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外壁材のひとつ、ALCとは? ALCで外壁を造るメリット・デメリット

近年、ALCという外壁材を使った家が増えてきています。ALCはコンクリートの一種で、現代の建築業界ではすでに欠かせない素材と言ってよいでしょう。

ALCとはどんな外壁材なのか、コンクリートとの違い、ALC外壁の家のメリットやデメリットなどをご紹介します。この機会に、ALCについて詳しく知っておきましょう。

外壁材「ALC」とは?

ALCとは、住宅の外壁に使われる建築材です。どんな外壁材なのか、詳しくご説明します。

ALCはコンクリートの一種

ALCは「Autoclaved Lightweight aerated Concrete」の略称です。日本語に翻訳すると「圧力処理済み軽量気泡コンクリート」という意味になります。

名前の意味するとおり、軽量で内部に細かい気泡が入っている、特殊なコンクリートと考えてください。気泡が入っているという点が、一般的なコンクリートとの大きな違いです。

ALCの主な原材料は、セメント、珪石、生石灰、アルミ粉末です。これらの原材料を型枠に流し入れて化学変化を起こし、蒸気の熱と圧力で硬化させることでALCができあがります。

原材料が化学変化を起こす際に気泡が生まれるので、ALCの内部には小さな気泡がたくさん含まれています。そのALCをパネル状に切り出して、建築材として使われているのです。

ALCは、1920年代にスウェーデンで開発されました。1940年代にはヨーロッパを中心に世界各地に広がり、日本では1960年代から生産されています。

さらにその後も日本の建築技術によって、ALC外壁は進化してきました。特に強度を求められるような環境に対応するため、ALCの内部を鉄筋で補強するという製法もありますが、これは日本独自のものです。

ALCはパネル状になっているため、建築現場では取り付けるだけで工事できます。高層ビルの外壁工事などの高所作業でも、手間がかからないので工期を短縮できるALCパネルは、大変重宝されています。

現代では、一般の住宅はもちろんのこと、マンションの外壁やバルコニー、高層ビルの外壁などさまざまなシーンで使われています

ALCとコンクリートの違い

ALCはコンクリートの一種ではありますが、コンクリートとはまったく違う性質をもっています。それはALCの内部には、無数の気泡が含まれている点です

コンクリートは、内部に気泡が入らないように注意して、型枠に流し込みます。気泡ができてしまうと、その部分の強度が下がってしまうからです。

一方、ALCの気泡はスポンジのように全体的に散らばっています。気泡の周囲は、高温・高圧の蒸気で生成することで原材料が溶け合い、非常に強固に結合しています。

そのためALCは、気泡で強度が下がることはありません。それどころか、コンクリートよりも耐久性があるといわれています

コンクリートは非常に重いので、建築材として使う際には重量に耐えられるよう、基礎をしっかり固める必要があります。しかしALCは気泡を含んでいるので、コンクリートの約4分の1の重さしかありません。

ですから、ALC外壁にするための特別な工事は必要ありません。サイディングの外壁からALC外壁にリフォームといったことも、それほど手間なく行えます。

さらにALCは、内部の気泡の作用で高い断熱性を持っています。コンクリートと比較すると、約10倍の断熱性があるのです

ALCとコンクリートの違いは、外壁の見た目でも分かります。型枠に流し込んで造るコンクリートなら、継ぎ目のない外壁を造ることができますが、ALCはパネル状になっているため、どうしても継ぎ目ができてしまいます。

ALCで外壁を造るメリット

ALCを住宅の外壁に使うと、どんなメリットがあるのでしょうか。ALC外壁のメリットをご紹介します。

断熱性や遮音性に優れている

繰り返しになりますが、ALCの内部には無数の細かい気泡が含まれています。つまり、壁の中に空気の層があるのと同じことです。

空気の層があることで、熱や音が伝わりにくくなります。太陽の熱も室内に伝わりにくいため、冷暖房効率がよくなることでしょう

断熱性の高いALC外壁は、結露も起こりにくくなっています。結露はカビの原因となるので、ALC外壁はカビが生えにくいと考えてよいでしょう

壁にカビが発生すると、部屋が汚れるだけでなく、アレルギーの原因となってしまうことも。結露が起こりにくいALCは、小さいお子様がいるご家庭では大きなメリットとなることでしょう。

ALCの遮音性の高さは、気泡による効果だけではありません。ALCパネルそのものが音を反射しやすく、外壁に当たった音を跳ね返してくれる性質があります。

さらに気泡によって音が伝わりにくくなっているので、高い遮音性があるのです。近隣の生活音が気になる方だけでなく、「室内飼いのペットの吠え声が、近隣に響かないか気になる」という方にもおすすめです。

耐震性や耐久性に優れている

ALC外壁は、内部構造の約80%が気泡です。そのためコンクリートの一種にもかかわらず、一般的なコンクリートの約4分の1の重さしかありません。ほかの建築材と比較すると、木材と同じくらいと考えてよいでしょう。

ALCパネルを水の中に入れると、パネルは水面に浮き上がります。それほどALCは軽いので、地震の揺れを受けても、重量で建物の構造に被害を与えることはありません。

ALCは地震に強いだけでなく、耐久性が高いというメリットもあります。高温・高圧の蒸気で固めているため、原材料同士が溶け合い、しっかりと結びついているからです。

ALCの外壁は、コンクリートと同じかそれ以上に耐久性があると考えてよいでしょう。定期的に適切なメンテナンスをしていれば、耐用年数は50年以上といわれています

防火性が高い

ALCはセメントや珪石といった無機質のものが原材料なので、高熱を加えても燃えることはありません。また、炎や熱を浴び続けた際にも、有害物質などを発生させることがありません。

どんなに火事に気をつけて生活していても、近隣から火事が出た場合のもらい火のリスクはあります。しかし、不燃性で断熱効果の高いALC外壁なら、もらい火のリスクも引き下げられるでしょう。

ALCは、国土交通大臣から認定を受けている耐火構造部材です。阪神・淡路大震災でも、ALCが防火壁の役割を果たしたことが実証されています。

外壁材をALCにした際のデメリット

外壁材として非常に優れた性能を持つALCですが、デメリットも存在します。家の外壁をALCにしたいと考えるなら、あらかじめデメリットも知っておきたいものです。

建築費用がかかる

ALCは非常に高性能の建築材ではありますが、その分、価格も高くなっています。モルタルやサイディングといった一般的な外壁材と比べると、建築費がかかってしまいます

サイディング外壁の相場を見ると、セメントに繊維質などを混ぜて焼き上げた窯業系サイディングが1平方メートルあたり3000円~、金属系サイディングが4000円~となっています。

砂を混ぜたセメントを直接壁に塗りつけるモルタルの相場は、1平方メートルあたり4500円~といったところです。ところがALCパネルの場合、1平方メートルあたり7500円前後が相場となっています。

外壁は面積が広いので、ALC外壁の工事費用は30坪程度の家でも150~250万円になってしまうでしょう。モルタルやサイディングなら60~100万程度で済むので、差額は決して小さくありません。

ALCの性能を考えれば、コストパフォーマンスは決して悪くないでしょう。しかし建築予算を気にする場合は、大きなデメリットになってしまいます。

建築費を抑えるために、住宅の一部だけをALC外壁にするケースもあります。ただ、防音性や防火性といったALC外壁の性能を十分に活かすためには、すべての外壁をALCにすることをおすすめします。

防水性が低く、凍害のリスクがある

ALCはコンクリートと同じく、水分が染みこみやすい素材で造られています。そのためALC外壁にする際には、表面に防水加工をすることが必須です

ALCは内部に気泡を含んでいるため、雨水などが染みこむと内部に水が溜まってしまいます。すると、ALCが本来持っている耐久性や防音性が低下してしまいます。

それだけでなく、水道の水抜きが必要になるような寒い地域では、気泡の内部に溜まった水分が凍結してしまうことも。水は凍ると体積が大きくなるので、ALCパネルが内部から傷つけられてしまうのです。

凍害に遭ったALCパネルは、内部の構造が破壊されてしまうため、耐久性や耐熱性、防音性が著しく低下してしまいます。表面にひび割れが起こり、見た目が悪くなってしまうこともあります。

ただALCは、、コンクリートよりも凍害が起こりにくくなっています。壁そのものが温度変化で収縮したり凍ったりしても、細かい気泡が圧力を逃してくれるので壊れにくいのです。

ある大学で行われた実験では、ALCパネルを水に沈めた状態で1ヵ月以上たっても、含水率は50%程度でした。ALCは体積の約80%が気泡なので、気泡の中の空気は35%程度残っていることになります。

空気の部分が凍結時の圧力を和らげてくれれば、ALCパネルが内部から破壊されることはないでしょう。防水加工さえしっかりと行っていれば、寒い地域であっても凍害を気にする必要はありません

メンテナンス費用がかかる

ALC外壁にするなら、壁に水が染みこむことでの劣化を防ぐため、表面の防水加工が必須です。正確に言うと、外壁に防水加工をするのではなく、防水性のある弾性塗料で外壁を塗装します。

防水塗装をする場合は、ALCパネル本体はもちろんのこと、パネルに接している屋根や基礎、窓などの開口部もしっかり塗装しておかないと、ALCパネルに水が染みこむ原因となってしまいます。

防水塗装は10年程度で効果が薄れてしまうため、定期的なメンテナンスが必要です。外壁にALCを使う場合は、定期メンテナンスの費用も考えに入れておくようにしましょう。

またALC外壁はパネル状になっているので、どうしても継ぎ目ができてしまいます。ALCパネルの継ぎ目はシーリング材で埋めますが、シーリング材の寿命は5~10年となっています。

つまりALC外壁は、5年程度の周期で防水性能のチェックを行い、劣化が見られたらすぐに補修するのが望ましいといえます。

ALCに施した防水性を保つには、高い専門性と技術力が必要です。メンテナンスを依頼する際には、信頼できる施工業者を選ぶようにしたいものです。

ハウスメーカーによっては、注文住宅が完成して引き渡しを行った後も、定期メンテナンスや修繕を行うといったアフターサービスを用意しています。ALC外壁の家を造るなら、アフターサービスの内容までチェックした上で、ハウスメーカーを選ぶとよいでしょう。

パネルの継ぎ目が多くなる

ALC外壁は、パネル状の建築材を建物に取り付けていく工法です。そのため、モルタルなどの塗り壁や型枠に流し込むコンクリートと違って、どうしてもパネルの継ぎ目ができてしまいます。

ALCと同じようにパネルを取り付ける外壁材として、サイディングボードがあります。しかし、ALCパネルはサイディングボードよりもサイズが小さいため、サイディング外壁よりも継ぎ目が多くなってしまうのです。

継ぎ目が多ければ、見た目が気になることも多いでしょう。また、継ぎ目部分が劣化すると水が染みこんでしまうので、継ぎ目の多いALCのほうがサイディングより雨漏りのリスクが高いといえます。

環境によっても異なりますが、シーリング材は早ければ5年程度で劣化してしまいます。ALC外壁のもつ高い機能を保つためには、5年ごとの定期的なチェックを欠かさないようにしましょう

もちろん、定期チェックを行う業者の選定も重要です。万が一の見落としやチェック漏れがないよう、専門性が高く技術力のあるメンテナンス業者に依頼したいものです。

まとめ

現代の建築では欠かせない外壁材となっている、ALCについてご紹介してきました。価格が高めというデメリットはあるものの、断熱性や防音性に優れていて耐火建築材でもあるALCは、注文住宅を建てる際にはぜひ採用を検討したい外壁材です。

タクトホームでは、これまでに多くのALC外壁の家を手がけてきました。ALC外壁のデメリットへの対策も知り尽くしているので、お客様のご要望に合わせたご提案ができます。

また、5年ごとの定期点検サービスも行っているので、安心してALC外壁の家に住み続けられることでしょう。ALC外壁について知りたいことがあれば、ぜひタクトホームにご相談ください。

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