住宅購入には多額の資金が必要になるため、親からの支援を受ける方も多いでしょう。しかし、親からの住宅購入資金の援助は贈与税の対象となるので注意が必要です。
そこでこの記事では、住宅購入に親からの支援を受ける際に、贈与税がかからなくて済む方法や注意点についてお伝えします。
せっかく受けた住宅購入のための資金を有効に活かして、素敵な家を建てるために、この記事がお役に立てれば幸いです。
Contents
住宅購入時に親からの支援を受ける人はどのくらい?
住宅購入時にはどのくらいの人が親からの支援を受けているのでしょうか?
不動産流通経営協会の2021年度の調査によると、住宅購入者全体の14.9%の世帯が住宅購入にあたって親からの支援を受けているという結果でした。
また、親からの贈与の平均額は、新築住宅の購入者が1036.7 万円、既存住宅の購入者が639.7 万円となっており、親からの贈与額が1,000 万円を超える世帯の割合は全体の 21.0%でした。
住宅購入の際の資金計画には、親からの支援も大切なポイントと言えそうです。
不動産流通経営協会「不動産流通業に関する消費者動向調査 2021年度」より
https://www.frk.or.jp/information/2021shouhisha_doukou.pdf
住宅購入に親からの支援を受けると贈与税がかかる?
住宅購入資金は、教育費や老後資金に並んで人生3大支出とも呼ばれる大きな支出となるものですので、親からの支援を受けられるというのは大変心強いことです。
しかし、ここで注意が必要なのは、「住宅購入に親からの支援を受けると贈与税の対象となる」ということです。
必要以上の贈与税の負担を避けるために、まず贈与税の仕組みついて以下で簡単に解説します。
贈与税の計算方法と税率
贈与税を計算するには、「1月1日から12月31日までの1年間に贈与された財産の合計額」を計算します。
その「贈与財産の合計額」から110万円の「基礎控除額」を差し引き、控除後の金額に応じた税率を掛けて、贈与税を算出します。
贈与税の負担は大きく、親から1,000万円の贈与を受けた場合の贈与税率は40%、もし4,500万円を超える贈与を受けるなら55%となり、受け取った金額の半分以上を税金として納めなくてはなりません。
そこで、住宅購入に親からの支援を受けた際には、「住宅取得等資金の贈与税の非課税措置」という特例が定められており、一定の条件を満たす場合には、贈与税の支払いが免除される仕組みが用意されています。
「住宅取得等資金の贈与税の非課税措置」ってどんな制度?
では、住宅取得に関わる贈与税が免除される「住宅取得等資金の贈与税の非課税措置」とは、どのような制度なのかについて解説しましょう。
自分が住む住宅を新築したり購入したりする際に、取得のための費用を親や祖父母などから贈与された場合、一定の条件を満たせば、一定の金額までの贈与税がかからないという制度で、令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間に贈与された場合に適用されます。(令和4年10月現在)
国税庁 ホームページ 「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4508.htm
非課税限度額
令和4年10月現在、住宅取得に関わる贈与税が非課税となる限度額は、
- 省エネ等住宅:1,000万円まで
- 省エネ等住宅以外:500万円まで
となっています。
この非課税限度額は贈与を受ける人ごとに計算され、複数の親や祖父母から贈与されても、非課税になるのは合計で1,000万円、または500万円までです。
省エネ等住宅とは、以下のどれかに適合する住宅です。
- 断熱等性能等級4以上か一次エネルギー消費量等級4以上
- 耐震等級2以上か免震建築物
- 高齢者等配慮対策等級3以上
また、過去に住宅取得等資金の贈与税の非課税措置を利用し、非課税とされた金額がある際には、非課税限度額からその金額を差し引いた額に、この特例措置を適用することができます。
【例】
過去に利用した非課税措置額:300万円
今回、省エネ等住宅を新たに取得した場合:1,000万円-300万円=700万円
今回、非課税とすることができる贈与額:700万円
関連記事:省エネ住宅とは?メリット・デメリットや各種補助金・優遇制度など解説
非課税になる条件
- 親や祖父母(直系尊属という)から子や孫(直系卑属という)への贈与であること
(妻の親達から夫が、または夫の親達から妻が、贈与されるケースは対象外だが、養子縁組をしている場合には対象となる。)
- 贈与された年の1月1日時点で、18歳以上であること
(令和4年3月31日以前に受けた贈与では、20歳以上であること。)
- 建物の床面積の条件
- 40㎡以上240㎡以下
- 2分の1以上を贈与された者が住まいとして利用すること
- 贈与された年の所得金額が2,000万円以下であること
(家屋の床面積が40㎡以上50㎡未満の場合:所得が1,000万円以下)。
- 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与された資金全額を利用して、住宅を取得すること
- 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、取得した住宅に住むか、遅滞なく住むことが確実と考えられること
「住宅取得等資金の贈与税の非課税措置」のメリットは?
住宅取得等資金の贈与税の非課税措置の直接のメリットは、限度額までの贈与税が非課税になることですが、さらに相続対策としてのメリットもあります。
ここで、相続税の仕組みを簡単に説明します。
相続税の計算の際には、法定相続人の数に応じて算定される基礎控除を相続財産から控除した残額に、相続税の税率を掛けて相続税を算定します。
例えば法定相続人が3人であれば基礎控除は以下の額になります。
3,000万円+600万円×3人=4,800万円
通常は、この4,800万円を超える相続財産に対して相続税がかかります。
しかし、住宅取得等資金の贈与の特例を利用して先に財産を譲渡しておくことで、実質的には最大5,800万円までの財産を非課税で譲り渡すことができることになります。
ですから、ある程度の財産を持っている方が、子供や孫に対してできるだけ税金を押さえて財産を譲りたいと考えているのであれば、この特例を利用することは有効な選択肢のひとつと言えるでしょう。
「住宅取得等資金の贈与税の非課税措置」を利用する際の注意点とポイント!
住宅取得等資金の贈与の特例を利用するに際して、非課税枠をさらに増やす方法や注意しなくてはならないポイントについて、以下でお伝えしていきます。
特例を利用するに当たっては、これらのポイントにも留意することが大切です。
非課税枠をさらに増やすには?
住宅取得等資金の贈与の特例を利用して節税できる金額について、先ほど「相続税の基礎控除の額と、住宅取得等資金の贈与の特例の上限額の合計」とお伝えしましたが、実際には、非課税枠をさらに増やす方法があります。
現在の日本の税法では、一年間に一人の人に贈与される額が110万円以下の部分は贈与税の対象にならないという仕組みになっています。
ですから、毎年110万円を限度に贈与していけば、税金を納めずに財産を譲り渡すことが可能です。
これを暦年贈与と呼びますが、住宅取得等資金の贈与の特例と暦年贈与を組み合わせることで、非課税枠をさらに増やすことが可能なのです。
ただし、この暦年贈与に関しては、税金逃れに利用されているとの批判があり、法改正の動きも出ているようです。
近い将来なくなる可能性もありますので、法改正の動向には注意が必要です。
贈与を受けた翌年に確定申告を!
住宅取得等資金の贈与税の非課税措置の適用を受ける場合には、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に確定申告をしなくてはなりません。
例え非課税になる条件が整っていたとしても、贈与の事実を確定申告しなければ、非課税措置は適用されないことに注意してください。
「住宅取得等資金の贈与税の非課税措置」のデメリットは?
とてもお得な制度のように感じる「住宅取得等資金の贈与の特例」にもデメリットがあります。
後悔することのないように、制度を利用する前に慎重に判断する必要があるでしょう。
小規模宅地等の特例が使えなくなる
小規模宅地等の特例とは、親の所有していた居住用の宅地等を相続する際に、330㎡までの土地の相続税の評価額を最大80%減額できるという制度です。
相続税は、相続が発生すると現金で一括納付しなくてはならないのが原則ですが、納付すべき現金が手元になければ、相続税を納めるために相続した不動産を売却しなくてはならなくなります。
相続した不動産に同居していた場合には、相続が発生することで住まいを失うことにもなりかねません。
そのような事態を防ぐために、親と同居していた相続人が居住用の宅地等を相続する場合には、相続税を大幅に減額しようというのがこの制度の目的です。
この小規模宅地の特例は、原則被相続人である親と同居していることが適用条件です。しかし、親と同居していない場合でも、以下の条件を満たせばこの特例を使って相続した宅地の相続税を減額できる可能性があります。
- 被相続人である親に配偶者や同居の親族がいないこと
- 相続開始3年以内に自分や配偶者等の所有する家に住んだことがないこと
- 相続した住居を相続発生時から相続税の申告期限まで継続して所有していること
住宅取得等資金の贈与の特例を利用して家を建てることで、この2番目の要件に該当しなくなります。
もし、親の所有する宅地等の評価額が1億円だとすると、小規模宅地等の特例が適用されれば、評価額は2千万円に減額されることになりますから、相続税は大幅に減額されることになります。
ですから、住宅取得等資金の贈与の特例を利用する際には、
- 小規模宅地等の特例が適用対象であるのか
- 適用対象であるなら、「住宅取得等資金の贈与の特例」とどちらを利用した方が有利なのか
を検討した方がよいでしょう。
更に詳しく知りたい方は、国税庁のホームページ「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」を参照してください。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm
相続時精算課税制度と併用する際に注意が必要になる
相続時精算課税制度とは、2,500万円以内の贈与であれば、贈与を受けた際に贈与税を納めなくてもよい代わりに、贈与をした者が亡くなり相続が発生した時に、贈与された財産と相続財産とを合計して相続税を算定するという制度です。
通常は110万円を超えた贈与額には贈与税がかかるのが原則ですが、相続時精算課税制度を利用すると、相続時に相続税の対象とはなりますが、贈与を受けた時点では2,500万円以内の部分には贈与税を支払わなくても済みます。
贈与税は相続税よりも税率が高いこと、基礎控除の範囲内であれば相続税は発生しないことから、相続時精算課税制度を利用するメリットがあります。
ただし、相続時精算課税制度は「小規模宅地等の特例」や「暦年贈与」との併用はできません。
この相続時精算課税制度と住宅取得等資金の非課税制度との併用は可能ですので、両者を併用すれば、最大で3,500万円までは住宅の取得時に贈与税を非課税とすることができます。
しかし先ほども説明したように、相続時精算課税制度は暦年贈与との併用ができないため、
相続時精算課税制度と住宅取得等資金の非課税制度との併用を選択した場合には、それ以降は暦年贈与ができなくなるので注意が必要です。
住宅購入に親からの支援を受けるなら、特例を上手に利用して、節税対策を!
この記事では、親からの支援を受けて住宅を購入する際に、できるだけ贈与税がかからない方法やその際の注意点についてお伝えしました。
住宅購入にあたって、親等の直系尊属から援助を受けた受贈者が、住宅取得等資金の贈与の特例を利用する割合は、受贈者全体の約7割となっています。
住宅購入に親からの支援を受けるのであれば、住宅取得等資金の贈与の特例は大変嬉しい制度ではあります。
ただしすでにお伝えしたように、以下のようなデメリットもありますので、ご両親の財産の状況などを加味して、総合的に判断する必要があるでしょう。
- 住宅取得等資金の贈与の特例を利用すると、小規模宅地等の特例が使えなくなる
- 相続時精算課税制度と住宅取得等資金の贈与の特例との併用を選択した場合には、それ以降は暦年贈与ができなくなる
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