地震大国として知られる日本。そのため誰もが「新しく家を建てるなら地震に強い家を建てたい」と思うことでしょう。では、どんな家が地震に強いといえるのでしょうか?
耐震性の基準や、さまざまな工法、地震に強い家を建てるために知っておきたいこと、必要なことや、注意すべき点をご紹介していきます。
Contents
どんな形の家が地震に強い?
地震に強い家とはつまり、「地震による建物への負担が少ない家」といえます。どんな家なら、地震による負担が少なくなるのでしょうか。まずは家の形から見てみましょう。
2階建てより平屋のほうが地震に強い
一般的に、3階建てより2階建てのほうが、2階建てより平屋のほうが、地震に強いといわれています。その理由は、建物の重心の低さです。
柱、壁、窓といった建物のパーツの中で、屋根はかなり重量のある部分です。2階建て、3階建ては、平屋よりも屋根が高いところにあるので、どうしても重心が高くなってしまいます。
人間でも、踏ん張って力を入れる時には腰を落とします。重心が低いほうが、より安定するのです。
耐震性は、間取りによっても違ってくる
ただし平屋なら地震に強いというわけではありません。中には、2階建てよりも地震に弱い平屋もあります。そのポイントのひとつは間取りです。
広々としたリビングダイニングは魅力的ですが、その部分には当然のことながら柱がありません。家の骨組みである柱が少ないと、それだけ家の構造が弱くなってしまうのです。同じように、1部屋を大きくして部屋数を減らすのも、構造的にはあまりおすすめできません。
また家は柱だけでなく、壁によっても支えられています。そのため窓を大きく取った家や、窓の数が多すぎる家も、地震に弱いといえるでしょう。
屋根は軽いほうが地震に強い
先ほど、屋根の高さが低いほうが地震に強いといいました。加えて、屋根そのものの重さが軽ければ、さらに地震に強くなります。
屋根材には、金属屋根、スレート屋根、瓦屋根などがありますが、この中で一番軽いのは金属屋根です。たとえば30坪の家なら、金属屋根が約600キロ、スレート屋根が約2000キロ、瓦屋根はなんと約6000キロにもなります。
これだけの重量があると、地震が来た際の建物への影響も大きくなります。地震に強い家を作るなら、屋根はできる限り軽くしたほうがいいことを覚えておきましょう。
さまざまな工法の中で、一番地震に強い構造は?
建物の構造は、「鉄骨造」「鉄筋コンクリート造」「木造・SE構法」の、大きく3つに分類されます。それぞれどんな特徴があって、地震に対する強度はどのくらいなのでしょうか。詳しく見てみましょう。
鉄骨構造
鉄骨構造は、骨組みが鉄や鋼で作られている建物を指します。鉄骨構造の中でも、鉄骨の厚みが6ミリ未満の軽量鉄骨構造と、鉄骨の厚みが6ミリ以上の重量鉄骨構造があります。
重量鉄骨は厚みがある分、軽量鉄骨より強度が高くなっています。ただし重量があるため、重量鉄骨構造の建物を作るには地盤改良が欠かせません。一般の住宅で「鉄骨造り」といったら、ほぼ軽量鉄骨だと思って間違いないでしょう。
軽量鉄骨で重量鉄骨と同じ強度を出そうとすると、柱の数を増やさなければいけません。その結果、重量鉄骨よりも間取りの自由度が低くなるというデメリットもあります。
鉄骨構造は、地震の揺れに対して金属の粘りで対抗します。強度もあるため、昔の木造住宅よりも地震に強く、地震による倒壊もほぼないといわれています。
鉄筋コンクリート構造
鉄筋コンクリート構造の建物は、鉄でできた編み目のような筋の上に、コンクリートを流し込んで作られています。引っ張る力に強い鉄筋と、圧力に強いコンクリートを組み合わせることで、強度を出しています。
地震が起きても倒壊する危険性が少ないので、マンションや商業施設にも多く使われています。デメリットは、建物の重量が非常に重くなるため、地盤改良や基礎工事の費用がかかることでしょう。
また鉄筋コンクリート構造の建物は、鉄骨や木造のようなしなりがないので、地震の揺れを非常に伝えやすくなっています。いうなれば、足下が不安定な時に、全身に力を入れて踏ん張っている状態に近いでしょう。
建物の1階が駐車場になっているなど、壁の少ない部分があると、地震の揺れに耐えきれず倒壊してしまうことも。鉄筋コンクリート構造だからといって、過信は禁物です。
木造・SE構法
一口に木造住宅といっても、「木造軸組工法」「ツーバイフォー(2×4)工法」、「木造ラーメン工法(SE構法)」の3種類の工法があります。
「木造軸組工法」は、いわゆる昔ながらの工法です。柱を建てて梁を渡して、壁部分を筋交いで補強をすることで強度を出しています。
「ツーバイフォー工法」は、建物を柱で支えるのではなく、床や壁などの「面」で支える構造です。建築基準法では「枠組壁工法」と呼ばれています。
「木造ラーメン工法(SE構法)」は、近年になって注目されている工法です。柱と梁で額縁のような構造体を作ることで、地震への強度を高めています。
ラーメン工法は、元は鉄骨構造や鉄骨鉄筋コンクリート構造で始まりました。額縁をドイツ語で「ラーメン」ということから、ラーメン工法と呼ばれています。
耐震性に不安がある従来の木造軸組工法、間取りの自由度が低いツーバイフォー工法に比べると、木造ラーメン工法は耐震性も高く、間取りの自由度も高いという良いとこ取りの工法です。木造ラーメン工法の中でも、精度の高い木材とSE金物を使って耐震性を高めているのが「SE構法」です。
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地震に強い家にする方法
地震の揺れから家を守るための構造としては、「耐震構造」「制震構造」「免震構造」の3つが考えられます。どれも似たような言葉だと感じるかもしれませんが、3つには明確な違いがあります。
耐震構造とは、頑丈な柱や壁で強度を高めて、地震の揺れに耐えられるような建物にすることです。耐震構造の建物は地震のエネルギーが直接建物に伝わるため、倒壊はしないまでもひびや亀裂が入ってしまうことがあります。
建物が揺れに耐えられても、家具などが倒れて家の中がめちゃめちゃになってしまうこともあります。実際に東日本大震災では、家具の下敷きになってケガをしたひとも少なくありませんでした。
制震構造とは、地震の揺れを吸収して受け流し、建物を守る技術です。建物の床や壁に組み込まれている制震装置で、地震の揺れに合わせて建物が変形することで、地震のエネルギーを受け流すことができるのです。
こんにゃくをイメージすると、分かりやすいでしょうか。こんにゃくを強く揺らしてもぶるぶる震えるだけで、なかなか崩れたり割れたりしません。同じように制震構造の建物は、強い地震でも建物へのダメージが少なくなっています。
免震構造は、建物と地盤の間に積層ゴムなどを挟むことで、地震の揺れが建物に伝わりにくくする技術をいいます。大きな地震でも建物自体はそれほど揺れないため、家具などの室内の被害も少なくできます。
免震構造のデメリットは、耐震構造や制震構造に比べてコストがかかることです。定期的なメンテナンスも必要なため、個人住宅ではほとんど取り入れられていません。
現在のところ、地震に強い個人住宅のほとんどが耐震構造になっています。しかし制震構造の技術も日に日に進歩して、建築にかかる費用も下がっているので、制震構造の個人住宅も今後はどんどん増えていくことでしょう。
地震に強い家の判断基準とは?
地震に強い家かどうかを見分けるには、何か基準があるのでしょうか。
建築基準法の耐震基準
新たに建物を作る場合、建築基準法に定められた耐震基準を満たしていなければなりません。その内容は「震度5強程度の中規模地震では軽微な損傷、震度6強から7に達する程度の大規模地震でも倒壊は免れる」となっています。
建築基準法は2000年に改訂され、新たな耐震基準が加わりました。「地盤が重さを支える力に応じて、基礎を設計する」「柱の引き抜けに対応するため、基礎と柱の接合部への金具の取り付け」「耐力壁をバランスよく配置して、より頑丈な家にする」の3点です。
建築基準法の耐震基準は、大きな地震でも逃げるための時間が稼げることを想定して定められました。ですから建築基準法の耐震基準は、あくまで最低レベルと考えておきましょう。
3つのランクがある耐震等級とは?
地震に強い家かどうかは、さまざまなデータを比較検討しなければ判断することができませんでした。住宅の耐震性能を、もっと分かりやすく伝えられないかと考え出されたのが、「耐震等級」です。
2000年に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」によって定められたもので、等級1~3までの3段階に分かれています。耐震等級1は、建築基準法の最低基準をクリアしている住宅に対して認定されます。
耐震等級2は、耐震等級1の1.25倍の耐震強度が必要です。75~100年の耐用年数がある「長期優良住宅」に認定されるには、耐震等級2以上でなければなりません。
耐震等級3の住宅は、耐震等級1の1.5倍の耐震強度を持っていなければなりません。震度7の地震が立て続けに2回起こった熊本地震では、耐震等級2の家でも倒壊する例が多かった中、耐震等級3の家は被害が少なかったことが確認されています。
ただ、耐震等級3の家も絶対ではありません。点検やメンテナンスを怠れば、耐震強度は次第に落ちていってしまいます。どのくらい地震に強い家を建てるのかだけでなく、新築当時の耐震等級をなるべく長く保つことも重要です。
家の耐震性だけでなく、地盤の強さもチェック
どれほど頑丈な家を建てたとしても、家の建っている土地が軟弱では意味がありません。地震に強い家を建てたいなら、家の土台となる土地選びも非常に重要です。
地盤がしっかりしているかどうかは、地盤調査をすればすぐに分かります。現在では、家を新築する際には地盤調査を行う義務があります。
ただ地盤調査は、間取りや建材など家の細かい仕様によって調査項目が変わってきます。そのため家を建てる直前に行うのが一般的です。
もちろん、土地を購入する前に検討材料として、地盤調査をすることも可能です。一般的に行われているスウェーデン式サウンディング試験なら、調査費用は5万円程度。土地を掘り返して行うボーリング調査は、25~30万円かかります。
地盤調査を行った結果、軟弱地盤であることが判明した場合、地盤改良工事が必要になります。地盤改良工事には「表層改良工事」「柱状改良工法」「鋼管杭工法」などがあります。
「表層改良工法」とは、深さ2メートル程度まで掘り返して、土に固化剤を混ぜる方法。「柱状改良工法」は土中にコンクリート製の柱を埋め込んで、地盤を強固にする方法です。「鋼管杭工法」は、土中に鋼管の柱を埋め込みます。
地盤の強度がどのくらいかによって、適切な工事方法は変わってきます。詳しくは地盤調査を依頼した会社や、家の建築をお願いした建築会社に聞いてみましょう。
さらに土地の地盤だけでなく、周辺地域の地盤の強度も調べておきたいもの。自治体のホームページにいけばハザードマップが公開されているので、チェックしてみましょう。
地震に強い家であり続けるために、注意すべきこと
地震に強い家を建てたら、それで終わりと思ってはいけません。
家の耐震強度は、時間が経つごとにどんどん下がっていきます。一体どうしたら、新築当時の耐震強度を保つことができるのでしょうか。
耐震性を保つには、メンテナンスが重要
家は、柱や壁によって支えられています。柱の耐震強度が下がってしまう最大の原因は、壁体内結露です。
冬の寒い日、室内で暖房を使っていてふと気がつくと、窓にびっしりと結露ができていることがあります。湿気を多く含んだ室内の空気が、外気で冷やされることで結露するのです。同じことが、壁の内で起こる現象を「壁体内結露」といいます。
壁体内結露が起こると、木材を腐らせる菌やカビの温床になることも。柱が腐れば、当然のことながら耐震性能も下がってしまいます。
まず家の建築時にしっかり断熱することで、壁体内結露は防げます。さらに念には念を入れて、1年に1度は建築会社や専門業者に依頼して、点検してもらうといいでしょう。
木造住宅の耐震強度を下げる原因のひとつには、シロアリ被害もあります。柱がシロアリに食われてボロボロになっていては、耐震性能が発揮できるはずもありません。
シロアリの被害を避けるには、およそ10年ごとに防虫加工を行うのがいいでしょう。防虫加工にかかる料金は、家の広さによって違ってきますが、相場としては15~20万円と考えておきましょう。
いざという時に耐震性能を発揮するには、常日頃からのメンテナンスが大事です。そのための費用も、あらかじめ積み立てておくようにしましょう。
関連記事:高気密・高断熱住宅とは? メリットとデメリットを徹底解説
まとめ
地震に強い家を造るなら、土地選び、建築方法、間取り、メンテナンスなど、さまざまな方面から気を配る必要があることがお分かりいただけたと思います。単純に「こうすれば大丈夫」といった単純なものではありません。
地震に強い家を建てたいとお考えなら、まずはタクトホームにご相談ください。タクトホームは耐震等級3の家の建築実績が豊富なだけではなく、土地選びから建築後の定期メンテナンスまで、一貫してお客様を支える専門家が揃っています。大きな地震が来ても安心できる家を、一緒に造っていきましょう。