家族と共に大切に思い出を育んできた家が次第に老朽化してきた時、「そろそろリフォームしようか?それとも建て替え時か?」と、迷い始める方も多いのではないかと思います。
そんな時、リフォームと建て替え、どちらを選べばよいのでしょうか。
費用や工期、間取りや構造をどの程度変えるか、現在の建物の状態など、それぞれの条件によって、最適な答えは異なります。
そこでここでは、リフォームか建て替えかを迷った時の判断ポイントについて詳しく解説します。ご自分のライフスタイルに合わせた、最適な住まい作りの参考にしてみてください。
Contents
リフォームと建て替えの違いは?
リフォームとは、既存の建物を部分的に改修することです。
キッチンやバス、トイレなどの水まわりだけ新しくする、もしくは壁紙やフローリングの張り替えをするといったように、一部分だけ手を加える「部分リフォーム」。
「スケルトンリフォーム」、「リノベーション」と呼ばれる大規模なもの。
一口にリフォームといってもその範囲は幅広く、内容も異なります。
ちなみにリノベーションとは、基礎や柱などの基本的な骨組みだけ残して、建物を新築同様に生まれ変わらせることです。
一方、建て替えとは、既存の建物を取り壊して、新しい建物を基礎から作り上げることを言います。
ただし建物によっては、再建築不可物件に該当するなど、建て替えができないケースもありますので、建て替えの判断の際には注意が必要です。
完成までの日数は、それぞれの規模や施工内容によって幅はありますが、リフォームであれば1~5カ月程で完成します。
建て替えでは半年~1年近くかかるのが一般的です。
リフォームのメリット・デメリット
様々な態様があるリフォームですが、建て替えと比較した際のメリットやデメリットについて解説してみたいと思います。
リフォームのメリット
- 建て替えに比べると工期が短くすむ
- 建て替えよりも費用が安いことが一般的
- 現在の建物の一部を活かすことができる
- 長期優良住宅化リフォーム推進事業の補助金が利用できる可能性がある
リフォームは既存の建物を部分的に活かして必要な箇所に絞って改修することから、短い期間で安価に行えることが一般的で、建て替えに比べてハードルが低いことがメリットと言えます。
また、現在の建物に愛着がある場合に、建物の一部を活かすことができるのもリフォームの魅力です。
さらに条件に合えば、以下のようなリフォームに関する各種の補助金が利用できるケースもあります。
長期優良住宅化リフォーム推進事業の補助金
https://www.kenken.go.jp/chouki_r/
介護保険における住宅改修の補助金
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/toukatsu/suishin/dl/07.pdf
その他、各自治体で実施しているケースもありますので、お住まいの自治体の窓口で確認してみてください。
リフォームのデメリット
- 建物の耐震性など、構造上の不安がある時には不向き
- 間取りの大規模な変更には不向き
- など、大がかりな工事が必要なケースでは、建て替えよりも費用が高額になる可能性がある
リフォームにはメリットもありますが、構造上に不安がある場合や思い切って大きく間取りを変更する場合には、既存の建物を利用するという特徴は、むしろデメリットになってしまいます。
なお、既存不適格物件とは、建物を建てた時点では法律上問題がなかったのに、建物が完成した後に法律等が改正されたため、現在の法律によれば不適格となってしまう物件のことです。
建築している時点では法律に反していたわけではないので、既存不適格物件は違法建築とはみなされず、そのまま使用し続けることができます。
ただし、増築など大掛かりなリフォームを行う際には、既存の部分も現行の法律に適合するように補修が必要となるケースもあります。
その際に、工事の内容によっては建て替えよりも費用が高額になる可能性があるため注意が必要です。
建て替えのメリット・デメリット
次に、建て替えのメリットやデメリットには、どんなことが考えられるのでしょうか?
以下に考えていきましょう。
建て替えのメリット
- 地盤や耐震などの構造上の不安がある際にも、しっかり対策を取れる
- 前の住宅の構造に制限されず、構造や間取りの思い切った変更が可能
- 住宅ローンの借り入れ条件が有利になる傾向があり、多額のローンを低利で借りられる可能性
建て替えの場合には基礎から新たに作り直すことになるので、構造上の不安がある時には地盤や基礎から耐震対策を施すことができるので安心です。
構造や間取りも、既存の建物の制約がないため自由に設計することができます。
また、建て替えの場合には住宅ローンが利用できることが多いので、リフォームローンに比べて借り入れ額や金利が有利になる可能性もあります。
関連記事:住宅ローンの選び方はどうすればいい?5つのポイントをご紹介
建て替えのデメリット
- リフォームに比べて工期が長くなりやすい
- リフォームよりも費用が高くなることが多い
- 建て替え中の仮住まいが必要なため、費用と手間がかかる
- 印紙税・登録免許税・不動産取得税などの税金がかかる
- など、建て替えができない可能性を考慮する必要がある
既存の建物を残して部分的に改修するリフォームとは異なり、建て替えでは新たに一から作り上げるため、完成までの期間は長く、費用も高額になるのが通常です。
また、建て替え中は仮住まいに引っ越さなくてはならないので、そのための費用や手間もかかります。
新たに建物を取得することになり追加で必要になる税金もあるので、その分の予算も考えなくてはなりません。
さらに、敷地の状況によっては再建築不可物件に該当するなど、建て替えができない可能性もありますので、注意が必要です。
再建築不可物件とは…
幅4m以上の道路に2m以上接している土地でなければ、建築基準法上は建物を建てることが認められていません。
ただし、建築基準法ができる以前から建っていた建物は再建築不可物件と呼ばれ、例外としてそのまま利用し続けることが認められています。
しかし、その建物が取り壊された後は、原則としてその場所に再び建物を建てることはできないという制約があるのです。
リフォームと建て替えの費用比較
では、リフォームと建て替えの費用の相場はどれくらいなのでしょうか?
以下で比べてみたいと思います。
リフォーム費用の相場
リフォーム費用の相場は、リノベーションのような大掛かりなリフォームを行うのか、部分リフォームで済ませるのかによって、大きく異なります。
リノベーションを行うのであれば、800~1,500万円ほどが中心価格帯と考えられ、部分リフォームなら50万円くらいから行うことができます。
リフォームの内容やどのような設備を選ぶかによって費用は異なってくるので、予算に合わせてリフォーム計画を立てることが可能です。
建て替え費用の相場
建て替えにかかる費用は、建物の広さや用いる素材のグレードなど、どのようなレベルの家を建てるかによって幅がありますが、多くは2,000~4,000万円ほどの価格に収まると考えられるでしょう。
しかし内装や造りにこだわれば、それ以上の費用がかかるケースもあります。
また、解体費や廃材の処分費、仮住まいの家賃、引越し費用などもかかります。
総合的に考えて、2000万円を超える工事を行うのであれば、建て替えの方が適しているケースが多いと言えるのではないでしょうか。
リフォームか建て替えかに迷った時の判断ポイント
リフォームにも建て替えにも、メリットもデメリットもあることが理解していただけたかと思います。
では、リフォームか建て替えかで迷った時には、どのような基準で判断すればよいのでしょうか。
以下に判断のポイントを解説しますので、ぜひ参考にしていただきたいと思います。
建築基準法などの法律上は問題ないか?
- 再建築不可物件ではないか。
- 既存不適格物件ではないか。
先程も説明しましたが、既存の建物の中には、再建築不可物件もしくは既存不適格物件と呼ばれ、建て替えや大掛かりなリフォームが制限される物件がありますので、まずこれらに該当していないかの確認が必要です。
現在の住まいが再建築不可物件に該当するのであれば、建て替えることはできないのでリフォームで対応するしか選択肢がありません。
既存不適格物件に該当するのであれば、建て替えとリフォームでどちらが適しているかの判断は、ケースバイケースで異なってきます。
建て替えることで現在よりも建坪を小さくしなくてはならないケースもあれば、リフォームに際して既存部分も現行の建築基準法への適合の必要性が生じて、かえって費用が高額になるケースもあるからです。
この場合には、ケースごとに専門的な知識に基づく判断が必要となりますので、建築に関する専門家に相談してみるとよいでしょう。
地盤に問題はないか?
2000年に建築基準法が改正され、木造住宅でも地盤調査が義務付けられました。
しかし、それはこのような義務はなかったため、地盤調査が義務付けられる前に建てられた建物は地盤が弱い可能性もあります。
地盤に問題があるのであれば、地盤自体に改良工事を行い、安定した地盤の上に基礎を作り直す必要があり、リフォームではなく建て替えをしなくてはならないでしょう。
そのため、建て替えかリフォームかを検討する際には、既存の建物の地盤の安全性を確認する必要があります。
築年数はどれくらいか?
1981年に建築基準法が改正されたことから、それ以降に建てられた建物は新しい耐震基準で建てられています。
ということは、それ以前に建てられた建物は耐震性に問題がある可能性があるということになります。
築年数も40年を過ぎていますから、経年劣化も進んでいると考えられます。
そのため、1981年以前の建物であれば、基本的には建て替えを検討するべきと言えるでしょう。
また、一般に建物は、築10〜20年で水廻りや屋根、外壁などの部分的なリフォームが必要になります。
築20~30年で経年劣化が目に付きはじめ、設備も流行遅れになってきます。
造りにもよりますが、築30年を超えると本格的に老朽化しはじめる建物が多くなります。
関連記事:木造住宅の耐用年数が22年ってホント? 家の寿命とは違うの?
メンテナンスの程度による建物の状態は良好か?
建物を長持ちさせるには、定期的にメンテナンスを行うことが大切です。
屋根や外壁、水廻りなど、適切にメンテナンスが行われてきた建物と、ほとんどメンテナンスが行われてこなかった建物では、同じ築年数でも建物の状態は全く違ってきます。
これまでしっかりとメンテナンスがされてきた建物であれば、リフォームで十分対応可能なケースも多いと考えられます。
反対にメンテナンスが十分でなく、傷みが気になる建物であれば、建て替えた方がよいケースが多いと考えられるでしょう。
予算はどれだけ用意できるか?
建て替え費用の相場として、2,000~4,000万円ほどとお伝えしました。
新しく建てる建物の大きささや仕様によっては、もう少し安い価格で建てることも可能ではありますが、それでもある程度まとまった資金を用意しなくてはなりません。
それに対して、リフォームの場合にはリノベーションであっても、800~1,500万円ほどに収まるケースが多いと考えられます。そのため、予算が限られているのであればリフォームで対応する方が望ましいと言えるかもしれません。
構造や間取りをどれくらい変更したいか?
構造や間取りをどれくらい変更したいと希望しているかというのは、建て替えかリフォームかを判断する際の重要なポイントです。
リノベーションによって間取りの大幅な変更も可能ではありますが、基本的な枠組みは既存の建物のものを利用することになるので、元々ある枠組みからかけ離れた間取りにすることはできません。
構造や間取りを現在の建物とは大きく変えたいのであれば、リフォームで対応するのは難しいと言えるでしょう。
住宅ローンの利用の可否
建て替えのメリットのところでもお伝えしましたように、建て替えの場合には住宅ローンが利用できる可能性があります。
融資を申し込む個人の属性や物件の担保価値によっても差は生じますが、リフォームローンより有利な条件で借り入れが可能なのであれば、融資の観点からは建て替えの方がおすすめと言えるでしょう。
その他の判断ポイント
- 工期がかかっても問題ないか。
- 仮住まいすることは問題ないか。
- 今後何年くらい住み続ける予定か。
その他、リフォームなら1~5カ月程で済む工期が建て替えには半年~1年近くかかります。完成までの期間がある程度長くかかっても良いか、新しい建物が完成するまでの間仮住まいしなくてはならないことに不都合はないか、ということも判断ポイントとなります。
また、今後どれくらいの期間住み続ける予定であるかも考慮する必要があるでしょう。
ある程度の長期間住み続ける予定であったり、将来的に子供に残してあげたいなどの希望があるのであれば、立て替えの決断時期かもしれません。
リフォームか建て替えか?最適な住まいづくりのために後悔しない選択を!
リフォームにも建て替えにも、それぞれメリット・デメリットがありますので、一概にどちらがよいと決められるものではありません。
法律の問題や費用の問題、建物の状態、希望の間取り、将来設計など、様々な問題をトータルで考えることが求められます。
その中で、
- 設備を最新のものにしたい
- 耐震性が不安なので、安心して住みたい
- 手狭なので、広くしたい
など、「これだけは譲れない」というポイントは何なのか。
この機会に、家族でしっかり話し合ってみてはいかがでしょうか。
家族が、長い期間にわたって快適に過ごすための大切な住まい。
無理のない範囲で、最適な住まいづくりを実現したいものです。
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