バリアフリー住宅とは、高齢者や障害者でも快適に過ごせる家のこと。
一度建てたら何十年も住み続ける家だからこそ、年をとってからでも快適に暮らせる家にしたいものです。
そもそもバリアフリー住宅とは、どんな家を指すのでしょうか。
バリアフリー住宅という言葉の解説から、バリアフリー住宅にするためのポイントまで、じっくり見てみましょう。
Contents
バリアフリー住宅は、誰もが暮らしやすい家
バリアフリー住宅というと、「高齢者向けの段差のない家」と思っている人も多いのではないでしょうか。
しかし、それだけがバリアフリー住宅ではありません。
改めてバリアフリー住宅とはどういうものなのか見てみましょう。
バリアフリー住宅の基準
実はバリアフリー住宅には、一定の基準があります。
これは「住宅の品質確保の促進等に関する法律」、通称「バリアフリー法」に基づいて国土交通省が定めたものです。
日常生活を送るのに絶対に必要な、玄関、寝室、ダイニング、バス・トイレ、洗面所と、それらを結ぶ廊下について、細かく決められています。
たとえば廊下なら、基本的には幅が780mm以上、各部屋への入り口などは幅750mm以上となっています。
幅だけでなく、転倒防止のための手すりの設置も必要です。
もちろん、ただ手すりを設置すればいいわけではありません。
設置する場所や手すりの形状についても、一定の基準が作られています。
というと、高齢者や障害者向けの住まいのように感じるかもしれません。
しかし若者であっても、ケガや病気で足下がおぼつかなくなったり、一時的に車いすを使う状況になったりすることもあります。
バリアフリーとは、さまざまな人が生活をしていく上で「障壁=バリア」となるものを「除去=フリー」すること。
つまり小さな子どもから高齢者まで、あらゆる世代の人が快適に生活できる家がバリアフリー住宅なのです。
ユニバーサルデザインとの違い
バリアフリーとよく似た言葉に、ユニバーサルデザインがあります。
ユニバーサルデザインとは、年齢、性別、人種、障害の有無などにかかわらず、すべての人が利用しやすいように、都市や生活環境をデザインするという考え方です。
ユニバーサルデザインは、最初からあらゆる人が利用しやすいように考えて作られるもの。
バリアフリーは、すでにある障壁を取り除くもの。どちらも目的は、多くの人にとって使いやすく、安全性の高いもの作ることです。
つまり、スタート地点はまったく違いますが、結果として似たようなものが完成すると考えると分かりやすいかもしれません。
ただユニバーサルデザインには、言葉がわからなくても伝わるように考案されたピクトグラムなども含まれます。
バリアフリーよりもユニバーザルデザインのほうが、対象の範囲が広いと考えていいでしょう。
水回りをバリアフリーにする際のポイント
実際にバリアフリー住宅を造る際、気をつけておきたいポイントをご紹介します。
まずはバス、トイレ、洗面所、キッチンのバリアフリーについて見てみましょう。
浴室のバリアフリー
浴室は非常に転倒しやすい場所なので、手すりを設置するだけではなく、床を滑りにくい素材にするといった配慮が必要です。
クッション性のある柔らかい床材にしておくと、介助などで膝をついても痛くないだけでなく、万が一転倒した時の衝撃も和らぎます。
浴槽の高さは、床から40cm以下にしておくと跨ぎやすくなります。
浴槽の3分の1から半分程度を床に埋め込む「半埋め込み式」という設置方法なら、浴槽の高さを抑えることができます。
また、浴槽の縁を広くして腰掛けられるようにすると、座って出入りできるので安全性が高まります。
浴室の出入口は、車いすでも通れるよう広めにしておくといいでしょう。
出入り口の段差は、2cm以下にしておくとつまずきにくいと言われています。
段差を完全になくしてしまうこともできますが、その場合は脱衣所に水が漏れ出さないよう、排水機能を設けておく必要があります。
浴室扉は、引き戸がお薦めです。
これにより出入り口のスペースを広く確保することが可能となるため、車いすでも浴室の出入りをスムーズに行えます。
引き戸は開閉に力が必要ないのも特徴で、扉を開ける際にバランスを崩して転倒してしまうことを防げます。
浴槽扉は、内開きは避けておきたいものです。万が一洗い場で誰かが倒れた際に、扉がつっかえて救助が大変になるケースがあるからです。
引き戸ならその心配はありませんし、比較的軽い力で開閉できるという利点もありますが、扉を引き込むスペースを確保できないことも。その場合は折れ戸も考えてみましょう。
冬季は、居室と脱衣所、脱衣所と浴室の温度差によって、ヒートショックを起こしてしまうことがあります。
ヒートショックとは、急激な温度変化に身体が対応できず、めまいや失神、心筋梗塞、脳卒中などを引き起こすことです。
浴室や脱衣所にも暖房を設置して、温度差をなくすようにしましょう。
トイレ・洗面所のバリアフリー
トイレは和式よりも、立ち座りの動作が楽な洋式がお薦めです。
さらに手すりもつければ、より動作がしやすくなります。
便器の脇にある程度のスペースをとっておくと、介助が必要になった際にも困ることがありません。
トイレから寝室までの距離は、なるべく近いほうがいいでしょう。
トイレ内で倒れてしまった場合に備えて、ドアの鍵は外から開けられるようにしておくと便利です。
洗面台は、車いすでも使える高さにしておくと、小さい子供でも使いやすくなります。
ポイントは、洗面台の下に収納スペースを作らないこと。
車いすに乗った状態で洗面台を正面から利用するには、足の入るスペースが必要です。
キッチンのバリアフリー
健康な人でも、長時間キッチンに立って作業するのはつらいもの。
いっそのこと、車いすでも利用できるよう、基本的に座って作業する高さのキッチンにしてしまってもいいかもしれません。
また、キッチンユニットの前のスペースを広めにとっておくと、動きやすくなります。
調理台はIHクッキングヒーターがお薦めです。
火傷の心配もありませんし、火の消し忘れやガス漏れなどの事故が起こるリスクをなくせます。
しかもガスより熱効率がいいので、省エネにもつながります。
居住空間をバリアフリーにする際のポイント
玄関、廊下、リビングといった居住空間にも、さまざまなバリアフリーのポイントがあります。特に見落としがちな部分について、注意をしながら見ていきましょう。
玄関のバリアフリー
玄関は車いすで出入りできるよう、90cm以上の幅をとっておきましょう。土間の奥行きも90cm以上あると、靴の脱ぎ履きが楽にできます。
昔の住宅の上がり框は、通気を考えて30cm程度の高さがありました。
高さがある上がり框は、座って靴の脱ぎ履きができて便利ではありますが、車いすや高齢者では上がるのが大変です。
できればフルフラットか、段差を3cm以内に収めるようにしましょう。
さらに玄関スロープをつけておくと、出入りがしやすいだけでなく、躓く心配もありません。
ただし、車いすの利用者が自力で上り下りできることを考えると、傾斜は8%以下に押さえておく必要があります。
関連記事:おしゃれで使いやすい玄関とは? 玄関設計のポイントを紹介
廊下のバリアフリー
車いすで廊下を通るなら、90cm以上の幅が必要になります。
さらに方向転換をするなら、150cm以上ないと難しいでしょう。
そのため日常生活での動線を考えて設計しなければなりません。
また、強度が高く凹みにくい床材にしておくと、車いすで床を傷つける心配がありません。
手すりをつける場合は、壁に補強のための下地を入れる必要があります。
「今は手すりはいらないが、将来的につけるかもしれない」という場合は、建築段階で手すり用の下地を入れておくと、手すり取り付けのリフォームがしやすくなります。
リビングのバリアフリー
リビングは、家族全員が利用する団らんのスペースです。
出入り口は幅90cm以上にする、扉は引き戸にする、段差をなくすといった基本的な対策以外にも、注意しておくべき点がいくつかあります。
照明スイッチやコンセントの位置など、車いすでも利用しやすい高さにしておきましょう。
照明スイッチはワイドタイプがお薦めです。
暗闇でもガイドランプが光って位置が分かる、パイロットスイッチといった便利なアイテムもあります。
新築とリフォーム、どちらのバリアフリーを選ぶか
家を新築する場合、最初からバリアフリー住宅にしたほうがいいのか、将来的に必要になってからリフォームしたほうがいいのか、悩む人もいることでしょう。
それぞれのメリットとデメリットをよく考えて、ライフスタイルに合わせて選ぶのがいいのではないでしょうか。
新築バリアフリー住宅のメリット・デメリット
新築時からバリアフリー住宅にする最大のメリットは、将来的なリフォーム代がかからないことです。
バリアフリー住宅は、高齢者や障害者でなくても暮らしやすい家です。
思わぬ病気やケガをした時、妊娠した時、子育ての際にも、バリアフリーでよかったと感じることがあるでしょう。
新築バリアフリー住宅のデメリットは、バリアフリーではない家よりも建築費がかかることです。
バリアフリーにするには、玄関、廊下、バス・トイレ、洗面所などのスペースも確保しなければなりません。
そのため土地を購入する段階から、ある程度の広さを確保する必要があります。
関連記事:土地探しのコツを知って、家を建てるのにベストな土地を選ぶ
バリアフリーにリフォームするメリット・デメリット
バリアフリー住宅にリフォームするメリットは、段階的にバリアフリーにできることです。
必要になった時に必要な部分だけリフォームすればいいので、一挙に大きな費用をかけなくても済みます。
バリアフリー住宅のリフォーム工事には、公的な補助金などが利用できます。
介護保険制度による補助金やリフォーム減税だけでなく、各自治体によって独自の助成金制度をもっていることもあるので、事前に調べてみるといいでしょう。
デメリットとしては、思ったようなリフォームができない可能性があることでしょう。
元々のスペースが狭いため、手すりをつけると通行の邪魔になってしまうといったケースです。
場合によっては、間取りから考え直さなければいけないこともあります。
関連記事:リフォームか建て替えか?迷った時の判断ポイントや費用を解説!
まとめ
バリアフリー住宅は、決して高齢者や障害者だけのものではなく、誰にとっても住みやすい家です。
注意すべきポイントが多々ある、建築費がかかるといったデメリットはありますが、それを上回るメリットがあることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
今は必要がなくても、いずれはバリアフリー住宅にリフォームできるよう準備をしておくと、将来的にも安心でしょう。
タクトホームでは、バリアフリー住宅の新築だけでなく、将来的なリフォームを考えた住宅のご提案も数多く手がけています。
バリアフリー住宅の新築やリフォームを検討しているなら、ぜひタクトホームにご相談ください。