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土地の境界線をめぐるトラブルとは? さまざまな原因と解決法を紹介

土地の境界線をめぐって隣人とトラブルになってしまう例は、決して少なくありません。

お互いの財産にまつわる問題なので、時にはこじれて裁判になってしまうことも。

土地の境界線にまつわる法的ルールを知ってトラブルを防ぐと同時に、万が一トラブルが起こった際の対処法も押さえておきたいものです。

そもそも土地の境界線とは?

まずは、隣地境界線についてよく知っておきましょう。境界にまつわる用語の意味などもご説明します。

隣地境界線と道路境界線

土地の境界線とは、土地と土地の境を示す線のことです。川沿いの土地などで、川に沿って境界線が曲線になっているといったケースもありますが、一般的には直線でできていると考えていいでしょう。

境界線の角にあたるポイントを、「境界点」といいます。土地は一筆、二筆と数えることから、「筆界点」と呼ばれることもあります。

境界点には、土地の境目を示す「境界標」があります。頭に十字の印がついたコンクリート杭が埋め込まれているのを、見たことがあるのではないでしょうか。そのほか、境界点を示す金属プレートを、塀などに設置することもあります。

境界点と境界点を結んだ線が「境界線」となります。ひとつの土地を囲む境界線は「敷地境界線」と呼ばれます。敷地境界線のうち、隣の土地との境目が「隣地境界線」土地と道路の境目が「道路境界線」となります。

境界線をめぐる法的なルール

敷地境界線に囲まれた自分の土地であっても、隅から隅まで自由に使えるとは限りません。隣地とのトラブルにならないよう、民法でさまざまなルールが決められています。

代表的なものが、「建物を建てる場合は、境界線から50センチメートル以上離す」「窓や縁側は、境界線から1メートル以上離すか、目隠しを付ける」というルールです。

ルールに従わずに建てると、違法建築になってしまいます。隣地の所有者から建築の中止や変更を求められた場合は、従わなければならないため、注意が必要です。

しかし地域によっては、境界線から50センチメートル以上離さなくても建築できることがあります。この地域では、「境界線から50センチメートル未満でも建てていいとする慣習がある」と認められた場合です。

ただ、慣習ははっきりと明文化されたものではないので、「慣習として、境界線から50センチメートル未満でも建てていい」と勘違いして、隣地トラブルに繋がるケースも。隣地の所有者との間で認識のズレがないか、あらかじめ確認しておいたほうがいいでしょう。

また防火地域・準防火地域では、外壁が耐火構造の場合に限って、境界線ギリギリに建物を建てていいとされています。これは民法ではなく、建築基準法による特別な措置です。

「窓や縁側は、境界線から1メートル以上離すか、目隠しを付ける」というルールについても、条件が設けられています。それは、隣地の建物の中が見通せるかどうかです。

例えば境界線から1メートル以内にある窓でも、隣地の建物の壁面しか見えない場合には、目隠しを設置する必要はありません。同じ理由で、天窓のように隣地が見えない窓ならば、境界線から1メートル以内でも設置できます。

筆界と所有権界

「筆界」とは、登記所に保管されている不動産登記簿に記された土地の境界のこと。それに対して、隣り合った土地の所有者同士が話し合って決めた境界を「所有権界」といいます。本来なら、筆界と所有権界は一致していなければなりませんが、何らかの原因でズレてしまうことがあります。

例えば隣地境界線がジグザグになっていて不便なので、隣同士で話し合って真っ直ぐにしたといったケースです。この場合、登記所に届け出て筆界を変更しなければなりません。届け出を怠っていると、後々のトラブルにつながることがあります。

また、地震などで境界標の位置がズレたり、境界標そのものがなくなってしまうといったことも少なくありません。建物や塀を造る際に、工事業者が一時的に境界標を動かして、元の位置に戻し忘れるといったこともあります。

こういった場合は、やはり後のトラブルを避けるため、測量士や土地家屋調査士といった専門家に測量を依頼して、新たに境界標を設置し直したほうがいいでしょう。

トラブルになりがちな境界線上の塀

境界線をめぐる隣地とのトラブルの中でも、よく耳にするのが境界線上に建てられた塀についてです。さまざまなケースを想定して、境界線上の塀についてのルールをご紹介します。

境界線上に新たに塀を建てる際のルール

民法では、基本的に「境界線ギリギリに建物を建ててはいけない」とされているといいました。しかし、境界線を示す塀ならば、隣地との話し合いで設置できます。

隣地の所有者とお互いに承諾して建てる場合には、費用は基本的に折半となり、塀の所有権も隣地の所有者と共有になります。どちらか一方が塀の設置費用を負担した場合は、設置費用を出したほうが所有権を持つことになります。

隣地の所有者が塀の設置を承諾しなかった場合でも、高さ2メートル以内の塀であれば設置できます。ただ、一方的に塀を設置したからといって、設置費用を隣地の所有者に請求することはできません。

すでに境界線上に塀はあるものの、どちらが費用を負担したか分からなくなってしまったというケースもあるでしょう。その場合は、共有の塀だと見なされます。

境界線上にある塀を建て直す際のルール

すでに境界線上に塀が建っていて、古くなってきたので建て直すことになったとしましょう。その際にまず確認しなければならないのは、どちらが塀の所有権を持っているかです。

隣地の所有者と、塀を建て直すことや費用の負担などについて合意ができている場合は、特に問題ありません。しかし、お互いの認識が食い違っている場合は、所有権の確定から話を始める必要があります。

共有の塀であった場合、隣地が建て直しに反対していると、勝手に取り壊すことはできません。塀が崩れかけていて危険といった事情があれば、「所有権に基づく妨害排除請求」といって、隣地に塀の取り壊しを求めることになります。

ただし、請求したからといって勝手に取り壊すと、不法行為になってしまいます。あくまで「取り壊しの請求ができるだけ」という点に注意しましょう。塀を修理するだけならば、隣地に相談なく工事を行い、工事費用の半額を隣地に請求することができますが、トラブルになる恐れもあるので注意が必要です。

また自分の敷地内であれば、境界線上にある共有の塀に沿って、新たな塀を建てることができます。その場合の設置費用は自分持ちで、塀の所有権もすべて自分のものとなります。

境界上にある塀でも所有権が自分にあるなら、自分の費用負担で自由に取り壊すことができます。取り壊して新たな塀を建てる場合は、先に挙げた「境界線上に新たに塀を建てる際のルール」と同じです。

境界線に近いどちらかの敷地内に塀がある場合のルール

境界線上ではなく自分の敷地内なら、自由に塀を設置できます。塀の高さについても、2メートルという制限はありません。

ただ、あまりに高い塀を建てたりすると、隣地の所有者もいい気分はしないことでしょう。自分の敷地内であっても、境界線に近い位置に塀を建てるなら、隣地には一声かけておいたほうがトラブルのリスクを減らせます。

自分の敷地内に塀を建てたつもりが、実は隣地にはみ出していたといったケースも少なくありません。その場合、塀を取り壊して敷地内に建て直すのがベストな解決方法でしょう。

しかし、たった数センチのために塀の建て直しはできないといった事態も起こります。対処法としては司法書士や土地家屋調査士に依頼して、「塀が敷地からはみ出していること」と「正しい隣地境界線の位置」について、隣地と公的な文書を取り交わしておくと安心です

隣地の塀が自分の敷地にはみ出している場合、放置すると「時効取得」といって、はみ出した部分も隣地の土地だと見なされてしまうことがあります。はみ出していることを知っていて放置した場合は20年、気づかなかった場合は10年で時効取得になるので注意しましょう。

そのほかの隣地境界線をめぐるトラブル

隣地境界線上の塀以外にも、比較的起こりやすい隣地トラブルがあります。その例や回避方法をご紹介しましょう。

敷地内に植えた木の枝や根が境界線を越えてしまった

敷地内に植えた樹木が年月とともに成長して、枝や根が隣地境界線を越えてしまうことがあります。その場合、はみ出されたほうは樹木の所有者に対して、伐採を求めることができます。

いくら木の枝がはみ出してきているからといって、所有者の許可なく勝手に切ると不法行為に問われることもあるので注意しましょう。ただし、枝ではなく根がはみ出してきているなら、所有者に確認せず切ることが認められています。

屋根や雨樋など、建物の一部が隣地に出てしまっている

屋根や雨樋など建物の一部が隣地にはみ出してしまっている場合は、すぐにでも何らかの対処をする必要があります。かといって、建物を一部壊してリフォームという対応は、あまり現実的ではありません。

はみ出している分の土地を隣人から買い取ればいいのですが、隣人が買い取りに応じないこともあるでしょう。その場合は、司法書士に依頼して公的な文書を取り交わしておくのがベターです。

文書の内容としては、どの部分がはみ出しているのか、将来建て替えをする際には越境状態を解消するといった形になります。文書を取り交わす際には隣地境界線を確定する必要があるので、改めて測量も依頼することとなります。

越境に気づかず物置やエアコン室外機を設置してしまった

物置やエアコン室外機を設置したところ、敷地内からはみ出してしまったということもあるでしょう。気づいた場合には、すぐに撤去・移動する必要があります。

隣地から越境してきた場合も、すぐに指摘したいものです。放置すると越境状態を認めていると見なされて、最悪の場合は時効取得が成立してしまうこともあります。

取得した土地の一部が隣人の所有地だった

土地を購入して家を建てようとしたところ、一部が隣人の所有地だったといったトラブルは、実は珍しいことではありません。購入後にその事実を知った場合は、土地の売主に土地代金の減額を求めることができます

相続で土地を取得したところ、一部が隣人の土地だったというケースも。特に相続の場合は、長年にわたって隣地境界線があいまいなまま使われていることも少なくありません。

新たに土地を取得した場合は、改めて測量士や土地家屋調査士といった専門家に測量を依頼して、隣地境界線を特定しておいたほうがいいでしょう。

隣地との境界線を確認する方法

隣地との境界線トラブルを避けるためには、なにより隣地境界線をはっきりさせておくことが大切でしょう。ここで、隣地境界線を確認する方法をご紹介します。

境界標を確認する

最初に確認すべきは境界標です。もし境界標がなくなっている場合は、新たに設置する必要があります。

隣地境界線に近い場所に塀が建っていると、そこが境界線であると誤解してしまうことも。隣地の敷地内に塀が設置されている場合もあるので、地積測量図や土地の登記簿謄本で確認しましょう。

地積測量図を見る

境界標があったとしても、位置がズレている可能性があります。境界標の位置に間違いはないのか、法務局にある「地積測量図」を取得して確認しましょう。

地積測量図は、土地の面積や形、隣地境界線などが記載された公的な地図です。土地の登記をする際には、申請書類に地積測量図を添付することが義務づけられています。

境界標の位置、地積測量図、土地の登記簿謄本が一致していれば、隣地境界線は確定と考えていいでしょう。

しかし地積測量図は、かなり昔に作成されたものも多く、測量の精度が低かったり、境界標の位置が書き込まれていなかったりといったケースも。その場合は、さらに手続きが必要になります。

専門家に測量を依頼する

地積測量図でも境界線が確定できなかった場合は、土地家屋調査士などの専門家に依頼して、正確に測量してもらいましょう。ただし、測量で正確な隣地境界線が判明しても、それだけでは公的に境界線が認められたことにはなりません。

公的に認められるためには、隣地の所有者と合意の元、土地の分筆・合筆登記をする必要があります。合意を得られない場合は、この後に説明する「筆界特定制度」を利用するか、裁判を起こすことになります。

隣地との境界線トラブルを解決する方法

万が一、隣地との境界線トラブルが起こってしまった場合、解決するにはいくつかの方法があります。それぞれの方法と、解決にかかる期間や費用についてご説明します。

法務局や市役所などの無料相談窓口を利用する

無料で相談したい、隣地境界線について確認したいことがあるといった場合は、法務局や市役所などの無料相談窓口を利用してみましょう。法務局や市役所では、曜日や日時を決めて相談窓口を開いています。

ただし無料相談で受けられるのは、あくまでアドバイスのみです。隣地トラブルがこじれている、訴訟を起こされたといった深刻なケースでは、あまりお勧めはできません。

境界問題解決センターに相談する

隣地トラブルに関する相談は、全国各地にある境界問題相談センターで受け付けています。地域によって名称は多少違いますが、いずれも土地家屋調査士会が運営している組織です。

境界問題相談センターには土地家屋調査士と弁護士が所属していて、アドバイスが受けられるほか、調停の申し立てにも対応しています。相談料は1回2万円ほどです。

土地家屋調査士などの専門家に相談する

土地家屋調査士は、土地の境界線を確定する専門家です。法務局などに保管されている資料を調査し、測量データと照らし合わせて境界線を特定します。

特定した境界線が登記薄謄本と違っていた場合、隣地の所有者との合意が得られれば、法務局で分筆・合筆の登記を行います。登記は司法書士に依頼するのが一般的でしょう。

土地家屋調査士への報酬は7~10万円程度、土地の測量費は広さによって変わりますが30~60万円程度です。登記を行うなら、登記費用が10~15万円程度、司法書士への報酬が10~15万円程度がおおよその相場です。

土地の測量にかかる期間は、1~3ヶ月程度で、さらに登記手続きを行う場合は、プラス1カ月と考えておくといいでしょう。

筆界特定制度を利用する

筆界特定制度とは、法務局の筆界特定登記官が専門家の意見を踏まえて、土地の境界線を公的に特定する制度です。

以前は、公的に境界線を特定するためには裁判を起こさなければなりませんでした。それでは費用がかかり、特定までの期間も長くなるため、2006年に筆界特定制度が設けられたのです。

筆界特定制度を利用するには、対象の土地を管轄する法務局に「筆界特定申請書」を提出します。申請を受けた法務局は、土地家屋調査士や弁護士、司法書士などからなる筆界調査委員会を設置し、境界線の調査・特定に当たります。

筆界特定制度の申請手数料は、境界線を特定したい2つの土地の固定資産税評価額の合計金額によって決まります。合計金額が400万円以下の場合は800円、400万円を超えて800万円までは1600円といったように、価格によって手数料が決められています。

例えば自分の土地の固定資産税評価額が1500万円、隣地の固定資産税評価額が2500万円だった場合、合計金額は4000万円となります。その場合の手数料は8000円となります。

手数料のほか、土地の測量が必要になった場合は測量費がかかります。申請から境界線の特定までにかかる期間は、半年から1年半程度と長い期間がかかります。

裁判(境界確定訴訟)を起こす

隣地との境界線トラブルを完全に解決したい場合は、裁判で境界確定訴訟を起こす方法もあります。裁判では、お互いに測量結果などの証拠を提出して自分の意見を主張し、裁判所に境界線の位置を判断してもらいます。

裁判の結果、どちらかの主張が通るか、あるいは双方が痛み分けの状態になるかは分かりません。しかし裁判官によって最終決定が下されるので、トラブルは強制的に解決されることになります。

土地家屋調査士や弁護士などの専門家にどの程度依頼するのかによって裁判費用は変わってきますが、100~180万円程度はかかると考えておきましょう。また判決までの期間も長く、短くて1年以上、長ければ3年以上に及ぶこともあります。

まとめ

隣地トラブルが起こってしまうと、多くの場合、解決までには長い期間と労力がかかってしまいます。できれば隣地境界線についての知識をもって、できる限りトラブルにならないよう努めたいものです。

境界線について不安や心配があるなら、ぜひお気軽にタクトホームまでご相談ください。

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