年収300万円で家を買うのは無謀と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、本記事でご紹介するいくつかのポイントを押さえれば、年収300万円で家を購入することは十分に可能です。
本記事では、年収300万円で家を買いたいと考えている方に向けて、住宅ローンを組む際のポイントや注意点など解説します。
Contents
年収300万円で家は買える?
人生の中でもっとも高額な買い物と言われる家。
家を購入するには住宅ローンを組んだり頭金を用意したりする必要があり、ある程度の年収も関係してきます。
高収入の方なら問題なく家の購入に踏み切れるでしょうが、収入があまり高くない場合購入できるか不安な方もいるでしょう。
国税庁の令和3年分民間給与実態統計によると、給与所得者の平均給与は年間443万円という結果があります。
では、平均よりも少ない年収300万円の場合、家は購入できるのでしょうか?
年収300万円でも家を購入できる
結論から言えば、年収300万円であっても家の購入は可能です。
住宅金融支援機構のフラット35利用者調査によると、フラット35利用者の世帯年収で最も多い層は400万円以上600万円以下の40.1%となります。
しかし、年収400万円未満の利用者も22.2%と少なくありません。
年収300万円で住宅ローンを組んで家を購入した人も少なくないことから、条件次第では十分家を購入できるといえるでしょう。
年収300万円の方が住宅ローンを組む際のポイント
年収300万円でも住宅ローンを組んで家を購入することは可能です。
しかし、年収300万円の場合、審査が厳しく希望する額を借りられない可能性も高くなるため注意しなければなりません。
年収300万円で住宅ローンを組む際に、押さえておきたいポイントとして次の4つが挙げられます。
- 借入可能額を把握しよう
- 家の購入費用総額を把握しよう
- 住宅ローン控除を知っておこう
- 自己資金を用意しよう
それぞれ詳しく見ていきましょう。
借入可能額を把握しよう
住宅ローンは希望する額を借りられるわけではなく、金融機関の審査によって借りられる額が決まります。
借入可能額を把握せずに家作りを進めてしまうと、資金が足りず、一からプランを作り直さなければいけなくなる可能性があるでしょう。
しかし、借入可能額が事前に分かっていることで、予算が明確になり家作りもスムーズに進みます。
借入可能額を算出する際に、重要なポイントとなるのが次の2つです。
- 審査金利
- 返済比率
審査金利とは、審査の際に利用する金利のことを言います。
審査に利用する金利は、大きく「審査金利」と「適用金利」の2つに分かれますが、どちらの金利を利用しているかを公表している金融機関はあまりないものです。
一般的に、審査金利は適用金利よりも1~3%程高いと言われており、審査金利で審査されると借入可能額が小さくなる可能性があります。
返済比率とは、年収に対する年間返済額の割合です。
仮に、年収300万円で年間の返済額が80万円なら返済比率は約27%となります。
金融機関の多くは返済比率を30~35%以下に設定しているので、年収300万円の場合は年間の返済額を105万円以下に抑える必要があるのです。
ただし、返済比率ギリギリでの借入は、返済の負担が大きくなりすぎるため現実的ではありません。
住宅ローンの理想の返済比率は20~25%以下と言われているので意識するとよいでしょう。
上記の2つの指標をもとに借入可能額を算出できます。
借入可能額の計算方法は以下の通りです。
借入可能額=住宅ローンの年間返済可能額(円)÷12カ月÷審査金利での100万円あたりの月返済額(円)×100万円
仮に、年収300万円/審査金利2.0%(借入期間35年)/返済比率30%で計算してみましょう。
年収300万円の場合、返済比率30%なら年間の返済額は年90万円です。
また、2.0%で100万円を35年借入れた場合の毎月の返済額は、3,312円となります。
よって、借入可能額は
90万円÷12ヵ月÷3,312円×100万円=約2,264万円
となるのです。
家の購入費用総額を把握しよう
家を買う場合、必要になるのは家を建設するための費用だけではありません。
住宅ローンの手数料や登記の費用など、家以外にもさまざまな費用が必要になるのです。
一般的には、建設費用以外に次のような費用がかかります。
項目 | 費用 |
住宅ローンを組むための費用 | ・金融機関への事務手数料 ・住宅ローン契約書への印紙代 ・保証料 ・抵当権設定費用と司法書士費用 |
家を所有するための費用 | ・家の所有権を登記する費用と司法書士費用 ・住宅会社との契約書への印紙代 ・不動産取得税 ・建設翌年以降は固定資産税・都市計画税 |
土地の購入もする場合 | ・土地購入費用 ・不動産会社への仲介手数料 ・登記の費用と司法書士費用 ・不動産取得税 |
これらの費用は諸費用と呼ばれており、家の購入額の1~3割程が目安となります。
仮に、2,000万円の家を購入する場合は、諸費用で200~600万円が必要になるのです。
諸費用は基本的に自己資金で用意する必要があるため、費用がどれくらい必要かを把握しておく必要があります。
諸費用を自己資金で用意するのが難しい場合は、諸費用込みで住宅ローンを組める金融機関も多くあるので相談してみるとよいでしょう。
住宅ローン控除を知っておこう
住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して家を購入した場合、ローン残高に応じて一定額を所得税・住民税から控除できる税制優遇措置のことを言います。
家の性能や居住する年度によって控除できる額は異なり、新築の場合は次のとおりです。
住宅の環境性能など | 借入限度額 | 控除期間 | |
令和4・5年入居 | 令和6・7年入居 | ||
長期優良住宅・低炭素住宅 | 5,000万円 | 4,500万円 | 13年間 |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 3,500万円 | |
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 3,000万円 | |
その他住宅 | 3,000万円 | 0円 |
上記の限度額内で、年末時点のローン残高×0.7%を控除できるのです。
例えば、年末時点のローン残高が2,000万円なら14万円を控除でき、所得税の還付が期待できます。
ただし、住宅ローン控除を適用するにはさまざまな条件をクリアする必要があるのです。
住宅ローン控除の主な要件
- 床面積が50㎡以上
- 住宅ローンの借入期間が10年以上
住宅ローン控除は適用できれば大きな節税につながるため、適用できるかもチェックしながら家の計画を立てるようにしましょう。
自己資金を用意しよう
家の購入は基本的に「自己資金(頭金)+住宅ローン」で賄います。
自己資金を多く用意できれば、借入額を抑えられるため住宅ローンを組みやすくなるでしょう。
反対に、自己資金が少なく借入額が多くなると審査が厳しくなるだけでなく、金利に影響する場合もあります。
例えば、フラット35の場合、融資比率(家の購入額に対する融資の割合)が9割を超えると金利が高くなるという特徴があるのです。
特に、年収300万円の場合借入できる額が大きくないため、家の選択肢が狭まります。
自己資金をある程度用意することで、希望する家づくりができるようになるでしょう。
とはいえ、自己資金をどれくらい用意すればいいのか分からないという人も多いでしょう。
以下では自己資金について詳しく解説していきます。
自己資金はどのくらいあると良い?
家を購入する際には、自己資金をある程度用意する必要があります。
しかし、実際にどれくらい用意すればいいのでしょうか?
「自己資金1割~2割必要」は本当?
フラット35の利用者調査によると、2021年度の資金調達内訳平均は以下の通りです。
- 手持金:16.7%
- 融資金:80.5%
つまり、平均で購入額の8割をローン・2割を自己資金などで賄っているということになります。
ただし、自己資金の割合は家の条件や年収などによって適切な額は人それぞれ異なります。
「自己資金は1割~2割程必要」という話を聞いたことがある人もいるでしょう。
これは一昔前の常識と言え、住宅ローン金利の低い現在ではあまりあてはまらないものです。
自己資金を多く入れることにもデメリットがあり、自己資金が少ないことにもメリットがあるものです。
自分の資金状況やライフプランなどを踏まえて適切な自己資金額を決めることが大切です。
お金を貯めるのに必要な期間に注意
自己資金を多く入れれば、借入額を減らせるなどのメリットがありますが、自己資金を貯えるための期間が必要になってくるものです。
仮に、自己資金を300万円用意しようと思えば、毎月5万円ずつ貯めても5年かかります。
その5年間、気に入った家を見つけても家の購入に踏み切れなくなってしまうのです。
さらに、5年間は賃貸物件に暮らしている場合家賃が発生します。
家賃は居住費であってもあくまで大家さん(他人)に支払う費用です。
一方、住宅ローンなら将来自分の資産になる家のための支出であり自分のためのお金と言えます。
今は低金利と言われている住宅ローンの金利が5年後も低いとは限りません。
実際に、2022年12月に日銀が利上げを公表して以来、固定金利の住宅ローンは上昇傾向にあるのです。
お金を貯める期間が長くなりそうな場合、その期間に支払う家賃や金利動向などもしっかりと考慮しておく必要があるでしょう。
可能であれば親族からの援助も検討しよう
自己資金が少なくても家を購入することはできますが、家の選択肢は狭まります。
また、審査が厳しくなる恐れもあるでしょう。
ただし、自己資金を用意することばかりにこだわり手持ちの預貯金を全額使ってしまうと、突発的な支出や収入が減少した場合に対応できなくなってしまいます。
ある程度、手元にお金を残しつつ自己資金を用意することが大切です。
自己資金が用意できない場合、両親や親戚に思い切って援助をお願いするというのも一つの手と言えます。
援助をプラスすることで、年収300万円であっても返済の負担を大きくせずに希望の家を叶えられる可能性を高くできるでしょう。
住宅ローンは早く組んだほうがいい?
自己資金が貯まるのを待たずに住宅ローンを早く組むかは、メリット・デメリットを比較して慎重に判断することが大切です。
ここでは、住宅ローンを早く組むメリット・デメリットを見ていきましょう。
まずは、一覧で確認します。
メリット | デメリット |
・早く完済できる ・良い物件を逃さない ・今後金利が高くなる可能性がある ・住宅ローン控除の額を大きくとれる | ・家が小さくなる可能性がある ・返済の負担が大きくなる ・審査が厳しくなる |
関連記事:住宅ローンの選び方はどうすればいい?5つのポイントをご紹介
メリット
メリットとしては、次の4つが挙げられます。
- 早く完済できる
- 良い物件を逃さない
- 今後金利が高くなる可能性がある
- 住宅ローン控除の額を大きくとれる
早く完済できる
住宅ローンは30年や35年と長期に渡り返済が続きます。
仮に、35歳で35年の住宅ローンを組めば完済が70歳になってしまうのです。
65歳で定年退職した場合、残り5年は年金や貯蓄で返済しなければならなくなる可能性もあるでしょう。
定年後の収入が少ない時期に住宅ローンの返済が残っていると、生活を大きく圧迫しかねません。
反対に25歳でローンを組んだ場合、35年ローンでも完済は60歳と定年前に完済できる可能性が高まります。
住宅ローンを早い段階で組むことで、完済時期を早められるのは老後の生活の大きなメリットとなるでしょう。
良い物件を逃さない
自己資金が貯まるまで待っていると、その期間に良い物件を見つけても購入できません。
良い物件や土地は、一度逃すと同じものに巡り合うことはほぼできないものです。
早めにローンを組めるようにしておくと、良い物件と出会ったらそのまま購入に進められるようになります。
今後金利が高くなる可能性がある
2022年12月に日銀が利上げを公表したことから、今後住宅ローンの金利も上昇する可能性が高まってきています。
実際に、全期間固定金利型の住宅ローンは金利が高くなっている傾向があります。
変動金利は現時点では大きな影響を受けておりませんが、今後どうなるかは予測が付かないものです。
住宅ローンを組まない間に金利が上がってしまうと、返済総額も増加してしまうものです。
仮に、2,000万円・35年でローンを組む場合を見てみましょう。
金利 | 1.5% | 2.0% | 2.5% |
毎月の返済額 | 61,236円 | 66,252円 | 71,499円 |
返済総額 | 25,719,120円 | 27,825,840円 | 30,029,580円 |
金利が1%上がると、返済総額が500万円程度変わってきます。
仮に、頭金として500万円を貯まるまで待っている間に金利が1%上昇すると、せっかく貯めた頭金の意味があまりなくなってしまうと言えます。
金利が短期間で大きく上昇する可能性は低いですが、上昇する可能性はゼロではありません。
いずれ住宅ローンを組むのであれば、金利が低いうちに組むのも一つの手と言えるでしょう。
住宅ローン控除の額を大きくとれる
頭金を抑えて借入額を大きくする場合、住宅ローン控除の額を大きくとれるというメリットにつながります。
住宅ローン控除額は、年末時点の住宅ローン残高の0.7%です。
仮に、500万円住宅ローン残高に差があれば、500万円×0.7%=3.5万円の差になります。
住宅ローン控除は令和7年入居分までしか適用が公表されていません。
今後も適用が延長される可能性も高いですが、適用が確実なうちにローンを組んでおくのも良いでしょう。
関連記事:住宅ローンで夫婦合算する際の注意点とは?連帯債務・連帯保証など仕組みと併せて解説
デメリット
デメリットとしては次の3つが挙げられます。
- 家が小さくなる可能性がある
- 返済の負担が大きくなる
- 審査が厳しくなる
家が小さくなる可能性がある
年収が低く頭金も少ない場合、借入できる額が小さくなります。
希望する家の額に届かない場合もあり、予算内で家を購入しようとすれば家が小さくなるなどかなり妥協が必要になるものです。
小さい家になる場合、将来的に住み替えも視野に入れて計画を立てておくとよいでしょう。
返済の負担が大きくなる
借入額が大きくなれば、毎月の返済額・返済総額ともに大きくなります。
年収300万円でローンの返済が大きいと、思うように貯蓄ができずに子供の教育費や突発てきな支出に影響が出てくる恐れがあります。
また、自己資金が少ない場合は金利が高くなる可能性がある点にも注意が必要です。
まず、今の年収や資産状況でどれくらいの返済額まで大丈夫なのか、将来のライフプランまで考慮して把握しておくようにしましょう。
審査が厳しくなる
年収が低く、借入額が大きいと審査が厳しくなる可能性がある点にも注意が必要です。
借入額によっては審査に落ちる場合や通っても希望額が借入できない可能性が高いでしょう。
年収が低く希望の借入額では審査が厳しい場合、夫婦の収入を合算する収入合算やペアローンを検討するのも良いでしょう。
年収300万円の方が住宅ローンを組む際の注意点
年収300万円で住宅ローンを組む場合、年収の低さから返済額が生活の大きな負担になりやすいものです。
住宅ローンを組む際には、次の点に注意して借入額などを慎重に検討するようにしましょう。
- 購入後の生活費を計算しておこう
- 住宅の維持費を考慮しておこう
購入後の生活費を計算しておこう
住宅ローンを組むと、毎月返済が発生します。
返済を含めて毎月の生活費がどれくらいになるかは事前にしっかりシミュレーションしておかなければ、生活が苦しくなる恐れがあるでしょう。
また、住宅ローンを組んだ当初は良くても、出産・子供の進学で教育費が思ったよりも高額になる可能性もあります。
年収が増える見込みがあればよいでしょうが、増えない状況が続けばローンの返済額苦しくなり家を手放す必要も出てくるかもしれません。
短期的・長期的な返済プランや生活費のシミュレーションをしたうえで住宅ローンを検討することが大切です。
住宅の維持費を考慮しておこう
家は購入したらお終いではありません。
購入後にもローン返済額以外に家にかかる費用は発生します。
- 固定資産税・都市計画税
- 修繕費やメンテナンス費
家を購入すれば、毎年固定資産税・都市計画税が課せられ、家によっては10万円を超えるケースも珍しくありません。
また、風水害や経年劣化などで修繕費も掛かってきます。
外壁や屋根の塗り替えも必要になり、100万円以上掛かる場合もあるでしょう。
家を購入すると、その後も家にかかる費用が毎年発生することを考慮して資金計画を立てることが大切です。
関連記事:持ち家を維持するために、どんな費用がかかる? 維持費の内訳や節約ポイント
まとめ
年収300万円の方が家を買う際のポイントや注意点など解説しました。
本記事でご紹介したような、ポイントを押さえれば、年収300万円の方が家を購入するのは十分に可能です。
ただし、購入後の生活費や住宅の維持費など、注意点についても押さえておきましょう。