にいると、人間は開放感を感じるものですが、あまり広すぎると落ち着かなくなるという心理もあります。天井が低めの家は、落ち着きが感じられる家になることでしょう。
特に、床に座って生活する和室、集中力が必要になる書斎などは、天井が高すぎると落ち着かない部屋になってしまいます。落ち着いた静かな生活がしたいという人には、天井高が低めの家がおすすめです。
デザインの選択肢が限定される
天井が低いと壁の面積が狭く、室内の空間そのものも小さくなります。すると内装のデザインも限定されてしまうので、インテリアに凝りたいという人には向いていないといえるでしょう。
同じサイズのアイテムを置いても、狭い空間では大きく見えます。天井が低い家では、置くアイテムや数によって、ごちゃごちゃした雰囲気になってしまうこともあります。
インテリアデザインにこだわりたい場合は、天井の低い家は避けたほうがいいでしょう。
家具が入らないことがある
天井が低い家では、思っていた家具が入れられないことがあります。ギリギリで設置できるはずの家具でも、鴨居の高さによっては室内に入れられないことも。
また背の高い家具の場合、設置した際に圧迫感を感じることがあります。天井の低い家には、あまり大きな家具は向いていないと考えるべきでしょう。
圧迫感や窮屈さを感じることも
どのくらいの高さで圧迫感を受けるかは、人によって違います。天井が低い家だと、閉塞感や窮屈さを感じてしまってくつろげないという人もいることでしょう。
特に背の高い人の場合、家の中を歩くだけでも上から押さえつけられているような感覚を覚えることがあります。家にいるときは常にそういう感覚を抱いていると、自然と姿勢が悪くなり、体調を崩してしまうことも。
背の高い家族がいる場合、天井の低い家は避けたほうがいいかもしれません。
場所によって適した天井高は違う
実は部屋をどんな目的に使うかによって、適した天井の高さは違います。場所によっては、天井を高くするとデメリットのほうが目立ってしまうこともあります。では、家の中の場所ごとに、理想的な天井高をご紹介しましょう。
リビングダイニングにおすすめの天井高
リビングダイニングは、家族全員が集まってくつろぐ場所です。部屋にいる人数が多くなっても窮屈さを感じないよう、天井高が高いほうがいいでしょう。
マンションで「天井高××cm」といった場合は、リビングの天井高を示すことがほとんどです。実際にそのマンションを訪れてみると、部屋によって天井高が違うことでしょう。
ただ、リビングの天井は高いほうがいいといっても、あまり高すぎると空調の効率が悪くなってしまいます。冷暖房効率も考えた場合、理想的な高さは245cmといえます。
寝室におすすめの天井高
寝室は、ベッドの上に横になって眠るための空間です。横になった際に目に入る天井が高すぎると、落ち着かない雰囲気になり、眠りにつくまでに時間がかかってしまうことがあります。
かといって、あまり天井が低いと圧迫感があり、寝苦しさを感じてしまいます。寝室の天井高は220~240cmにしておくといいでしょう。
和室におすすめの天井高
和室の場合、いすではなく床の上に座るので、天井が高すぎると落ち着かなくなってしまいます。落ち着いた雰囲気の和室にしたいなら、昔ながらの天井高220cm程度が良いとされています。
最近ではリビングの一角に和室の小上がりを造ることも多くなりました。リビングに接した小上がりの和室の場合、リビングとの天井高のバランスも大切です。
リビングと30cm程度の段差を設け、天井の高さはそろえておく、段差の部分を収納に活用するといった方法で、リビングの開放感と和室の落ち着きを両立させるのもいいでしょう。
バストイレにおすすめの天井高
風呂場は、どんなユニットバスを入れるかによって、最適な天井高は違ってきます。ユニットバスのメーカーによって、設置できるサイズが決まっているので、まずはユニットバスを選ぶことから始めましょう。
タイル張りなどで自由に天井高を設定する場合も、開放的な空間にしたいからとあまり天井を高くしてしまうと、掃除が大変になってしまいます。風呂の天井高は、最低でも210cmあれば十分と考えましょう。
トイレも、あまり高い天井はおすすめできません。そもそもが狭い空間なので、天井を高くすると壁が目の前に立ちはだかっているような錯覚を起こして、逆に圧迫感を受けてしまいます。
トイレの理想的な天井高は210~230cmといわれています。場合によっては、それより低くてもいいでしょう。
玄関におすすめの天井高
玄関の理想的な天井高は、240cmといえます。玄関ドアは高さ220cm程度の製品が多くなっているので、ドア上部の余裕を考えてもの240cmあれば十分です。
吹き抜けの玄関も人気がありますが、玄関から続く廊下や、その先のリビングの天井が低いと、錯覚により「狭い家」という印象になってしまいます。また、玄関は外気が入り込みやすい場所なので、天井を高くしすぎないほうがいいでしょう。
まとめ
マンションと一般住宅の天井高を比較しつつ、理想的な天井高を考えてみましたが、いかがだったでしょうか。天井高を考えるなら、その部屋でどんな風に過ごしたいかを考えて決めるのがおすすめです。
タクトホームは、これまでにさまざまな家をご提供してきました。お客様のご要望をできる限り叶えられるよう、天井高についても豊富なプランをご用意しています。ぜひ一度、ご相談ください。