注文住宅は打ち合わせから建物完成までが数カ月に及ぶため、事前に流れを押さえておくことが大切です。
本記事では、土地探しやプラン作成、ローン審査など、注文住宅の各流れと段取りについて解説していきます。
Contents
注文住宅を建てる流れ1:家族と話し合おう
まずは家づくりについて家族で話し合うことが大切です。
ただし、全て理想通りの家を探していてはいつまでたっても家づくりが進みません。
家族の理想を実現しつつ、家づくりの話をスムーズに進めていくためには、あらかじめ優先順位を決めておくことが大切です。
以下、詳しく見ていきましょう。
新しい住まいの理想を話し合おう
新しい住まいの理想を家族で話し合います。
家は家族みんなで住むものなので、ご主人、奥様、子供たちそれぞれの意見を取り入れていくことが大切だといえます。
土地も建物も100%理想通りにはいかない?
一方で、100%理想通りの家を建てるのは、現実問題として難しいものです。
例えば、職場や学校の近くがいい、あるいは住み慣れたエリアの近くで家を建てたいなど、立地を重視したい場合、土地の価格にはおおよそ見当がつきます。
また、大きな家を建てたい場合やお庭でBBQをしたい場合など、広い土地が欲しいといったことを考える方もいらっしゃるでしょう。
土地の価格は、「坪単価×土地の広さ(坪数)」で算出できます。
例えば、30万円/坪のエリアでBBQできる広さの土地が欲しいのであれば、50~60坪程度の広さは欲しいところ。
この場合、30坪×50~60万円/坪で1,500万円~1,800万円程度の予算が必要です。
上記土地の価格に、建物価格が加算されます
建物価格についても同様に「坪単価×建物の広さ(坪数)」で算出可能です。
建物の坪単価については、住宅会社毎に、過去に建てた建物などから、おおよその坪単価を聞くことができます。
仮に、坪単価60万円/坪の住宅会社で、40坪の建物を建てる場合には、60万柄/坪×40坪
=2,400万円と計算できます。
足し合わせると、1,500~1,800万円+2,400万円=3,900~4,200万円と計算できます。
上記以外にローン手数料など各種経費を足し合わせる必要があるでしょう。
このように、具体的に予算を算出したうえで、理想の家を建てられるのかを考えていかなければなりません。
優先順位を決めておくことが大切
もちろん、要望をすべて入れた土地・建物で資金計画をシミュレーションしてみて、その金額が予算内であれば問題ありません。
しかし、多くの場合、そうはいかないもの。
この場合、「立地を重視するのか、建物を重視するのか」など、家族間で優先順位を決めておくことが大切です。
例えば、絶対に家でBBQしたいというのであれば、ある程度の広さの土地が必要になります。
50~60坪程度の広さの土地を購入する際、予算が合わない場合に取りうる対策としては、以下のようなものがあるでしょう。
・坪単価の安いエリアで土地を探す(立地をあきらめる)
・建物の価格を安くする(建物の仕様や広さをあきらめる)
こうした優先順位については、家族によって異なるため、具体的に家づくりを始める前に、家族間でよく話し合って決めておくことが大切だといえるでしょう。
注文住宅を建てる流れ2:土地探し
理想の家づくりについて、家族で話し合ったり優先順位を決めたりしたら、早速家づくりを始めてみましょう。
家づくりの最初の関門となりやすいのが土地探しです。
土地が決まらず数カ月~数年経ってしまうこともあるでしょう。
土地探しをうまく進めるためのポイントも、先ほどと同じく優先順位をつけるということです。
以下で、詳しく見ていきます。
家づくりの最初の関門
土地探しは家づくりの最初の関門といえます。
土地が決まらなければ、そのうえに建てる家を計画することができませんし、予算も組めなければローンの審査を出すこともできません。
一方で、土地の価格は基本的に需要と供給で相場観が形成されていくため、多くの人が欲しがるような土地は価格が高くなり、また何らかの問題があるような土地は価格が安くなります。
つまり、欲しいと思う土地は価格が高くなりやすく、手頃な価格の土地は何らかの問題があることが多いのです。
しかし、家づくりは大きなお金を払うものですから、「手頃な価格で問題のない土地」を探したくなるもの。
もちろん、早い段階でそうした土地が見つかるケースもありますが、多くの場合、なかなか理想の土地が見つからず、時間だけが経ってしまう、ということになりやすいのです。
立地や広さなど各種条件に優先順位をつけておく
土地探しが長期化してしまう問題を解消する方法は、各種条件に優先順位をつけることです。
各種条件としては以下のようなものが挙げられるでしょう。
- 土地の広さ
- 土地の形
- 立地
- 近隣の環境
- 価格
例えば、「立地は理想より少し離れた場所でも構わないけど、庭にガレージを置きたいので土地の広さだけは妥協できない」といったものや「旗竿型など土地の形は問わないのでできるだけ安い土地がいい」といったものです。
関連記事:【土地あり/土地なし】家を建てる費用の内訳を解説!
数十年住む前提で考える
また、土地探しのポイントの一つとして、数十年住む前提で考えるということがあります。
特にお子様が小さいうちは、「学校の近く」であるといったことを最優先することがよくあるでしょう。
しかし、お子様が学校に通うのは数年ですし、卒業すれば一人立ちしていくものです。
もちろん、それを理解したうえで、お子様を優先するという方も多くいらっしゃいますが、将来のことを考えて土地を探すという視点は、持っておくことをおすすめします。
関連記事:土地探しのコツを知って、家を建てるのにベストな土地を選ぶ
注文住宅を建てる流れ3:住宅会社選び
次は住宅会社選びです。
住宅会社選びは、土地探しと並行して進めることも可能ですし、人によっては土地探しより先に住宅会社選びを進めるケースもあるでしょう。
以下、詳しく見ていきます。
土地探しと住宅会社選びの順序
住宅会社選びと土地探しの順序には、住宅会社選びから先にする方法と土地探しを先にする方法、また並行して進める方法の3パターンが考えられます。
土地選びには以下のような方法があります。
- 自分で見つける
- 不動産会社に探してもらう
- 住宅会社に探してもらう
上記のうち、おすすめなのは住宅会社に探してもらう方法です。
これは、住宅を建てるのに適した土地を選ぶのに際し、住宅会社からアドバイスを受けながら進めたいからです。
例えば、土地によってはがけ規制などの規制に引っかかるケースがありますが、こうしたケースでは、実際にどのよう建物を建てるのか検討しながら、土地選びを進める必要があります。
不動産会社に探してもらう場合でも、相談する不動産会社の担当者からしっかりそのようなアドバイスを受けられるか確認しておくとよいでしょう。
不動産会社に探してもらった土地について、土地の契約前に、住宅会社の担当者に相談するといった方法もあります。
住宅会社毎に得意分野が異なる
住宅会社を選ぶ際には、住宅会社毎に得意分野が異なるという点を押さえておきましょう。
例えば、できるだけ費用を抑えて建物を建てたいのであれば、ローコスト住宅が得意な住宅会社に相談したほうがよいですし、デザインにこだわった家にしたいのであれば、そうした分野が得意な住宅会社を選ぶことが大切です。
住宅会社の得意分野については、カタログやパンフレット、また過去に建てた建物の傾向を確認するとよいでしょう。
関連記事:ローコスト住宅のメリット・デメリットと住宅会社を選ぶポイントを解説
注文住宅を建てる流れ4:住宅ローン審査
土地と住宅会社が決まったら、住宅ローン審査に進めます。
以下、詳しく解説していきましょう。
事前審査と本審査
住宅ローン審査には事前審査と本審査があり、先に事前審査の承認を得ていると安心です。
事前審査を受けるには最低限土地が決まっていることが求められます。
ただし、事前審査に通っていれば、仮に後で土地を変えたとしても承認を得られるケースが多いため、まずは土地を仮決めして審査を受けておくといった方法もあります。
審査に通るか不安、という方は、まずは審査に出してみるのもよいでしょう。
一方、本審査については、多くの場合、土地と建物の契約が決まった後、審査を受けることになります。
とはいえ、大きな問題さえなければ、事前審査で承認を得ていれば本審査でも承認を得られるのが一般的です。
住宅ローンの審査基準
住宅ローンの審査基準にもいろいろありますが、特に重要なのは以下の2つです。
- 個人の属性
- 個人信用情報
個人の属性とは、年収や勤め先などのことです。
一部上場企業に勤めていたり、医者や弁護士など資格職の方、公務員の方だったりは、安定していると判断されて、審査承認を得やすくなっています。
2つ目の個人信用情報とは過去に返済を延滞したことがあるかといった情報のことで、債務整理などの経験があるのはもちろん、過去に1回でも返済を延滞していると審査承認を得るのはかなり難しくなります。
なお、個人信用情報は全銀協やJICC、CICなどの信用情報機関に登録されるもので、これ以外のもの、例えば税金の納付が遅れたといった情報は登録されません。
金融機関の中には、個人信用情報に延滞の情報が登録されている方でも、理由次第では積極的に融資を検討してくれる金融機関もあるため、個人信用情報が理由で審査が否決になってしまった方も、諦めずに他の金融機関で審査を受けてみるのもよいでしょう。
関連記事:住宅ローンの選び方はどうすればいい?5つのポイントをご紹介
注文住宅を建てる流れ5:家のプラン作成
住宅会社の担当者と打ち合わせして家の間取りなどを決めていきます。
プラン作成は無料であることが多いですが、申込金を支払わなければならない住宅会社もあるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
複数の住宅会社で並行して進めることも可能です。
価格と理想の間取りのバランスを取ろう
プランを考えていると、ついついあれこれと要望を追加していきたくなるものです。
ところが、際限なく要望を追加していくと、価格がどんどん高くなってしまいます。
この段階では土地はすでに決まっているため、土地の価格と建物の予算を合計した総予算から、支払っていけるローンの返済額を先に試算しておき、その額は超えないように調整することが大切です。
壁紙や外壁の色などは契約後に決めるケースもある
家のプラン作成では、建物の間取りなどの他、壁紙や外壁の色など細かなところも決めていく必要がありますが、こうした細かな部分は、間取りを決めて契約した後になることも多いです。
壁紙や外壁にこだわりたい方で、全て決めてから契約したいという場合には、先に住宅会社の担当者にその旨を伝えておくとよいでしょう。
注文住宅を建てる流れ6:土地の売買契約と建物請負契約
土地が決まり、家のプランが固まったら、売買契約と建物請負契約を結びます。
以下、詳しく見ていきましょう。
土地と家のプランが固まったら契約を結ぶ
土地が決まり、家のプランが固まったら、土地については売買契約を、建物については建物請負契約を結びます。
契約前であれば、いつでもペナルティなしで土地を変えたり、プランや住宅会社そのものを変えたりすることが可能です。
一方、一度契約すると契約したことに対する責任が生じます。
仮に、契約後に契約を解除することになった場合は、契約時に支払った手付金を放棄しなければならない場合もあります。
家づくりは大きなお金が動くものなので、しっかりと覚悟を固めたうえで手続きを進めることが大切です。
土地だけ先に契約するケースもある
自分で土地を見つけたり、不動産会社に土地を探してもらったりしたケースでは、土地だけ先に契約するケースもあります。
売主側の視点からは、土地の契約から決済~所有権移転までの期間をできるだけ短くしたいと思うもの。
一方、買主側としては、建物契約後に土地の決済となるよう、決済のタイミングをできるだけ遅くするよう交渉するのがおすすめです。
家のプランを考えてみると理想の家を建てることが難しい、といったケースも考えられるからです。
契約後に住宅ローン本審査を受ける
土地と建物契約が済んだら、住宅ローンの本審査を受けます。
なお、土地、建物の契約時には住宅ローン特約を設けるのが一般的です。
住宅ローン特約とは、住宅ローンの審査が否決であることを理由に契約を解除する場合、もともと契約がなかったものとして、契約を白紙解約するというもの。
この場合、手付金は買主の元に戻ってきます。
住宅ローン特約は契約時に期限を設定するため、いつまでに手続きを進める必要があるのかしっかり確認しておくようにしましょう。
注文住宅を建てる流れ7:着工~完成・引き渡し
土地と建物の契約が済んだら、いよいよ建物の建築が始まります。
ここでは、着工から引き渡しまでの流れを見ていきましょう。
建物着工
土地と建物の契約後、土地の決済を済ませたら、建物の建築が始まります。
なお、建物着工時には、着手金として建物請負契約の3割ほどを支払うのが一般的です。
つまり、建物着工の段階では、土地の代金に加えて、建物代金の3割程度を先に支払う必要があります。
このときのお金は、つなぎ融資という制度を使って支払うことが多いです。
注文住宅を建てる際には、住宅ローンを利用することが多いでしょう。
しかし、住宅ローンは、建物が完成した後にしか使えません。
一方で、注文住宅を建てるには土地代金や着工金を先に支払わなければなりません。
もちろん、これらを現金で用意できればよいのですが、ほとんどの方は現金で数百万円~数千万円のお金を用意することは難しいでしょう。
つなぎ融資とは、先に金融機関からお金を借りて、家が完成した後に住宅ローンで完済するタイプの融資です。
例えば、2,000万円の土地の上に、3,000万円の建物を建てる場合、土地代金2,000万円に建物代金3,000万円の3割=900万円の合計2,900万円を着工時に支払わなければなりません。
つなぎ融資では、この2,900万円を数カ月間の建築期間中だけ先に借りて、家が完成した段階で、住宅ローンを使って完済します。
なお、つなぎ融資は短期間とはいえ、利息を支払う必要があります。
具体的な金利は金融機関により異なりますが、3~4%など住宅ローンより高く設定されているのが一般的で、着工期間が長くなるほど支払わなければならない利息が大きくなってしまう点には注意しなければなりません。
関連記事:家を建てるのにぴったりの時期は? 着工から竣工までのスケジュールを考える
上棟
建物の着工から、概ね1ヶ月程度すると、棟上げが行われます。
このとき、施主次第ですが上棟式を開催するのと同時に、建物代金の3割程度を中間金として支払う必要があるのが一般的です。
中間金についても、土地代金や着手金と同様、つなぎ融資からお金を借りることができます。
土地代金や着工代金より1ヶ月遅れての融資となるため、その分支払わなければならない利息を少なくすることができますが、建物の完成と住宅ローンによる完済が遅くなるほど、利息が高くなってしまう点は同じです。
建物完成
建物の着工から3~4ヶ月程度で建物が完成します。
建物完成後は、役所による検査を受けて検査済証の発行を受けなければなりません。
建物が完成したら、住宅ローンを実行できますが、この検査済証が発行されないと実行できません。
このため、建物完成から1~2週間程度は期間を見ておく必要があるでしょう。
引き渡し
建物が完成し、検査済証の発行を受けたら、住宅ローンを実行してつなぎ融資分を完済するとともに、建物の引き渡しを受けます。
建物の引き渡し後は、前の家から新居への引越し作業を進める必要があります。
このときに問題になりやすいのが、前の家が賃貸だった場合に、賃貸契約の期限をいつまでにするのかと、引っ越し業者の手配です。
建物の工事は、着工時にスケジュールを組みますが、天候や資材状況などを理由に遅延してしまうこともあります。
先述の通り、住宅ローンを実行するには役所の検査を受けて検査済証の発行を受ける必要がありますが、先に賃貸契約の期限を大家さんに伝えておいたのにも関わらず、工事が遅れて住宅ローン実行~引き渡しが遅れてしまう…といった問題が起こりうるのです。
引っ越しの手配についても同様で、引っ越し作業は住宅ローン実行~引き渡しから賃貸契約の解除期限までの間に行わなければなりません。
一方、特に9~10月や2~3月などは引っ越し業者も繁忙期で、1~2カ月前でないと業者を押さえられないといったケースもあるでしょう。
こうした、賃貸契約の期限や引っ越しの期日については、工事が遅れて後で問題にならないよう、余裕をもって組むのがおすすめです。
まとめ
注文住宅の流れについて、各行程ごとにお伝えしていきました。
注文住宅は計画から引き渡しまで半年程度以上かかるのが一般的です。
大きなお金が動くこともあり、事前に流れを掴んでおかないと、場合によってはお金の部分で損をしてしまうこともある点には注意が必要でしょう。
これから注文住宅を建てることを検討しているという方は、本記事の内容を参考にしてみてください。
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